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2005年10月04日
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カテゴリ:哲学研究室

 私達日本人の文化の基礎はあいまいである。良く見えないだけでなく、能面や庭の枯れ山水に見られるように、ちょっと不気味なところもある。顕現した現実のもの(リアリティ)にではなくて、無時間性の彼方に漂う実質の衝撃(バーチャル)にこそ基礎がおかれているためだ。
 江戸時代に園芸の頂点を極めたと思われるマツバランの珍奇な形を眺めていると、その「粋」な様が具間みえるような気がする。
 但しそれは気がするだけであって、個人コレクションの閉鎖された階級でのサークルへ閉じてしまったこの特殊な趣味は、もはや現代には受け継がれていないのである。私達は、私達の文化の粋を、つまり頂点を理解しない。そして同時に、その基礎をも忘れてしまっているのである。

 それはどのようなものか。またなぜ私達はこんな薄暗い基礎を持つようになったのか。

 良く言われる自然観が手がかりとなる。
 つまり自然の定義が、西洋風の見方と見事な逆転をしていることがヒントとなる。
 自然は私達にとって「生の素材」や、「未加工の対象」ではなくて、何かバーチャルなものだからだ。「有象無象の力を秘めた天然の世界の息吹」、そのような実質のかつ無時間性の(個人事ではないので)衝撃として、それらを「自ら然タリ」として仮置きすること。
 日本人固有の哲学と言っても良いこの思想は、日本人の心の形を表明しているのだ。

 物事の本質へと、つまり自分の心へと、鋭く問い掛けていく古代ギリシャ哲学や、神学や科学に基礎を置こうとする西洋風の峻厳かつ厳密な哲学と違って、その心は曖昧である。そして時に矛盾だらけであったりもする。およそ、論理的ではないのである。
 日本人が何かを眺めやり、観想し、心のものとして再表現するとき、それは「もともと良く見えない自分」の周りに広がっていく「似輪の時間」として観想しているのである。

 膠着語という独特の言葉が、まずその独特の文化を形作ったと考えられる。そしてまた閉鎖した独特のシャイな心が、「存在の家=言葉」である家の周りに、庭として形成されたと考えることも出来る。
 欧米語は、一つのことを一つの言葉で表現する。
 膠着語、特に日本語は、一つの事を表現するのに無数の言葉が当て嵌められる。言葉自体がバーチャル性を持っているので、曖昧、非論理的、根拠不明、はなはだしきは主語も述語も消えてしまったりするのである。

 良く言われる禅哲学の影響も大きいかもしれない。こころが描く無時間性の円を紙の上に定着させ、顕現させて反省のよすがとする禅の思想は、自然と人間が対極にある西洋の思想とはまったく違う、ある種の基礎を感じさせる。
 それは隠れた仲介者を常に認め、絶対の対立や矛盾を根源的に認めない寛容な思想である。

 バーチャルに基礎を置くことで、可能性の枠は途方に暮れるように見える。
 しかしそれは一瞬のことで、実際には可能性の枠は無限に広がると言って良い。
 実際に日本の文化は特殊な狭いものではなく、多様であり、外国のものよりずっと柔軟である。狭量に見えるのは、狭いサークルに閉じこもって粋を極めた頂点のものだけだ。
 それらは中尾先生によると特殊な文化の頂点に立つものなので、サークル外部の人には理解出来ない。茶道、華道、弓道、柔道、道のつくものは全部、この特殊な求道の粋な世界だ。
 これらは確かに高く聳え立つ高山なので、目立ちもするがよじ登るのも困難な世界だ。
 外国人だけでなく、普通の庶民も、この文化を見上げて途方に暮れる。
 しかしその裾野は、顕現しているアクチュアルなものより、ずっとずっと広いのである。そして奥深い。
 ただ一つの道ではなく無数の道筋を認める多様さ。混沌といってもよい多様さこそが基礎にあるのは間違いない。
 唯一の調和ではなく、常に動的であって、庭の中心などといったものは存在し得ない。それは観る人の心の方にあり、しかも観る人は私だけではないからだ。
 主語が無い独特の言葉と、庭の形、つまり心の形が対応してくるのは当然のことなのだろう。
 
金網の隙間から首を突っ込んで、執念でお食事中の羊さんが1匹。
執念のお食事





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最終更新日  2005年10月04日 19時52分34秒
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