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サリエリの独り言日記

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2022.11.17
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テーマ:BAND-MAID(5)
カテゴリ:クラシック
この「REAL EXISTENCE」、直訳すれば「真の存在=実在、厳存」などということになるのでしょうか?英語でもたぶんめったに使わない用語だと思うのですが、世界大戦直後には「existentialism (実存主義)」という、気難しい哲学が流行りましたね。爾来、ハードロッカーのなかには、体制批判、反権力の象徴として、音楽のタイトルや歌詞で、やたら難しい用語を振り回すグループがいましたが、もちろんBAND-MAIDのこの曲には、そうした重苦しさは微塵もありません。むしろ最もシンプルなロックナンバーとして、歌とインストを楽しんでね、という出来映えで、ロックファンにはごく馴染みやすい音楽なのでしょう。
 しかし聴きようによっては、かつて存在した難儀なハードロックに対する、強い反射体を示しているような気もする。ちなみにこの曲、作詞作曲とも外部委嘱の作品で、活動初期はそうした音楽が主だったようです。なるほど。
 ところでかつてのハードロッカーたちが、なぜ反体制、反権力の身振りで哲学用語をはじめとして、難しいタイトルや歌詞を採用したかという問題は、ロック音楽そのものの本質とも絡んでくると思うので、あらためて(出来たら)話したいと思っています。

 言い忘れましたが、ミクさんが京都に魅かれた点が、もう一つあるかなと、私は思うのです。それはこの前のような「京都人のエートス(立ち居振る舞い、ものの考え方)」といった抽象的な話ではなくて、はるかに具体的な、例えば西陣あたりで行われている、職人たちの分業システムのような形態ではなかったか、とまたまた想像してしまう。
 百年後あるいは一千年後に残すような一つの着物、あるいは工芸品とかを生み出す工程に、どれぐらいの職人が関わっているか。各職人は名は残さないけど、高いプライドと互いの技術をリスペクトし、信頼しあう関係で結ばれているじゃないですか。肝心なことは、ここには「リーダーは存在しない」ということです(言い出しっぺは、いるかもしれないけど)。こういうスタンスって、何かと「我が、我が」と個の名前と業績を追求しがちな、今どきの風潮に対して、敵対的ではないけれど、ほとんど冷笑的とさえ思えるスタンスで、私たちを見返しているように見える。

 この職人的スタンスは、ある意味BAND-MAIDの今あるスタイルに似ていません?志のある技能者が集まって、それぞれ分担された技量を磨きながら、一つの作品を生み出していくという点において。これは例えば、お祭りの神輿(みこし)に似ているような気もするのです。自分たちは神輿を「担ぐ側」なのか「担がれる側」なのか、企業の社長さんや政治家あるいはアーティストの中でも、自分はアプリオリ(先験的)に「担がれる側」だと勘違いしている人って結構多いんじゃないか(自分はもともと才能があったから、とか)?しかし担ぐ対象は「神輿」に祀られている神様であって、ここから先も人間ではない(神様が怒ってしまいますよ)。
 で、そこにいる神様は何なのかと言えば、担ぎ手の集団意志にそって、それが企業体であっても選挙民であっても音楽であっても、イワシの頭であっても何でもいいのです。それぞれの集団やグループが、その中で共有できるある「大いなるもの」を措定したとき、それは「神様」として祀り上げられ、全員がその担ぎ手になるのです。ここで「担ぎ手」に名前は必要ない。みんなが措定したある「大いなるもの」が、充分に奉祝されるかぎりは。

 ここの話で最初のほうに取りあげた「Don't you tell ME」なのですが、例の中間部のところ、ギターとベースの対話が強く印象に残ります。しかしよく聴いていると、この間、背景放射のように漂っているシンセサイザーの持続音と、時を刻むかのようなドラムの打撃音が、きわめてスリリングな音の空間を創り出しているでしょう。これらはその前のMVにはなかったものであり、ライヴを重ねるごとに、メンバー内で出てきたアイディアだと思うのです。これがあることによって、ここのギターとベースソロが突出せずに、曲全体にうまく溶け込んでいる。聴き終わったあとのゴージャスな印象というのは(かなり満腹感もともないますが)、こういう細部に対するアイディアとか、仕上げへの「こだわり」から生み出されてくるのだと思う。
 これって、やはり一種の職人的な「こだわり」だと思うのです。で、そうした空気感をバンド仲間に作り出していったのは、やはりミクさんとみて間違いないでしょう。彼女は自らリードヴォーカルを捨てることによって、より「大いなるもの」を祀り上げていく、巫女のようなポジションを見出したと言っていいのではないか?それかあらぬか、「thrill」のころセカンドヴォーカル的な位置にいたミクさんは、次第にバックコーラスに退いて、むしろそこからバンド全体の「サウンドを眺める」ことに面白味を感じていたようですね。
 それにしても、この時のアカネさんのドラムは素晴らしく、テンポを守りつつ、何だかリズムセクションの枠を超えて、主役二人のセッションが作り出すサウンドに深く嵌入している気がする。こういうドラムというのも、私の数少ない経験ではあまり聴かないんですよね。ベースのミサさんがアカネさんについて来たというのも分かる気がする。

 とはいえ、進化を求めてやまないミクさんは、昨年ソロプロジェクトcluppo(くるっぽ、鳩語で「こんにちわ」という意味らしい) を始めたり、最近の作品ではバックコーラスとリズムギターというポジションは変わらないものの、音楽的には以前と比べて、より前にせり出してきた感じがします。それのよく出た曲を聴いてみましょう。「Manners, BLACK HOLE





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Last updated  2022.11.17 16:52:04
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TNサリエリ@ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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