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2012年10月21日
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 それは数学の授業だった。
 実はカネがないんで高価な教科書も買っておらず、授業も出席して点稼ぎをするだけ。上の空でチンプンカンプン、だった。空白のノートだけ開いて講義を書き写すフリをしながら、時間を潰していた。半分寝ていた。
「では、次のページに出てくる設問で、これから諸君の数学力をテストします」
教授の一言で目が覚めた。えらいこっちゃ、設問もわからん、ではないか。

 幸い、設問は読み上げてくれた。あわててメモしたが、要点が抜ける。
「対象に含まれる部分と、含まれない部分との比を数学的に示せ」
 ということだと受け取った。
 誰もが頭を抱えていた。
 隣りの顔見知りの女の子も、「これって数学の問題なん?」という。

 教授が回ってきたとき、その子は質問した。
「これって、数学の問題、なんですか? 数がないのに」
 教授は答えてオイラを見た。
「数得る、のが数学だからね」
「君、答えてみなさい」
 オイラは答えられなくて苦し紛れに目が覚めた。夜の2時だった。夢の中で設問されても必ず答えられない。オイラの夢は数学的でないからである。

 数学は必ず全体を先験的に総合判断で置く。だから対象となっていない全体を Aと代置し、対象に含まれる部分をKとして、A引くK が含まれない部分となる。
 この両者の比はK 対 A引くK という比なのである。

 しかし問題が生じる。
 対象となっていない全体をA と代置することの妥当性である。それは夢の不可解な全体でもある。

 隣りにいたクラスメートは、どこかで出合った顔だった。
 若い頃高校のクラスメートと同窓会のあと二次会に行って出合った、アゴの突き出たヒルサロのホステスに似ていた。一期一会の仲だったわけである。
 数学という数得る悪夢のクラスには、必ずつきまとう時空間である。





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最終更新日  2012年10月21日 07時48分19秒
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