テーマ:短編を作る(405)
カテゴリ:短編小説
地上に、並び立つ人々の住む家々。
その建物群が、蝉の目にどう映っているのかは解らない。 蝉自身、自らに死が迫っている事は、重々承知している。 それは、覆すことが出来ない宿命。 ・・・最後に、あの建物の中に入りたい・・・ ・・・夜になると、不思議な灯りを灯す、あの建物の中に入りたい・・・ ・・・地上にそびえ立つ、山脈の様な、あの建物の中に入りたい・・・・ 家の扉が開き、家の中から灯が漏れた。 ・・・今だ!・・・ 蝉は、扉を抜け、玄関の踊り場を飛び回った。 「蝉だ!捕まえて!」 人間たちの声が、玄関の踊り場に響いた。 蝉は、玄関に掛けてあった姿見の鏡の裏に飛び込んだ。 ・・・・・ここだ・・・・僕の最後の場所・・・ 姿見の鏡の裏のその場所が、 蝉を優しく受けとめてくれているように思えた。 そう思うと蝉の身体は、その場所に馴染んでいった。 ・・・・・ここが・・・・僕の・・・・最後の安住の地・・・・ と蝉が思った時、姿見の鏡が取り外され、 人間が、蝉の身体を掴んで、素早く、窓の外へと蝉を放った。 ・・・・・ジジ・・・・・・・ 蝉は、そう音を立てながら、夏の夜空を飛んだ。 。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。 おしまい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jul 30, 2016 01:54:51 AM
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