麻酔というのは他科の医師から見たら簡単だと思われているかも知れません。実際、いくつかの症例を無事に麻酔するだけなら難しくないと思います。でも、無事に麻酔を終えることを一生涯続けることは難しいのではないかと思っています。
麻酔というのは基本的に無事に覚醒することが当然と考えられていて、術前から全身状態が非常に悪いとか、肺塞栓症やアナフィラキシーのようなまれな併発症などを除けば、死亡すれば事件となりかねません。事件となれば、当然警察が入ってきます。
全身麻酔の4歳児死亡、担当医師を書類送検へ
福岡市博多区の整形外科医院で2010年4月、同区の男児(当時4歳)が骨折したひじの手術を受ける際、全身麻酔の直後に心肺が停止し、約2か月後に死亡した問題で、福岡県警は3日、男児の容体の急変に気付くのが遅れ、適切な処置を怠ったことが原因だったとし、麻酔を担当した同院の男性医師(40歳代)を業務上過失致死容疑で福岡地検に書類送検する。
捜査関係者などによると、男児は10年4月9日、通っていた幼稚園で、鉄棒から落ちて右ひじを骨折、同院を受診した。医師は、男児の骨折部位を固定する手術のため、全身麻酔を実施。その後、男児の容体は急変し、同年6月18日、転院先の病院で多臓器不全で死亡した。
県警は、医師が、男児の全身麻酔で、呼吸を確保するチューブを挿管する際、容体を管理する機器を注視しておらず、容体の悪化に気付くのが遅れたことを重視。その後、早急に救急病院に搬送するなど適切な措置をとる注意義務を怠ったため、男児が死亡するに至ったと判断したとみられる。
(2012年4月3日 読売新聞)
記事では麻酔導入時の心電図や血圧といった生体情報(バイタルサイン)のモニターを怠ったことが問題とされているように読めます。でも、私が問題にするとしたら、容態が急に悪化した原因です。もちろんモニターしていれば容態の悪化には気が付いたでしょうが、それより容態を悪化させないやり方をしていたのかどうかが問題ではないでしょうか。
子供の麻酔には大人とは違った難しさがあり、いろいろと想像することは出来ますが、想像はあくまで想像です。きちんとやっていても容態が悪化することはありますので、ここではコメントしません。でも、実際のところ、何があったのだろう。そもそも麻酔を担当したのは麻酔科医だったのだろうか。