カテゴリ:カテゴリ未分類
昆虫採集で網を振り回したら花を傷つけるかもしれないし,花壇に足を踏み入れるかもしれない.高知県立牧野植物園が園内での昆虫採集を禁止している理由は,そのようなものであった.
園内には,たくさんの植物が植えられている.それらを傷つける「かもしれない」行為はいろいろある.網ではなくて棒切れを振り回す人(特に子供)もいるかもしれない.花の写真を撮ったり,入園記念のスナップ写真を撮るために,植え込みに足を踏み入れる人もいるかもしれない.たくさんある可能性の中で,昆虫採集だけを名指して禁止する理由がどこにあるだろうか.私が考えた回答はこうだ. それは昆虫採集をする人が少数である,または子供であるからだ.少数者や弱者(子供)は無視してよい,という計算が働いているのだ. たとえば園内での写真撮影を全面禁止したら,たぶん入園者数に,したがって園の収入に,影響が出るだろう.だから写真撮影(多数者が相手)は禁止しない.昆虫採集を禁止しても,そういう影響はあまりない. 少数者や弱者の行動を制限することには無頓着であるが,減収に結びつくようなことはしない.そういう思考をする人たちが「昆虫採集全面禁止」というルールを決めた.おまけに,この人たちは自然教育における昆虫採集の意義を全く理解していないらしい.そういう人たちに牛耳られているのが,いまの高知県立牧野植物園である. 話を元にもどす. 昆虫採集の禁止だけではない.最近は,何々する「べからず」という規制が多すぎるように思う. 職場の近くに川がある.川の堤防を人々は自由に往来していた.それが,いつの間にか,堤防の道(1〜1.5車線ぶんほどの道路幅がある)が「車両乗り入れ禁止」になっている.この川の中州に,夏はカワセミが営巣する.それを観察できる絶好のポイントにクルマで行けないことになった. 念のため書き添えておきますが,クルマは野鳥観察を助けてくれます.人の姿を見ると逃げたり警戒する野鳥も,クルマを恐れることは少ない.クルマで行けば野鳥にストレスを与えることなく接近して観察できる. この堤防道の場合は,堤防道から河原にクルマを進めて駐車すれば,交通の邪魔になることもない.誰に迷惑がかかるわけでもない.それを禁止する理由は何だろうか. 「河原にクルマで来てゴミを捨てて行く奴がいるからだ」という説明を聞いたことがある.にわかに信じがたい「理由」である. 昆虫採集禁止の場合もそうだったけれど,何かトラブルが予想されるとき,実際に禁止しなくても構わないような事柄まで含めて,ある行為が十把ひとからげに全面禁止されることが多い.道路交通の「一旦停止」のようなもので,きっちり停止しなくても十分に安全が確保できる場合があるのに,「本当に停止したかどうか?」ばかりが問題にされる.規制のし過ぎである. 危険やトラブルに結びつきそうなことを十把ひとからげに禁止すれば,なるほど,取り締まる側は楽だろう.しかし,そういう事例が増えれば増えただけ,社会は窮屈になる.極端な規制は社会を窒息させる.規制する側のご都合だけで話を進めた結果,「規制」と「自由」のバランスが崩れているように私には見える. 規制ばかりが優先される「べからず社会」になってしまうことに対し,われわれはもっと警戒心をもったほうが良い. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 15, 2013 03:03:13 AM
コメント(0) | コメントを書く |
|