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売場に学ぼう by Nobuyuki Ota

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Nobuyuki Ota

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2018.10.15
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明日は今年7月からお手伝いしている企業のエリアマネージャー対象の研修で3時間お話することになっています。来月はこれとは別に若手社員に対しての研修の予定。おそらくこれから社員の階級、社歴に応じて本格的な人材育成が始まると思います。

また、今週水曜日からは人材育成をお手伝いしてきた企業の若手社員を連れてアメリカ西海岸北部の視察研修に出かけます。毎年この海外研修はニューヨーク、ときには私が引率、ときには視察ポイントを事前レクチャーしてきました。が、今年は初めて西海岸。新興企業が集積し、新しい富裕層が生まれ、新しい生活価値観が芽生え、そこに全米から新しいビジネスモデルを引っさげてニュービジネスが入ってくる。今後の流通業を体感できる変化のある地域として、いまはニューヨークよりも西海岸北部、初めての研修地なので今回は私が引率します。

企業の社長を務めた10年間、毎週社員を集めてMDスクールを開講、仕事の仕方、マーケットの見方やマーチャンダイジングの基本を自ら教えてきました。業務革新するにはまずそれを推進してくれる人材を育てなければならない、この考えは百貨店でMDゼミを始めた1995年から一貫して変わりありません。企業は何と言ってもヒト・モノ・カネの順番、人材がいなければ企業の成長はありません。ヒトが育てば価値ある商品を生むこともでき、人材と商品が揃っていればお金は自ずとついてきます。

人材育成で最も重要なことは、教える側が大きなビジョンを示すこと。この組織、この会社をどういう方向にもって行きたいのか、どう変えて行きたいのかを上層部はまず提示し、それを実現するために社員みんなにどうして欲しいのか、何を身につけて欲しいのか、どんな人材に育って欲しいのか、受講する側が理解しないことには効果はありません。

これまで何度も申し上げてきたことですが、日本のファッション流通業界は「先輩の背中を見て学べ」あるいは「先輩からノウハウを盗め」式の育て方がほとんど、こんなヤマカンOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)はベテラン社員の個人プレーの継承になってしまう危険性があります。ヤマカンOJTではなく、ちゃんとした教育プログラムを整え、人事担当が受講者を選び、時間をかけて会社の基本方針に沿ったトレーニングをすべきです。

百貨店に復帰した2011年、百貨店の社員教育とは別に、お取引先の店長さんを対象にMDスクールをやりました。いまは消化仕入の世の中、顧客管理も在庫管理も売上管理もお取引先のブランドショップの販売スタッフに業務を委ねています。いくら百貨店社員に商品分類や定数定量管理、販売計画の立案を指導しても、お取引先スタッフがその気になってくれなければ業務は全く改善しません。お取引先のスタッフは配属された小売店ではなく、当然ながら本社の方を見て仕事しますから、いくら百貨店側が定数定量の是正を求めたってなかなか耳を傾けてはくれません。

そこで、お取引先の店長さんたちにマーチャンダイジングの基本を教え、まず理解者を増やそうとMDスクール開講を決めました。受講してくれる店長さんたちが理解してくれたら、百貨店の社員が彼らにお願いする改善策を積極的に進めてくれるかもしれない、そんな思いで希望者を募りスタートしました。




まずびっくりしたのが、私が10年間指導した会社の店長さん以外はほとんどマーチャンダイジングの基本を知らなかったことです。顧客管理のやり方はずさん、だから顧客分類なんてやったことがなかった人がほとんど。定数定量が売場を運営する上でいかに重要なのかも教わっていない。まして緻密な販売計画は立てたことがありませんでした。宿題を与えて発表してもらうと、満足なレポートは私が指導してきた(私が退任してからは専属の指導員がずっと教育を継承)会社の店長さんたちだけだったのです。

でも、MDスクールで教えたことを率先して実践してみて、成果をあげた多くの店長さんたち(化粧品ブランド、インポートブランド、大手アパレル、国内デザイナーアパレル)から非常に喜ばれました。日本ブランドの顔馴染みの店長さんから「あそこだけ売場内の雰囲気が違っていた理由がわかりました」(あそことは私が指導した会社のショップ)と言われましたが、同業他社の現場スタッフは薄々気づいていてくれたんですね。

かつて流行歌にもなったブランドの販売スタッフが「ハウスマヌカン」と呼ばれた頃、販売スタッフは商品を身につけてモデルのように「試着販売」、個人プレーが尊重され、ベテラン店長の売上が突出しているのが当然、若手スタッフや新人はいつもストックや集合レジに走る役でした。お得意様を多数抱える店長がたくさん売ることに本社サイドは期待したものです。が、これは古いやり方、個人プレーでなくいまはチームとして販売をすべきであり、店長が突出して売上をあげるのは決して良いことではありません。店長はストアマネージャー、つまりマネジメントをするのが本来の役目であり、自らがたくさん売ることではない、とこれまで教えてきました。

そのためには、チームが共有できるロジックを教え、緻密な販売計画は店長が勝手に立案するものではなく、その売場のスタッフ全員が協議して作成すべき、仕事の仕方を根本的に変えてもらわないといけません。顧客分類も定数定量管理も販売計画も、店長さんを中心にスタッフ全員で力を合わせて当たるべき。品揃えも本社営業サイドが勝手に振り分けるのではなく、店頭の意図が反映されるべきでしょう。段ボールを開けて次に何を売るのかがわかる受け身の仕事と、自分たちの意図が反映される能動的な仕事とではやる気が全然違いますし、責任感も違います。受け身の仕事なら自動販売機でもできます。販売現場がプロとしての自覚を持ち、能動的に仕事をしてもらうのが一番効果的、だからこそ人材育成プログラムを整備しない流通業に明日はないと思います。

今回研修のお手伝いをする前に、私は研修担当チームに訊ねました。今後会社側がどういう方針で社員を育てるつもりなのか、それによって私の話の内容は違ってきます。現状維持方針ならばそれに沿って話をしましょう、でも改革する気が会社側にあるのであれば違う話をします。経営陣とよく話し合って、まず今後の方針を決めてください、とお願いしました。人材育成をお手伝いする私が経営者でもないのに勝手に自分の考えで講義してはいけません。会社の方針に沿って講義をしないと受講者は混乱するだけですから。

いよいよ明日から研修が始まります。果たして社員の皆さんがどんな反応をするのか。まずはモラルアップです。






Last updated  2018.10.15 16:56:47

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