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カテゴリ:哲学研究室
年をとると睡眠時間が短くなってくる。眠いのに早朝から目が醒め、熟睡することが出来ない。それならいっそのことと早く寝たら、やっぱりそのぶん早く目が醒める。人間の脳の独特なメカニズムの作用である。
人間の脳は、地上の生物の中でもっとも複雑なコンピューターだと言われる。この人間の脳のバックアップ作業が睡眠だろう。その作業の中の副産物として夢がある。 バックアップされた記憶は長期記憶中枢に溜め込まれる部分と短期記憶中枢に詰め込まれる部分とにより分けられて保存されるそうだ。確か海馬体というのがあって、そこが重要だとか書いてあった(と長期中枢が言っている)。 最近、物忘れが酷くなってきた。小生の脳は容量不足に陥って、短期記憶のスペースが圧迫されているのみならず、スタック領域不足、演算機能低下が見え見えだ。どうもエラーが多すぎるのである。思い違いや、計算間違いが頻発するようになってきている。睡眠というバックアップ作業だけでは、早々おっつかない状態になってきているのであろう。 だからといって、今からosを入れ替えたり、ゼロから再インストールするというわけにもいかない。外部媒体への備忘録を増やして、そのぶん忘れていって対応するしかないのだろうか。衰えた脳を、よみがえらすことは出来ないのだろうか。 脳の生理活動を純粋に機械的な仕組みとして捕らえ、これの解明を目指す方向の思想として、例えばサイバネチクス思想がある。 「人間や自然に関するあらゆるメカニズムは、今は暗いが、将来はサイバネチクス工学として解明されて、再利用可能(インスタンスの枠組みが構築可能)となるだろう」、という恐るべき思想である。 生命の機械的な機能はもちろんのこと、喜怒哀楽のみならず、愛や崇高さといった複雑な感情や、やがては宗教思想すら解明され、分析されて工学化されるというのである。 自然界のあらゆるものを網羅していく、この方向に、実は疑問や不安はない。それが倫理的に許されないとか、道徳、宗教的にどうだといって無駄な論議がなされてているが、サイバネチクス思想による工学技術は、人間の道徳、倫理、宗教のメカニズムすら、いずれ包摂して解明していくだろう。 アメリカ発のこの思想の尖兵が、エンタープライズ(企業)である。そこにおいては、自然というものの捕らえ方が、東洋の我々とは基礎から違う。彼らは自然に、素材とともにある、未到来の唯一の存在者の存在を見ている。 常に対象化できるものとして自然を捕らえる現代のプラグマチックな思潮の延長にあるかぎり、サイバネチクス工学の未来に一点の曇りも疑問も無い。そしAbendland(ヨーロッパ)の一神教もまた、信仰の対象として疑うこともなく、ただ一つの存在者の存在、つまり唯一絶対の神の到来を考えていた。 それはもしかしたら、未来のサイバネチクス工学がなし得る偉業ではあるまいか?(まさか、でしょう) 例外的単独者の誠実な瞬間(キルケゴールの考え方)や、現存在(人間=ハイデガーの考え方)の反復において、存在としての自己が常に不安の中で呼び出され、絶対の神と向き合う自己として、自己の方枠として、神の図式のもとに再構成されると考えられていた。 論理における中間のあいまいさを廃し、ただ対象化されるか否定されるかということの中で予想されるこの神は、ただただ方枠化可能な媒介の力としてのみ考えられている。例えば経済や労働力としてである。これは来るべきサイバネチクス技術で、十分にインスタンス可能なはずなのである。(神が自分の似姿に似せて人間を作られたのであれば、その方枠からバックアップして逆アセンブルして神を再インスタンスできる。)不老不死の夢も、すぐだろうて。(まさか まさか) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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