|
カテゴリ:平凡な部品でつくる非凡なアンプ
さて、次に時定数とNFBの設計について説明しよう。まずは低域である。低域の時定数はカソードフォロワー段の前に1つ(T1)と、出力トランス(T2)の計2つである。まず、出力トランスによる時定数を評価してみよう。出力トランスXE-60-5の1次インダクタンスを測定したところ、最小値22H-最大値380H(カタログ値)となった。最大値については、実測すると波形が大きく歪んでくるので、カタログ値を使うことにした。出力管の内部抵抗が1.2kΩ、負荷抵抗が2.6kΩとすれば実質820Ω程度になる。8Ωの基準負荷に対して、T2は22-380H÷820Ω→0.34-5.9Hzとなる。
最初、これを第1ポールとして、カソードフォロワー前段の時定数はそれより大きく、0.47uF×2.2MΩ→0.15Hz程度に選ぶ予定であった。しかし、あまり帯域を広げても、出力トランスが歪んでしまうのだ。周波数に比例して許容入力電圧は下がっていくため、1W出力での周波数特性すらまともに測れなくなってしまう。これでは気持ちが悪い。結局、総合的な周波数特性と出力トランスの歪みを避ける観点から、前段の時定数T1を0.22uF×220kΩ→3.3Hzに選ぶことにした。出力トランスの時定数とかぶっているようだが、NFBが8.6/8.7dB程度と少ないので問題はない。 出力トランスの歪みを避けるために、アンプの入力にサブソニックフィルター(0.033uF×1MΩ→4.8Hz程度)を入れることも試してみたが、実用上は問題ないレベルなので取り除くことにした。カソードフォロワー前段(T1)と出力トランスの時定数(T2)と、2段のフィルターが入っているため、超低域での入力余裕度は十分である。またD.F.値も10Hzまで4.7/4.6とフラットであった。前段の時定数の影響で超低域で一旦D.F.値が少し悪化するとしても、出力トランスの時定数のためにDCに近づくにつれD.F.値は向上すると思われる。ちなみに出力トランス2次側の直流抵抗は0.4Ωくらいである。DCアンプがよくもてはやされるが、直流まで再生する必要があるわけではなく、直流まで負荷に制動がかかり、どんな入力を入れても極端な歪みを生じなければよいのだ。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.07.08 01:34:50
コメント(0) | コメントを書く
[平凡な部品でつくる非凡なアンプ] カテゴリの最新記事
|