カテゴリ:月の巡洋艦 ルナメル
見上げる空の向こうに敵がいる恐怖は、 宇宙に住む人には解らないと思うよ。 士官学校同期のエイミアが言っていた言葉を思い出した。 「宇宙に住む人」 遠い昔の人にとってはSFに過ぎなかった話だ。 人類が月に住むようになって15年。 その月で生まれた最初の世代は、月に愛された世代と呼ばれ、特別視される感があったが、実際は何も変わらないので、多少照れ臭かった。 その世代のユージン・カイムは、強行偵察型ゼムで、1人、宇宙空間を漂っていた。 是無(ゼム)とは、人型の大型兵器だ。 ステレス技術と光学迷彩技術が高度化したため、接近戦を強いられるようになった結果、人型の大型兵器が開発された。 宇宙の暗闇の中、地球連邦の艦隊が通り過ぎるのを、成りを潜めて待機していた。 宇宙空間の冷たい暗闇が孤独感を強めた。 しかしユージン・カイムに取って、それはとても心地よいものだった。 逆に大勢の人の中いる時の方が、孤独を感じてしまう。 ユージン・カイム。 漢字表記するとして【友人皆無】になるが、それはそれだ。 漢字圏の人間ではないユージンには関係のない事だ。 ただユージン・カイムに友達が1人もいないのは事実だが。 早期警戒機から敵艦隊接近の情報が届いた。 「さて」 ユージン・カイムは1人呟いて、強行偵察型ゼムを動かした。 強行偵察型ゼムが、連邦の艦隊がいるかも知れない宙域に突入した。 敵艦隊自体は光学迷彩化されており見えない。もちろんこちらの姿も見えない。 ただ音は完全には消せない。なにせ大型の宇宙要塞だ。 加速する強行偵察型ゼムのコックピットで、カイムは耳を澄ませた。 強行偵察機が飛んできたからと言って、迎撃をしたりはしない。 そんな事をしては、自分はここにいますよ!と言ってるようなものだ。 今、地球の潜水艦の様になりを潜めているに違いない。 高感度の集音マイクで、それらしき音は拾えなかったが、ユージン・カイムは直感で、アンチ光学迷彩弾を四方に発射した。 まるで見えないドアをノックするかのように。 宙域が閃光に包まれ、敵の影が映し出された。 「いた!」 間違いない空母機動艦隊だ。 その姿は8つのカメラにより撮影され、解析されたデータは、近くにいるであろう早期警戒機に送られた。 姿をさらされた連邦の戦闘機と連邦のゼムの横をすり抜けた。 宇宙要塞ブールタング級の周囲に展開する対空艦の対空砲が、強行偵察型ゼムへ浴びせられた。 「当たらないんだな、これが♪」 強行偵察型ゼムの機動力とフットワークの軽さは、簡単には撃ち落とせない。 しかし、Gが半端ない。 それが解っているにも関わらず、よりGが高い操縦をしてしまう自分がいる。 意識が飛びそうになる程のGは、快感でもある。 敵の砲撃を躱しながらも、カメラは全自動で連写され続けた。 宇宙要塞ブールタングに待機していた敵のゼム群が飛び出し始めた。 しかし残念ながら、護身用の武器しかない強行偵察型ゼムが、この宙域に留まるのは危険すぎる。強行偵察型ゼムは、素早く戦線から離脱した。 姿を晒された地球連邦の艦隊は、その直後、宙域に突入してきた月面都市連合のゼム戦闘群の、攻撃に晒された。 ゼム戦闘群の第一波攻撃が終了する前に、ユージン・カイム機は、味方の巡洋艦に着艦した。 つづく トレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安! あみあみ 楽天市場店 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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