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2017年03月04日
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カテゴリ:漫画・アニメ

★『 ベルセルク 』 三浦建太郎 (1989年~)



電子書籍無料版およびレンタルにて、既刊38巻読了。


人間と妖魔の類が混在する中世ヨーロッパ的な異世界で、 「黒い剣士」 と呼ばれる男 (ガッツ) が諸々の敵に立ち向かう姿を描くダークファンタジー。


筋肉モリモリの主人公の雰囲気から判断して 「(男の成長やら友情やらの) バトル少年漫画」 を予想して読むと、残虐シーンの多さに気分が悪くなる人もいるかもしれない (少年漫画要素が無いわけではないが)。


少なくとも、私は、昨年のアニメ放送に合わせて電子書籍で実施された 14巻無料 (~黄金時代編) という大盤振る舞いが無ければ読むことはなかったと思う。 また、試し読みが最初の数巻だけだったとしたら、 「何やら個人的な復讐の為にバトルする男」 の話として見切りをつけ、やはり続きを読もうとは思わなかったかもしれない。

3巻あたりで主人公の過去が描かれ始めるあたりから、徐々に、かなりストーリー性のある作品だと分かってくる。


「諸々の敵」 と一言で言っても、いわゆる悪徳領主とか賊や殺人鬼のような分かりやすい悪ばかりではない。 親子の確執、仲間の裏切り、宗教的対立、自らの心の弱さとの葛藤 …等々、主人公が対峙すべきものは多岐に渡り、一つ一つのエピソードがやたらと重い。


絵柄の方も最初の方は拙さもあって、それほど怖くもないのだが、巻を追って画力がアップするに従い、写実や細密さにこだわる作画になってくると、妖魔の類など、造形だけ見ても気持ちが悪い。

男性戦士がバトルで切り刻まれ流血する姿は少年漫画やアニメで見慣れているせいか大して感じないのだが、非力な庶民や女子供が暴行されたり虐殺されたりする様子は、ちょっとトラウマになりそうだった。


私は子供の頃から少年向けアニメや特撮ものを観て育ったので、普通の女子より少年漫画のバトルや暴力シーンには耐性のある方だと思っていたが、最近になって、意外に そうでもないのかもしれないと自覚した。

子供向けアニメの多くは男同士のケンカか、勧善懲悪的な暴力に限られていたが、この作品で描かれる暴力は、理不尽かつ生々しいものが かなり含まれる。 勿論、主人公の不死身さや半獣のような魔物などは非現実の極致なのだが、現実世界でも戦乱の中では、このような理不尽な暴力で溢れるのだろうと思うと、単なるホラーとして面白がるレベルには留まらない。


Wikipediaによれば、作者は少年期から、かなり少女漫画を読んでいたらしいが、確かに、バトル描写のクドさを別にすると、テーマや心理描写の繊細さは少女漫画に通ずるものがある。 それも、萩尾望都竹宮惠子、三原順ら、人間の本性や存在理由などを正面から問うた作品に影響されているように感じる。


少女漫画の影響は、女性キャラを 「添え物」 や 「使い捨て」 にしない姿勢からも感じられる。

女性キャラはそれぞれ重要な役割を果たしているが、必要以上に 「無敵」 だったり 「露出過多」 だったりはしない。 勿論、どぎついエロ描写も多いのだが、 「小柄で巨乳の女戦士が、下着同然のコスチュームでロングヘアーをなびかせ、屈強な男を倒しまくる」 ような非現実性や、都合のよい時だけ現れる 「癒し役」 扱いは、極力 排している。


ただ、多くの読者が指摘するように、執筆ペースの遅さは、やはり捨て置けない問題。

漫画好きの友人に 「30巻くらいまでは単行本を買ってたけど 疲れてやめた」 という人がいるが、休載が多く刊行ペースが遅いだけでなく、20巻を超えたあたりから話の進みも遅くなり、作画ばかりが重厚になって、正直、読むこと自体に疲労感が増す。


先日放送の 『浦沢直樹の漫勉』 (第4シーズン) の清水玲子さんの回で、 「上手い漫画家ほど線が過多になり、却って読みづらくなる」 というような話をしていたが、まさに作画地獄 (もしくは、作画への逃避) に陥ってしまった典型例のようだ。

バトルシーンなども、効果線などの描きこみが多すぎて、却って、何が起こっているのかよく分からず、つい読み飛ばしてしまう (私がバトルの詳細に余り興味がないということもあるが)。


この半年間でまとめて読んだ私でも後半ジリジリしたので、連載開始当初 (1989年) から追いかけているファンの苛立ちは察してあまりある。




<関連日記>
2012.3.26. 竹宮惠子 『 イズァローン伝説 』…… もう漫画は描かないのだろうか

2012.3.29. 萩尾望都 『 マンガのあなた・SFのわたし 』…… 天才は一日にしてならず

2012.6.4. 清水玲子 『 秘密-トップ・シークレット‐ 』…… 「被害者の無念」 に寄り添う サスペンス

2012.8.17. 横山光輝  『 三国志 』…… 勧善懲悪の戦国物語に辟易

2013.2.28. 竹宮惠子 『 天馬の血族 』…… 大作家 最後の大長編 (?)

2014.8.31. 幸村誠 『 ヴィンランド・サガ 』…… 「単純無垢」 が招く 戦争の残酷さ

2014.9.5. 萩尾望都 『 王妃マルゴ 』…… 着飾った少女の視点で描く戦争

2014.9.7. 細川智栄子 『 王家の紋章 』…… 「完結しないこと」 にイラつく ファンの皆様の心情をお察しします

2015.9.2. 『 浦沢直樹の漫勉 』…… プロ漫画家 “創作の秘密” 公開


2015.10.20. 伊藤悠 『 シュトヘル 』…… 殺戮の時代に 「文字」 が持つ 真の役割と救い


2016.10.21. 岩明均 『 ヒストリエ 』…… 遅筆に付き合うにも限界が

2016.12.27. 清水玲子 『 秘密 season0 』 ・・・ サスペンスだけでない、一粒で二度おいしい作品

2017.1.27. 古屋兎丸 『 インノサン少年十字軍 』 ・・・ 「無垢」 が生み出す 悲劇と教訓



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最終更新日  2017年03月04日 23時16分28秒
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