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空母は代替が利く。 しかし優秀なベテラン搭乗員は、二度と補充が利かなかった。この四隻の搭乗員のほとんどを失うことで、事実上敗北はきまってしまった。 しかしまだ十分ではなかった。戦力がまだ残って居た。トップの戦争指導者たちは、敗北を認めて切腹することを潔く認めない。部下に切腹を強要するだけである。 司令長官は、生き残った空母艦載機を全て陸上の前線に配置し、その搭乗員を消耗させていく作戦を続行した。そして自分だけ夏服という死に装束で、自殺行にも似た前線視察に出かけ、p38部隊の刺客に命を落とす。 p38の部隊は、警備のゼロ戦隊を無視して、まるで相手が誰か知っているかのように二機の一式陸攻へ猛攻をかけてきた。 全て知っていたのだ。 指令長官が何を考えていたのか、良くわかる気がする。 泳がされた猶予期限は過ぎた。罠を逆手に取って、情勢を変える試みはことごとく失敗した。 敵の目的は帝国の解体である。総合力数十分の一で、このまま戦争を続けても、悲惨な目に会う人が増えるだけである。民族の存続のためにも、一日でも早く全ての戦力を失い、降伏への内部基盤を作ることであると。 長官のこの思いを引き継いだように、特攻が始まる。小沢提督が引き継いだ、もはや機動部隊とは言えない状態の空母艦隊までが、囮となって沈められる目的で作戦に出る。これをなぶり殺しにした敵は七面鳥撃ちだと、はしゃいだ。 最後には大和ホテルも、沈められる目的で、大勢の少年兵を道連れに最後の出撃をする。 敵はフェアな人種だ。戦士は皆殺しに会うだろうが、女子供を好き好んで焼き殺すような人種ではない。まるでそう思い込んでいたかのように。 今でもそう思い込んでいる人は、誰も居ないだろう。 10 起死回生のチャンスと言える結節点はいくつかある。もちろん後から見ての都合よい無責任な話であるが。 零式艦上戦闘機の設計図が出来た最初の時点で、この最高機密に関する全ての情報をドイツに送っていたら、足の長いフォッケウルフが産まれ、バトル・オブ・ブリテンの敗北はなかっただろう。 またドイツが、88ミリ砲を装備する戦車情報を初期に全て公開して、陸軍がこの88ミリ砲を採用していたら、ノモンハンの敗北もなかっただろう。 お互いに、もう後がなくなってから、切実な極秘情報のオープンなやりとりが始まったのである。大きすぎてドイツ軍のブンカーには入りきらない上に、潜行時もエンジンが騒々しいので先方の水先案内人が青くなったというイ号潜をフランスまで行かせ、大量のゴムやレアメタル、ゼロ戦の設計図も渡した。88ミリ砲も供与を受けた。しかし、すでに手遅れだった。ジェット戦闘機も、ロケット戦闘機も、ドイツの技術を基礎に出来上がった。しかし間に合わなかった。 帝国でほとんど入手できない、大量のウランまで、何隻もの小さなUボートで供与を受けて、国産のトリウムを併用するマルニ開発は最終段階だった。 しかしこのために準備されたイ400クラスの数隻の特攻空母は、幸い出撃することも無く解体された。これの使用は、すでに起死回生のチャンスではありえなかった。それが煽るであろう憎悪から、むしろ民族の滅亡を意味するものだったからである。だから陛下が、この悪魔の兵器の開発続行を許さなかったと言われる。 マルニがあるということは、マルイチもマルサンもあったのだろう。どんなものか知らない。 結局マンガにしかならなかったが、鉄人28号も間に合わなかったようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年08月27日 12時22分42秒
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