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売場に学ぼう by 太田 伸之

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Nobuyuki Ota

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2019.08.22
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数年前、マツダがロードスターのリモデルを進めていた頃、広島本社工場を視察する機会を得ました。本社隣接のミュージアムでまず歴代車種を見学、次に開発担当から同社のものづくりの考え方や新型ロードスターのプロセスなど説明があり、工場見学もさせてもらいました。そのあとテストコースでの試乗会、でも私は免許を持っていないので乗れませんでした。

この視察時いろんな驚きがありました。

その1、ミュージアムの展示品。入口に飾ってあったのは最初に開発した自動車ではなく電機メーカー(確か東芝)の白熱電球、その名も「MAZDA」でした。ゾロアスター教の経典に由来するネーミングだそうです。マツダの英語表記が、"MATSUDA"ではなく"MAZDA"になっている理由はこの電球にあると初めて知りました。

その2、カーデザインの原点。デザイナーによると、世界の名車ランボルギーニのデザインは究極のミニマリズムだとか。前輪、ドライバーの頭部、後輪の3極を結ぶ線の内側にエンジンなどすべての部品が収まるのがカーデザインの理想。ドライバーシートが倒れていればドライバーの頭の位置は低くなり、3極を結ぶ曲線は緩やかになって流線型ボディになります。ドライバーの頭が高い位置にセットすれば曲線は勾配があってボックス型ラインになります。カーデザインをする立場から見て、ランボルギーニは3極を最短で結ぶ理想の流線型と伺いました。

その3、顧客マーケティングからの結論。消費者アンケートをしたところ、マツダを愛用するお客様は車に燃費とか買い替え時の下取り価格なんてことは期待していなかった。期待されているのはドライブしていて楽しい、つまりCMのセリフのように「FUN TO DRIVE」と判明。トヨタなど大メーカーには燃費や下取り条件を期待するそうです。お客様は意識しているものと勝手に想像していたことが、実は違っていた、お客様はドライブ以外余計なことはマツダに期待していなかった。このズレがわかったことでマツダはふっきれ、楽しいドライブの提供こそがマツダの使命と考えるようになった。

その4、デザインの工程。IT時代ですからカーデザインは最初からコンピュータグラフィックと思っていましたが、マツダのデザイン現場はプリミティブな仕事ぶりでした。最初に自動車には全く関係ない彫刻オブジェを粘土で、次に金属で成型します。このオブジェ、美術館に展示したら一般的彫刻作品と思うでしょう。そのオブジェでカーデザインの基本ラインを決めます。それをもとに、ここから実際の車体を粘土で作っていきます。電子レンジで粘土を温めてボディに貼り付け、粘土が冷え固まったらカンナのような道具で削ってミリ単位の調整が始まります。この作業を繰り返すうちに粘土の車体が完成、それを今度は鉄板に置き換える。いまも原始的な作業の繰り返しの中からデザインが決定している、意外でした。

  
   (ROADSTAR)

前職でセミナーで全国を回るとき、世界に日本の商品を売るならブランディングが最も重要と言い続けました。「性能良い割に安いんです」、「品質良い割に安いんです」、これまで日本企業の多くはこのセリフで世界市場を攻めてきました。しかしこれからは「カッコイイから高いんです」、「品質良いから高いんです」を主張しなければ世界では売れない、と。そのためにはブランディングが重要です。

燃費が非常に良い、下取り価格が高い、お値段リーズナブル、でも一目見てどの自動車メーカーの車なのかはわからない。そして1社でたくさんブランド(車種)があり、その違いははっきりしていない。つまりブランド戦略があるのかないのか、これがこれまでの日本です。

一方、ドイツの高級セダンやイタリアのプレミアムスポーツカーはどうでしょう。シリーズ名はいくつもありますが、メスセデスのブランド名はメルセデスベンツ1本、BMWもアウディも同じですよね。メルセデスはそれぞれ大衆車価格のものからラグジュアリー価格まで販売していますが、ブランド名は1つです。ベントレー、ジャガー、フェラーリ、ランボルギーニも同様にブランド名は1つ、そして車体の「顔」も1つ、会社のマークがなくてもどこの車か誰の目にもわかります。

日本の自動車メーカー、軽自動車メーカーはどこもブランド数はたくさんありますが、どれも車体に特徴的な「顔」がありません。軽自動車で言うなら、目の前を通過した車がスズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱のいずれかは車に付いている会社ロゴを見なければわかりません。ロゴを見なければどの会社の商品かわからない、言い換えればブランドになっていないんですね。

  
   (MAZDA3)

日本のパソコンも携帯電話もそうでした。パソコンなら会社ロゴを見なければ、携帯電話であればシリーズ番号の頭に付いているN、F、P、T、SHなどの記号を見ないと、それがNEC製なのか、富士通、パナソニック、東芝、シャープ製なのかはわかりません。一見して製作社名がわからないものは特徴のあるブランド商品とは呼べず、日本のパソコンや携帯はブランド品ではなかった。だから勝ち残れなかったとも言えます。

ブランド品でなければ、市場で競争が激化すると価格だけが論じられ、やがて値段の高いものは淘汰されます。しかし競合他社よりも値段が割高なAppleコンピュータやiPhoneがシェアを広げることができたのは、ブランド品としての地位を確立したから。「カッコイイ割には安い」路線に行かなかった、これが成功要因ではないでしょうか。

久しぶりにマツダ本社からカタログが届きました。カタログを見ながら、いまマツダはこれまでの国内自動車メーカーとは違う路線、ブランディングの道を突き進んでいると思いました。最近テレビCMでMAZDA 2やMAZDA 3を見かけますが、いよいよマツダは「MAZDAの顔」を明確にしようとしているんだなと感じます。従来のように車種ごとにバラバラな名称、バラバラな車体の顔ではなく、ブランド名はMAZDA1本、車体の顔も1つにして、世界で堂々と戦って欲しいですね。






Last updated  2019.08.22 00:47:43

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