誤診の「誤」の字が悪いのかも知れませんが、誤診したからと言ってミスだというわけではありません。正確な診断のための努力をする義務はありますが、結果として常に正しい診断をする事は不可能であり、そんな義務はありません。平均的な医療レベルから逸脱していたならともかく、そうでなければ不可抗力です。
「死亡は誤診が原因」がたとえ正しいとしても、それ故に原告勝訴とならないことを期待します。そんなことがまかり通れば、打率十割でないバッターは全員クビです。
慶大病院訴訟 被告、反論書提出へ きょう第2回弁論 千葉地裁松戸支部
2010年5月7日 提供:毎日新聞社
医師はリスクを承知で研究を優先させたのか、それとも最善を尽くしたのか--。慶応大病院(東京都新宿区)で治療を受け、がんの一種・子宮肉腫(にくしゅ)で亡くなった女性の両親が「死亡は誤診が原因」として慶応義塾に賠償を求めた訴訟の第2回口頭弁論が7日、地裁松戸支部で開かれる。被告の慶応大側は前回弁論で請求棄却を求めており、今回、訴えに全面的に反論する答弁書を提出する見込みだ。
県内に住む女性の両親は「早期に子宮を摘出すれば助かる見込みがあったのに、良性の偽肉腫の可能性を告げられ、結果的に誤りで手遅れとなった」と訴えている。
訴状によると、死亡した女性は03年8月、子宮のポリープで慶応大病院を受診。同大医学部助手の担当医と向井万起男准教授は切除した組織片を調べ、肉腫に見えても良性の場合があるとする海外論文を参考に「良性の偽肉腫が第1候補」と診断。ポリープを調べる経過観察を続けた。だが、女性は04年10月に大量出血。病院は開腹手術で子宮肉腫と診断したが、腹部に転移し手遅れの状態で、同12月死亡した。
向井氏は腫瘍(しゅよう)病理学の権威で同病院の病理診断部長を務め、宇宙飛行士向井千秋さんの夫としても知られる。向井氏らは女性を珍しい偽肉腫のケースとして2度、学会に報告している。
国立がんセンターがネット上に公開している「がん情報サービス」は、子宮肉腫では広く転移した手遅れの場合を除き子宮全摘出を治療法に挙げている。
女性の死後、両親らは「どう考えてもおかしい」と弁護士に相談。医学界の権威に異を唱えることに戸惑いもあったが、「娘の死を無駄にしたくない」と提訴を決意した。
取材に応じた女性の姉(36)は「妹は芯の強い子で、痛みを伴う経過観察の処置にも泣き言を言わず、医師を信じていた」と振り返る。母親(63)も「娘は自分が命を落とすとは最後まで考えず、家族も先生の言葉を信じて命の危険があるとは思わなかった」と、涙を流しながら訴えた。
一方、向井氏らは遺族にあてた文書で「当時の女性の体調で今回のような肉腫は普通発生しない」と指摘。「女性は子供を産みたいという気持ちが強かった。良性の可能性があるのに子宮を摘出するのは暴論」などと過失を否定している。【西浦久雄】
過誤かどうかを争う提訴の報道で、「妹は芯の強い子で、痛みを伴う経過観察の処置にも泣き言を言わず、医師を信じていた」と言うような、情緒的ではあるが過誤の有無の判断には全く無関係な記述をする必要が何処にあるのでしょうか。
基本的には、裁判の結果が出るまでは報道しない方が良いと思います。もとより新聞記者には過誤の有無を判断する能力はありませんし、専門家にきちんと取材する能力もありそうもないです。裁判が正しいとは限りませんが、一応裁判の結果は尊重するシステムなのですから、その結果が出てから報道することにしたらどうでしょう。ミスでない場合には、言いがかりを付けられただけで多大なコストを余儀なくされ、たとえ勝訴しても被告には何も得るものはありません。その上結論も出ないうちに原告の言い分に重きを置いた報道でさらし者にされるのでは堪りません。