|
カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 じゃじゃ馬グルーミン★UP! 』 ゆうきまさみ (1994~2000年) 電子書籍無料版およびレンタルにて、全26巻読了。 エリート高校生活に行き詰まり、高校を中退して、北海道の競走馬生産牧場で働く少年を描いた作品。 なんとなく主人公の背景が 『銀の匙』 (荒川弘) とカブってるようだが、あそこまで主人公中心の青くさい成長物語というわけでもない。 ざっくり言うと、 『少年サンデー』 らしいハーレム・ラブコメと、競走馬生産や育成の内情を見せる業界漫画との同時進行型という風情で、悪く言えば散漫だが、競馬にさほど興味の無い層にも入りやすく飽きにくい内容になっている。 主人公が 10代後半~20歳そこそこにしては 「オッサンくさい」 印象があるが、作風や絵柄だけの問題でなく、連載当時は、実際、見た目や態度は最近の同年代よりも皆、老けてたような気がする (中身は余り変わらないかもしれないが) 。 細かい日常描写や、競馬のレース描写などが 逐一細かすぎて、途中、ちょっとダレるというか、少年漫画に多い 「男女がツンツンデレデレを延々繰り返し、最後の最後にちょっといい雰囲気になって終了~」 みたいなヤツなのかな、と見切りをつけ始めた頃 (16巻あたり) に、案外、急展開を見せる。 とは言え、恋愛にしても牧場経営問題にしても、やたらと現実的な描写が多く、劇的に「ロマンチック」とか、動物との、これ見よがしな「涙と感動のドラマ」 みたいなものは余り期待しない方がよい。 だが、展開が現実的なだけにキャラクターに実在感があり、終盤に至るまで穏やかな日常描写の中、僅かなクライマックスのうちに突如として迎えるラストは却って印象深く、読後も妙に寂しさを引きずってしまう作品だ。 毎回のサブタイトルが、流行歌や娯楽作品タイトルをもじっているようなのだが、途中、萩尾望都の漫画作品をパロッたタイトルが連続して出てきて、ゆうき氏が少女漫画もよく読みこなしていることが窺える。 恋愛をしっかり描きながらも甘くなりすぎないところ、キャラクターが全体的に、ちょっと冷めているところは、萩尾望都の作風にも少し似ているかもしれない。 尚、コミックスを全巻「大人買い」、または借りて読もうという人は、後半の巻で、若干ネタバレしてる表紙絵があるので気をつけた方が良い。 <関連日記> 2013.7.31. 深いテーマを直球で ・・・ 『 銀の匙 Silver Spoon 』 アニメ版 2015.8.11. 「不老不死」 の少年と 大きなヒロインとの絶妙な取り合わせ ・・・ ゆうきまさみ 『 白暮のクロニクル 』 文庫版は全14巻
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[漫画・アニメ] カテゴリの最新記事
お疲れ様です。
つぐみ@夜空さんは丁寧に漫画を読んでおられて、丁寧に自分のコメントを記されていますね。頭が下がります。 つぐみ@夜空さんは「ドラマ性に欠けるからこそ物語世界から抜けられなくなる」とコメントされてますが、まさにその通りです。 思うに、『じゃじゃ馬グルーミン★UP! 』は、月9のドラマではないのです。テレ東の深夜ドラマの内容で大河ドラマにした名著です。要はマニアックなんです。見方を手に入れればドラマ性を手に入れることができます。 ゆうきまさみの憎たらしさは、自分の作品についてこない人は読まなくてよい、というスタンスです。彼のギャグがその象徴です。 さて。見方に2つポイントがあります。 一つ、男の子の成長日記として読む。つまり、男の子がライフイベントごとに悩み、葛藤し、乗り越えていくストーリーとして読むということです。 次に、久世家と渡会家の「大河ドラマ」として読むということです。久世家の歴史、渡会家の歴史が複数の伏線を持っていて、からんでいます。これは、大河ドラマや『渡る世間は鬼ばかり』のようにです。 ただ、、、この点が結局のところ、女性が踏み込めない少年漫画誌の典型、スポーツ漫画やバトル漫画と同じストーリー性であり、また大河ドラマのようなある一定層のファンにのみ受けるストーリー性であることを示します。さらには、競馬というマニアックさもそれに輪にかけます。その限界性を開き直っているゆうきが作戦勝ちなのだろうと思います。 少女漫画の視点は持ち合わせてなかったので、その点はなるほどと読ませていただきました。あと、つぐみ@夜空さんは『鉄腕バーディー』まで読んでますから偉いですね。 私は、あの漫画はのめり込むことができまさんでした。それこそ、ゆうきの限定性に追い出されました。今ならどうだろうと思います。 あしま (2019年09月11日 23時46分33秒)
きゅうあしまさんへ
コメントありがとうございました。 少年漫画の読み方は、一応、覚悟してるつもりなのですが、どうしても、十数巻以上にもなると、読後に徒労感だけは味わいたくなくて、必要以上に警戒して読んでしまうのですよね(笑)。 ハッピーエンドでないとイヤ、などと子供のようなこと言うつもりはないですし、全5巻くらいまでならどんな内容でも、まあ許せるのですが、長い時間かけて読んで結末がはっきりしなかったり、逆に、些末な伏線回収にこだわり過ぎて無駄に長くなりすぎたり、、、という作品が最近、多いような気がして…。 何作か読んだ結論として、ゆうきまさみさんは、絵やギャグセンスも好きなので、今後もフォローしていきたいとは思っています。 ただ、鉄腕バーディーについては、アニメの演出・作画が良かったので、それに比べると、原作は、内容的にも結末的にも、ちょっと肩透かしでした。 (2019年09月18日 23時39分18秒) |