最新情報　前立腺がんの診断と治療

◆◆　根治療法後のPSA再発と治療　◆◆

前立腺がんに対する何らかの治療とくに根治療法後の再発は一定の確率で起こりえます。

一般的に、局所再発や遠隔転移などが起きる前にまずPSAが上昇します。

PSAの上昇だけの再発が長く続く場合もありますし、PSAの上昇後にすぐに症状が出たり、検査で局所再発や転移などがわかる状態になるとは限りません。

しかし、早急に対処したほうが、今後の患者さんの治療にいいかもしれません。

局所再発も病変が大きくなれば、根治治療が困難になりますし、放っておけばさらに病気は進行して遠隔転移を引き起こし、がんで亡くなる場合もあります。

医師としては、PSAだけ上昇している患者さんに対して、いかに遠隔転移が起きないようにするか、いかに死亡につながらないようにするかを考慮して、対処する必要があります。

1. 前立腺摘除術後の局所再発

前立腺摘除術後に関しては、前立腺がなくなりますので、限りなく0.00に近いPSAの値になります。

PSA 0.2ng/ml以上で、かつ2回連続して上昇している場合を前立腺摘除術後PSA再発といいます。

しかし、前立腺摘除術後の局所再発の診断は、難しいというのが本当のところです。

前立腺摘除術後の再発での救済放射線療法はPSAが0.5ng/mlになるまでに開始したいものです。

画像診断でわかるようになる前に、特に局所再発の場合は、早急に治療するのが重要です。

というわけで、遠隔転移の可能性が低いと判断されれば、PSAが0.5以下の時期に、救済放射線療法を前立腺があった部位（前立腺床）に行います。

前立腺摘除術後の再発があっても、何もせずに経過をみる方法もあります。


２．放射線療法後の局所再発

放射線療法後のPSA上昇が起こった場合、特に、放射線療法後1～2年してPSA上昇が起こった場合は、前立腺生検を行うことは重要です。
特に、局所療法を行う場合に大変参考になります。
前立腺全体に再発しているのか。
右、左どちらかに再発しているのかなどで、局所療法を行う場合に治療方針決定に重要です。

不可能ではありませんが、合併症の問題があります。
放射線療法後の前立腺を摘出するのは癒着が強く、放射線療法をせずに行う前立腺摘除術と比べて、合併症の発生率が非常に高くなります。

放射線療法後の局所再発に対する冷凍療法は、前立腺摘除術に代わるものとして提案されています。
前立腺摘除術より、合併症が少なく、効果も変わらないというわけです。
しかし、残念ながら、広く行われておらず、信用できるデータがないというのが現状です。

前立腺内に放射線同位元素（放射線が出る『線源』）を直接挿入し、前立腺を内部から照射し前立腺がんを治療する方法を小線源治療(ブラキセラピー、brachytherapy)とよんでいます。

放射線療法後の局所再発に外からの放射線療法（外照射）を行うことはありえません。

前立腺には、これ以上当てられない量の放射線をすでに当ててしまっています。
しかし、ブラキセラピーはどうでしょうか。

世界中でも、放射線療法後の局所再発に対するブラキセラピーの報告は数少ないのが現状です。

HIFU とは、High-intensity focused ultrasoundの頭文字です。
救済療法としては、報告は少なく、一部の施設で、多くの症例を、放射線療法後の救済療法で行っています。

短期間の観察で、60％前後でPSA低下効果がみられたという報告もありますが、評価は定まっていません。

　放射線療法後に局所再発が疑われてもPSA上昇がかなり後で出てきた場合で倍加時間も長いものは、必ずしも根治を目指す必要はないかもしれません。

つまり、ゆっくりPSAが上がってきた患者さんは、観察のみでいいかもしれません。

放射線療法後に骨盤リンパ節の再発が疑われた場合、手術で骨盤リンパ節を切除する（骨盤リンパ節郭清）という方法があります。

以上簡単に説明しましたが、電子配信で詳細に解説しています。

08/07  定期配信　『前立腺がんはありふれた病気！？されど前立腺がん！』

08/14  定期配信　『PSA再発と治療は　その１』

08/21  定期配信　『PSA再発と治療は　その２』

月４回定期配信です。


メール形式での配信がよいといわれる方は、

前立腺がん治療の最前線

を参考にしてください。

同じく月4回の発行です。