演 奏 会 の 旅

開催日：２０２３．９．１０（日）　１４：００開演
場所　：上田市交流文化芸術センター サントミューゼ大ホール（1,650名収容）

上田市消防団音楽隊の第18回定期演奏会～結成50周年記念演奏会～に行ってきました。

プログラム
開演前
​ザ・ブラスグルーヴ　ライブ​

第１部
１．マーチ「希望の光」
２．鷲が舞うところ
３．ホール・ニュー・ワールド
４．もののけ姫セレクション

第２部
５．進め消防士
６．上田市消防団音楽隊結成50周年記念委嘱作品「炎の翼」

第３部
７．エル・クンバンチェロ
８．結成50周年記念　音楽隊オリジナルメドレー
９．ジャパニーズ・グラフィティー４～弾厚作作品集～

アンコール
１０．この素晴らしき世界
１１．マツケンサンバ２

レポート
ザ・ブラスグルーヴ　ライブ
開場と同時にザ・ブラスグルーヴのライブがスタートし、入場しながら早速音楽を楽しむことができるという粋な計らいが用意されていました。曲名のアナウンスはありませんでしたが、曲名がピンときた追憶のテーマなど、どこかで耳したことのある楽曲がリレーされてゆき、ライブの約３０分がとても楽しいひとときと感じました。

マーチ「希望の光」
東日本大震災の復興支援曲として作られた楽曲ですが、私自身も2012年に演奏する機会があり、そのときの印象が「東日本大震災チャリティー作品として復興を強く願う元気なところと木漏れ日のような暖かいカンタービレのある作品で演奏していていろいろな力をもらえるような曲です。金管・木管・パーカッション、いずれのパートも活躍どころがある印象ですが、なんといってもバスドラムが最もおいしいパートではないかと感じた次第です。」ということで、11年の歳月を経て、その間の復興のことなどを振り返りつつ、懐かしく聴かせていただきました。

鷲が舞うところ
スクールバンドで人気の楽曲という印象がありますが、スティーブン・ライニキーといえば「セドナ」に代表されるように、音楽のパワースポット的なものを感じるものがありますが、弱奏部は木管群の音色を存分に聴かせ、強奏部は金管群の華やかな響きがとても印象的であり、さらに音楽に景色が見える…そんな特徴があるのかなと聴きながら感じた次第です。

ホール・ニュー・ワールド
ディズニー映画アラジンの中でもクライマックスシーンで使われている楽曲と言っても過言ではないかと感じますが、ホール・ニューワールドそのものは、アラジンメドレーやディズニープリンセスメドレーなどさまざまな楽曲で演奏され、その編曲の多さは折り紙付きという印象がある中で、1995年に発表されたニューサウンズインブラス'95の星出尚志氏のアレンジは特に人気があり、演奏回数も多い編曲版であると考えられ、私自身も何度も演奏していることもあって、とても感慨深く聴かせていただきました。

もののけ姫セレクション
もののけ姫も多くの編曲版が発表されていますが、この森田一浩氏のアレンジ版は、出版社の楽曲紹介によると、もともと交響組曲として作られた楽曲をコンクールで演奏できるよう尺を合わせ、起承転結のはっきりしたスタイルに再構築した楽曲版で、現場の事情に最大限に寄り添う配慮として３番クラリネットが楽器を習い始めた一年生でもすぐに合奏に加われるようレジスターキーを使わない音域で書かれているが、かといって欠けてもよいパートではないので少ない人数でも割愛せずに演奏してくださいといった作曲者の心遣いが暖かく感じる良アレンジであり、そんなこともあってとても幸せな気持ちで楽しませていただきました。

進め消防士
消防ラッパの放水始め、放水止めなどが取り入れられた楽曲で、今回そのラッパ手のパートを本年度のラッパ吹奏大会で優勝を果たした第７方面隊のラッパ手の皆さんが担当するという豪華バージョンでの演奏となりました。題名が示すようにとても力強い曲調で、聴いていてたくさんの元気をもらえた感がありました。

上田市消防団音楽隊結成50周年記念委嘱作品「炎の翼」
委嘱作品を依頼するにあたり、屋外での演奏を想定してティンパニなどの大型打楽器が無くても曲として成立するように、上田の風景を連想させるような曲調で…などを作曲家の三澤慶氏にリクエストしたとのことで、これからも「炎の翼」をコンサートホールだけでなく、街角のイベントでも演奏してゆこうという目的が感じられました。そして世界初演の「炎の翼」を聴いた感想としては、弱奏部にもしっかり時間が取られており、音量の小さな楽器の音色も際立つ部分が用意されていたり、上田の風景を連想させるシーンでは吹奏楽らしい木管群のアンサンブルの響きとそこに重なる金管群の厚みのあるハーモニーがとても素晴らしいと感じました。余談ながら、過去に世界初演の場に立ち会えた委嘱作品の中では屋代高校吹奏楽班の「アンセム」～吹奏楽のための（鈴木英史氏）、相模原市民吹奏楽団のYours!（建部知弘氏）などがありますが、こちらの２曲はいずれもコンサートのたびに演奏されており、聴き手とすれば「この曲を聴かないと帰れない！」という楽団のテーマ曲として君臨している印象があり、「炎の翼」もそのような形で演奏していただけたらいいなと感じ、来年も、さ来年も、街角イベントでも…聴かせていただけたらと感じた次第です。

エル・クンバンチェロ
第３部のスタートは、曲始まりの掛け声が特徴的なおなじみの楽曲となりました。演奏者・聴き手のテンションをいっきに上げるにはとても良い楽曲と言え、ロケットスタートと感じました。

結成50周年記念　音楽隊オリジナルメドレー
学園天国、SWEET MEMORIES、負けないで、世界に一つだけの花、恋するフォーチュンクッキー、新時代のメドレーとなりましたが、ステージ奥のプロジェクターで５０年の出来事を振り返ったり、パートごとのフォーチュンクッキーのダンスがとても印象的でした。

ジャパニーズ・グラフィティー４～弾厚作作品集～
つい先ごろ、芸能生活を引退された加山雄三氏が作曲家として使っているペンネーム弾厚作の作品集ですが、１曲目の「君といつまでも」は加山雄三の代表曲と思いますが、有名なセリフは消防音楽隊らしいアレンジが加えられ、２曲目の「お嫁においで」は難易度高めのデキシー風アレンジ。こちらはクラリネットのみマイク使用でトランペットとトロンボーンとの音量バランスをうまくとっているところが良かったです。３曲目のサライは、サムライと語彙が似ていることから、ある意味古来の日本文化をどこか継承したものなのかと感じるところがあります。さらにこの曲といえばペンライトを振る！という演出がよく見られるところなので、持っていたら良かったなと思いました。

この素晴らしき世界
アンコールでは大きなサプライズ演奏が登場しました。「炎の翼」を作曲した三澤慶氏はトランペット奏者であり、今回はそちらの腕前も！ということで、三澤氏をフィーチャーする形を取り、さらに曲中で音楽講師の小林通宏氏がテナーサクソフォーンで合いの手を務めるという演出も入り、これ以上ないとても贅沢なひとときとなりました。

マツケンサンバ２
アンコールの定番曲ではありますが、そこは大人数を動員できる消防団ならではの迫力がありました。フルートパートによる特別アレンジのソロも注目で、ただのマツケンではない！そういう演奏と感じました。

まとめ
今回の定期演奏会は、結成50周年記念ということで、今現在活動している消防音楽隊では最も歴史が長いということが紹介されました。50年といえば、昨年長野市民吹奏楽団が５０周年ということだったので、1970年代の前半に活動がスタートしたということで、その頃と今とでは、特にＩＴ関連の進歩が著しくスマホなどはその代名詞で世の中が大きく変わっていますが、その一方で変わらないものもある…ということで、これまたアナログ文化の最たる管楽器（楽器そのものは吹きやすくなったりと進歩しているが）はその１つなのかなと感じるところがありました。