テーマ:BAND-MAID(5)
カテゴリ:クラシック
「ON SET」は、エレキギターのサウンドの魅力を、キャッチーなメロディーラインに乗せて、あますところなく引き出した名曲で、意のあるギタリストなら一度は弾いてみたいと思わせる魅力を持った作品でしょう。あちらの(往年の?)ハードロッカーたちも、よほど刺激されたと見えて数多くのリアクション動画が出回っていますが、インストルメンタルだけでヴォーカルがないのを幸い、オンライン仲間と組んで、そっくりカバーした演奏を披露している方たちもいますね。
それにしても、ここまでカナミさんのリードギターが鮮やか過ぎると、そのメイド服姿が何となくサマになって、「ON SET」はこのカッコじゃないと、と思えてくるから不思議ですね。 しかし、このBAND-MAIDの演奏で注目すべきは、リードギターのピッキングやタッピングなどのかっこよさもさることながら、むしろドラムとベースを中心とした「爆進的なリズムの推力」のすごさで、このグループの演奏スタイルがよく出ている点だと思うのです。 ともすれば爆進的なリズムセクションのパワーに、木の葉のように翻弄されそうなリードギターの進行を、陰に陽に巧みに支えているのが、リズムギターを担っているミクさんで、カナミさんのタッピングの間、主旋律を補強しているのはミクさんのギターですよね。このあたり、なにやら彼女の立ち位置を、よく現しているようで面白い。 ヴォーカルのほうでも、サイキさんのバックコーラスとして、とても効果的な出入りをしてらっしゃる。こうした彼女の役回り、ライヴでは舞台のあちこちを駆け回って、時にリズムセクションに入ったり、あるいはリードヴォーカルを補強したり、そして何より幕間の「お給仕タイム」では、ミクさんが主導してパフォーマンスを披露しているというか、そもそも彼女のほかに「キュンキュン、萌え萌え!」なんて誰もやる人がいない。 というところで、サイキさんの話に戻るのです。四人でスタートしたバンドですが、すぐロックバンドに必要な強いヴォーカルとしては、ミクさんの声質は高過ぎるとご自身が考えた。そこで新たなヴォーカリストのスカウトを始めたのですが、ネットでいろいろな話を見ていると、同じ事務所にいたサイキさんにミクさんが目を付けたというより、事務所のほうからミクさんのほうに紹介があったというのが本当らしい。とすれば、ピックアップされたヴォーカリストは、一人や二人じゃなかったろうというのが、私の勝手な推測です。 ミクさんは何人かのデモテープを聴いて、サイキさんの低めで強い声質に白羽の矢を当てた。となると、サイキさんとBAND-MAIDとをアレンジするのは、事務所側の仕事ということになります。ミクさんはおそらく同じ事務所とはいえ、サイキさんのことを知らなかったでしょう。今では「メイド服とは知らずに、だまされて入った」という話は笑い話になって、さまざまな「物語」の尾ヒレもくっついているようですが、要は事務所側は声をかけるときに、かなりサイキさんに気を使ったということでしょう。何に気を使ったかといって、もちろんサイキさんの高い高いプライドに対してです。何しろ「おめえら、かかって来い!」と観客に言ってのける人だったそうですから。 面接のときに、ミクさんは顔を出さなかったとか、どうだったとか、このあたりは物語が多すぎて、話に気をつけなければいけないのですが、要はハレモノに触るようなスカウティングだったのでしょう。 とはいえ、これまたまったくの想像ですが、そうした彼女のパーソナリティーを、ミクさんはきっと面白いと思ったに違いない。そうしたじゃじゃ馬的女性(失礼!)は、メイド喫茶で何人も見て来ただろうし、むしろそれくらい気概のある子のほうが、仕事が出来ることを知っていたのでしょう。案の定、最初のライブのあと、サイキさんはメイド衣装のエプロンを投げ捨ててみせた由。普通の女子会なら、そこですべておしまいというところですが、ミクさんがそのように動いた形跡はない。 ここで、なだめに入ったというか仲裁したのが、これも完全に推測ですが、おそらくカナミさんだったろうと私は思うのですよ。カナミさんとしては自身の作品が世に出せるかもしれないこのチャンスは、どうしても物にしたかった。そこでの彼女のサイキさんへのアプローチは、たぶん「あなたの唄う曲を、必ず作りたい」というようなことではなかったか? この話があったとすれば(実際は知りませんよ)、興奮したサイキさんをかなり鎮める効果があったのではないか、自信はあるとはいえ、鳴かず飛ばずの歌手として一人で活動するよりも(安室さんが目標だったそうです)、かなり技量のあるバックバンド(!?)と、何よりも作曲家がグループにいるというのは、その衣装はさておき、やっぱり魅力だったに違いない。 それかあらぬか、実際にはカナミさん自作の作品が、BAND-MAID結成後なかなか取り上げられなかった時期、一番寄り添って作品を作り続けるよう励ましていたのは、今度は逆にサイキさんだったとか。そのあたりの二人の関係を想像させる動画があります。「アコースティック版パズル&アネモネ」 もともとハードロックナンバーである「パズル」が、すっかりフォークデュオのような音楽になりおおせているのも一興ですが、中間の二人のたわいないおしゃべりを聞いていると、何やらただならぬ二人の関係がただよっているじゃないですか。サイキさんの声が好きで好きでたまらないカナミさんに対して、おそらく年下のサイキさんのいかにもツンデレっぽい応対。笑ってしまいますね。 と、ここまで書いていて、ミクさんとサイキさんが気が合わないだの、カナミさんとサイキさんが妖しいだの、といった話は結局BAND-MAIDの個性を売り出す、さまざまな尾ヒレつきの物語になっていて、バンド仲間自身がそれを楽しんでいるフシがある。私もしゃべっていて、何だかよくある体育系の女子アニメ(観たことありません)を観ているような気がしてきました。 いずれにしても、サイキさんがBAND-MAIDに止まる決心をした瞬間に、彼女もグループもそのありようと方向性の輪郭がハッキリして来たのではないか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.11.06 11:36:31
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