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2011年01月11日
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カテゴリ:哲学研究室
 教科書や雑誌、特に夏休みの宿題などで何度もお目にかかっていたが、詩なるものに共感を感じたことは一度もなかった。中学生の頃、父の蔵書に北原白秋の邪宗門を見つけるまでは、である。
 白秋の詩は、多く歌詞になっている。詩というより、詞というべきだろう。
 柳川の光と影が、風の匂いまでが、短い文章に詰まっていた。初めての詩(詞)との出会いだったと言うべきだろう。言葉が単に述べている事柄をつたえるだけでなく、それほどの「世界といっていい」含蓄を持つことを、初めて知ったのである。

 小生は倉庫に積まれた親父の蔵書を漁り、数多くの詩集や詩人たちの全集を見つけ出した。
 明治期の藤村から始まって、終戦までの有名どころはほとんど揃っていたと思う。俳句集や歌集もあった。しかし興味を抱いたのは藤村以降の詩だった。
 その中で、次に夢中になったのは宮沢賢治である。
 独特の口調や文章のリズムが、ゆりかごのように気分を良くした。どれほど陰惨な内容がつづられていても、映画のシインを見ているようなもので、そのリズムから出て現実に戻ろうという気分は起きない。

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 詩は仮想の異世界に純朴なこころを導き、ゆりかごのように慰撫するのである。
 イメージを重畳させ、繰り返す波が独特の情緒をかもし出す。これを叙情と呼ぶようである。
 しかしそこで自分の庭を振り返れば、その詩の中に居たと同じ詩神ミュウズが、貧しい自分の庭の片隅にも羽を休めていることに気が付く。エウテルペだったのだろうか。
 突然に明るく広がった、戦い取るべき実有(ウーシア)の世界を見つけてしまったようなものである。

 小生も白秋調の文語体から始め、やがて賢治の手法を真似ることに熱中した。
 そのころ、倉庫の本棚の奥になっていた文学全集や小さな詩集などが出てきて、突然に大勢の過去の詩人たちとお知り合いになった。
 その世界は千差万別だったが、世間の評判と詩の世界の重みとは違うのだなと思った程度で、賢治以上に鮮やかな世界は見出せなかった。薄汚れたペラペラの、ネズミのションベン臭い「月に吼える」や、分厚い全集の中にひしゃげた「青猫」を見つけるまでは、である。

 病的で破滅的な感情に満ちた、その詩集の力は圧倒的だった。
 ミュウズが部屋の中にまで入ってきて、”テフテフ”のように翼を上下させているのを感じたほどである。
 その後も四季派の詩人たちや立原道造の14行詩にも興味を抱いた。だが、現在活躍中の詩人たちに、ほとんど関心は無かったと言って良い。
 高校生の頃、コースという雑誌投稿を通じて伊藤新吉先生や寺山修二先生が小生を見つけ出してくれたのだが、その頃には「氷島」のアフォリズムにのめりこんで、すでに窒息寸前だった。

 現代詩壇というモノがあることを知って、四季派に似たグループを見つけ出して門をたたいた大学入学の頃には、もうミュウズの方が飛び去っていた。乏しい小遣いで世界中の詩人を尋ね探し回った。だが、ミュウズたちは何処にも居なかった。
 アフォリズムの意志無き寂寥がそれを追放したのか、現代詩壇の末席にもぐりこみたいという希望がそれを追放したのかは、わからない。
 たぶん、思春期特有の、こころの動揺が去っただけなのである。





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最終更新日  2011年01月11日 17時08分45秒
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