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2008年06月10日
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カテゴリ:哲学研究室
私どもの常識的知識では、人間疎外という言葉は資本主義の台頭とともに出てくる。
 資本という媒体が資本家の代理人として主人面をし、人間の尊厳を無視して力を振るい始めて出てきたのだ、と、おぼろげに考えている。
 資本論は若いころ反ヂューリング論などとともに流し読みしただけで、理解していたとは、到底言いがたい。だが、この常識に対しては、常に疑問を感じている。

 近代社会の原動力が資本主義への経済進化の動きであること。経済社会の動向が人間の労働をも商品化して組み込むことで、本来社会の媒体にすぎない金が資本という化け物と化して社会を牛耳ること。それらが、世の進化の流れとして、史観として、把握されている。そこに生身の人間が疎外されていることに敏感に気がついた研究者が、人間の実践労働にこそ基礎価値を見出す、というあたりについては、更なる根源的な疑問を常に感じてきた。

 マルクスを祭り上げた人々は、労働という基礎的な人間活動が、価値媒介の働きで物化され商品化される過程で人間疎外が起こるのだと単純に考えたのであろう。エロ収集研究で有名なフックスなどの著作を見ていると、それが出てくる。
 だが、人間疎外という、そのことに気がついた当人が、そんな単純な視点で満足しただろうか、という疑問である。

 そして、むしろ本来媒介であり、価値のインターフェイスでしかない金が、自らの属する「物」と切り離され、資本という独自の、かつ架空のオブジェクト・クラスとなり、この事態が生じたこと。そこで、それら金がもともと属している「物」である社会的人間を、労働というクラスに掌握してしまうことは、更なる人間疎外の原因を作ることになりはしないか、という素朴な疑問である。事実、歴史は、そのとおりの事態となっていた。






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最終更新日  2008年06月10日 12時09分06秒
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