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カテゴリ:平凡な部品でつくる非凡なアンプ
ところで、3極管PPがなぜ優れているかについてもう少し具体的に述べておこう。トランジスター(TR)、多極管(特にビーム管)、3極管と比べると、この順番に電源エネルギーの利用効率は悪くなっていく。ならば、TR式が一番良さそうなものだが、効率が良ければそれで性能が良いというわけではないのだ。
効率というのは、特性曲線の上で電源供給電圧と負荷抵抗を決めると、大体わかるものだ。図Aに示すTR式の場合、入力を増やせば、どんどん電流が流れるため、基本的に出力素子は歪まない。負荷抵抗を小さくすれば小さくするほど出力は増加する。どこかで頭打ちになるのは電源が歪むからなのだ。図Bに示す多極管の場合、ちょうど良い負荷抵抗を選ぶと出力が最大となる。それより負荷抵抗を小さくしても大きくしても出力は急速に小さくなってしまう。負荷が小さくなるときには出力素子が歪むが、負荷が大きくなると電圧0Vでカットオフして急激に歪む。それに比べると、図Cに示す3極管の場合は、もともと効率が悪いせいもあって負荷抵抗を変化させても出力の変化は小さい。そして常に出力素子が歪むため、出力素子の特徴が音に現れるわけだ。 ![]() アンプのテストをするときには8Ωの負荷抵抗を接続するが、現実のスピーカーは抵抗とは違う。スピーカーのインピーダンスは基準負荷よりも大きくなる傾向があるため、負荷抵抗が大きくなっても特性が悪化しない出力素子が望ましい。それは3極管である。また、出力素子が美しい歪みを発生するのも3極管だけである。多極管は急激に歪み、TRは電源が歪む。どちらも大量の負帰還をかけることが前提の出力素子なのだ。こう考えれば、効率の悪い3極出力管が実は最もスピーカーのドライブに適した出力素子であることがわかるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.02.04 00:38:50
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