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2017年02月15日
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カテゴリ:哲学研究室
 イメージがない、そのことは、予定が要らない、ことを意味する。
 主語が立てられずに、感性の把握したモノが直接語られる。
 
「うつくしきもの。瓜にかぎたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る。二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひくる道に、いと小さきちりのありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる。いとうつくし。」

 枕草子に語られる対象は、必ず最初は「モノ」である。
 美が語られているんじゃあなくて、うつくし((メ)に写る、奇しき)と形容されたモノが語られている。
 写った、描かれたモノが語られているんでも、ない。

 そのモノを形容して、共有のこころを惹起して他人に伝え、最後に自分の感性が捉えたモノの過去の親しみ(フィリア)に立ち返る。
 イメージや予定は、ここには皆無である。

 写る、というこころの構えのしぜんな様を述べているんであって、ピクチャーのモノ自体(偶像、対象)を述べているんじゃあない。
 さいごのうつくし、というのも、対象の名詞ではなくて、動詞だとか副詞的な扱いである。写奇し。
 うつくしき「もの」はあっても、近代的思想が言う「美」、など、ここにはないのである。

 いまひとつ、現代との相違がある。
 ワタシ、が、ない。
 ワタシが、うつくしきものを見ているんじゃあ、「ない」のである。
 ワタシがないから、悪霊の否定の声を聞く哲学も、ここには要らない。
 主語が立つことと、イメージが立つことは、必ず対になって出ーてくる。
 ポイエシスが主導して、ある、ということ。

 近代用語としてのイメージを否定したのは朔太郎だが、これと正面から格闘していた詩人は宮沢賢治である。
 だが、彼は心象の光るハガネのような固いものと格闘して修羅となっても、ワタシが明確にならないために、詩や童話で信仰は語れなかった。
 近代の農学や鉱物学の本質が、知識ではなく目的への技術にあることが明確であっても、その目的が見えないために、彼はいつまでもイーハトーヴオの春を探して、ポランの牧場をさ迷うしかなかった。

 宮沢賢治をダメだと言い切る人は、近代的自我の立たない実務能力に欠けたダメ男を見ているわけである。
 逆に心酔する人は、主語の明確でないイメージの持つリズムの背後にある、魂の感性みたいなモンの主導のゆくえを見ているわけである。
 いまひとつ、明確なワタシ、が、ない、というのは、日本語の特徴なのである。

 イメージがないことは、予定が要らない。
 だから悪霊も、明確な姿を見せない。
 しかし信仰が強要した1日に玄米4号とミソと少しの野菜の食事は、賢治を若死にさせたのであることを忘れてはならない。 






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最終更新日  2017年02月15日 08時20分38秒
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