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高知に自然史博物館を

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 前回に続き,高知城について書きます.今回は,行き過ぎた管理によって高知城の自然が著しく失われているという問題.

 公園の手入れが行き届きすぎているということ.これは「指定管理者制度」と関係しているらしい.
 従来は公園の維持管理の作業を自治体職員が行っていた.そうでない場合でも,職員が主体となって管理していた.あまり隅々まで手が届かないし,聞こえは悪いが適当に手を抜くことで,公園の自然は維持されてきた.
 しかし最近は経費節減だとか効率化だとか言って,民間の業者やNPOに,公園の維持管理という業務全体を丸投げしてしまう.詳細を知らないが,1年契約というのが多いのでなかろうか.丸投げされた側は,翌年も契約をとりたいから,とことん熱心に管理することになる.昔ならあまり手を付けられなかった薮を切り開き,草刈り枝払いを徹底して実施する.高知の場合,公園の管理者に指定されるのは,造園業者が多いらしい.つまり造園業者がその得意技を駆使して,山全体をまさに庭園に造り変えてしまったわけだ.

 こういう変化を最も敏感にキャッチするのは,昆虫の愛好家だろう.ところが今は昆虫の愛好家は非常に少ない.よって変化に気づく人は少ない.気づいた人が警告を発しても,大きな声にならない.1970年代に昆虫少年たちを疫病のように駆逐した「昆虫採集バッシング」の負の遺産が,こういう所に現われている.
 かつて高知城にいて,今は見られなくなってしまった昆虫はたくさんいる.たとえばベーツヒラタカミキリという甲虫が昔はいた.いかにも南国高知に似合う昆虫で,私もこの昆虫の集まるクスノキの枯死部や倒木を求めて高知城の山を歩き回った.
 今はもういないでしょう.言うまでもなく造園業者にとって,立木の枯死部や立枯れ木や倒木は,基本的に余計なものであり,除去すべき対象である.この公園での話ではないが,立枯れ木を放置していて,それが倒れて誰かが怪我をしたら,誰が責任をとるんだ?などという,無茶苦茶な議論もあった.こういう発想では,自然との共存はしょせん無理である.
 ついでに書くけれど,私は「共生」と言わずに「共存」という言葉を使う.「共生」などとことさらにひねった表現は,それ自体がうさんくさい.自然を破壊することしか頭にない連中が使う目くらましの言葉である.
 話をもとへ.
 とにかく,こうした枯死木や腐朽木が除去されるということは,たくさんの種類の昆虫が住処を失うということだ.カミキリムシ類だけではない.タマムシやクワガタムシや,その他たくさんの甲虫類がこれに含まれる.それらに寄生するハチも住めなくなる.etc.etc....

 枯木,朽木,倒木だけではない.庭造りの発想で管理を徹底することで失われるものはたくさんある.たとえば落葉である.落葉は腐葉土の原料であり,後者は生物多様性をブーストする,文字通りの「土壌」である.人通りの多い遊歩道の落葉を掃除するのは,まあその必要性があるのでしょう.しかし観光客のあまり来ない裏道まで落葉を掃き集めて,大きな袋に入れて回収するのは,明らかにやり過ぎだ.
 管理の徹底で失われる別の例は,たとえば動物の糞や死骸である.たとえば蚊の発生源ともなる小さな水たまりである.よく管理されて風通しの良くなった場所ではキノコも生えてこない.キノコがあると,それを食べる虫が集まる.その虫を食べる虫や,虫に寄生する生物が集まる.キノコは倒木や腐葉土や糞や水たまりと同様,それ自体が「小さな生態系」である.自然を「庭」に造り変えることで,こうした「小さな生態系」の多くが失われる.すると生物多様性が大きく減少する.
 多様性の減少とともによく観察されるのが,特定の生物の大発生である.それが迷惑な生物であった場合,こんどは殺虫剤を散布しようという意見が幅をきかすようになる.こうして環境破壊が進む.日本人が数えきれないほどの実例を見てきた,あの同じシナリオがそっくり再現されることになる.

 私は高知城を,人跡未踏のジャングルにして欲しいなどと言っているのではない.高知城の城山を「庭」に造り変えてはいけないと警告しているに過ぎない.適度に手を入れることは,むしろ必要なことでもある.しかし同時に,適度に手を抜くことによって,豊かな自然が存続できる.その点を十分に考慮した公園の管理であって欲しいと思う.





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Last updated  July 14, 2009 10:46:59 AM
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