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1942年6月14日 アメリカ合衆国ハワイ準州オワフ島
パールハーバー アメリカ海軍太平洋艦隊司令部 ![]() 「失礼します」 ![]() 「入りたまえ」 ![]() 「召喚に従い参上しました」 ![]() 「Zero大ヒットおめでとう! ・・・さて、ハルゼーの調子はどうだったかね?」 ![]() 「相変わらず口は達者です」 ![]() 「結構なことだ」 ![]() 「ただ、やはり前線復帰は難しそうですね」 ![]() 「・・・そうか」 この時、アメリカ海軍太平洋艦隊は2つの空母機動部隊を運用していた。1つはフランク・J・フレッチャー少将が指揮する第17任務部隊、もう1つがウィリアム・F・ハルゼー中将の指揮する第16任務部隊である。ハルゼーは、巡洋艦部隊の指揮を執っていたフレッチャーとは異なり、1930年代半ばから一貫して空母の運用に携わって来たアメリカ海軍の誇る空母戦のエキスパートだった。だが、長く続いた前線任務が祟り皮膚炎を発症、前線からパールハーバーに連れ戻されてしまった。 第16、17両任務部隊は行動をともにすることが多く、実質的には全ての空母を指揮していたと言ってもよかったハルゼーを欠いたことで、太平洋艦隊は空母戦への対応力を一時的にせよ失っていた。開戦直後に発生したマレー沖海戦にて、日本海軍の陸攻隊がイギリス海軍の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」及び巡洋戦艦「レパルス」を撃沈。史上初めて、作戦行動中の戦艦が航空攻撃のみによって沈められたこの「事件」は、当時の常識を覆した。 ![]() 「非常に残念だが、ジャップへの攻勢を緩めることはできん」 ![]() 「同感です」 ![]() 「そこでだ、レイ。ハルゼーの申し出、考えてもらえたかね?」 ![]() 「・・・」 ハルゼーはパールハーバーの病院のベッドで過ごすことの対価として、スプルーアンスを後任に据えることを要求していた。 ![]() 「しかし、私は空母部隊の指揮を執ったことがありません」 ![]() 「ハルゼーがいない今ほとんどの人間がそうだよ」 ![]() 「率直に言わせて頂ければ、ハルゼー中将と仲がよいというだけで推薦されたとしか思えないのですが・・・」 ![]() 「レイ」 親しみと怒りを込めた声色で、ニミッツは言った。 ![]() 「君は自分の能力を過小評価している。君の周囲の声を聞けば、ハルゼーの君への評価が間違っているとは思えない。それに、今は国を挙げての戦争中だ。各々が与えられた役割を果たすべき時なのだ。君にはそれを成し遂げるだけの能力がある。それを発揮しないでいるのは、アメリカ合衆国にとって大きな損失だよ」 ![]() 「・・・」 ![]() 「・・・まぁ、今日は君に拒否権を与えるつもりはなかったのだがね」 ![]() 「と、言いますと?」 ![]() 「日本海軍に動きがあった」 ![]() 「!」 ![]() 「ここ2、3日、日本本土での通信量が上がった。情報部はやつらが攻勢を準備していると判断した」 ![]() 「無論、そうでしょうな」 ![]() 「私も情報部の判断を支持している。トラックを孤立させられ戦線が本土に近づいた今、やつらが反攻に出ないわけがない。・・・もう分かっただろう? 君には、ジャップの艦隊を迎撃してもらう」 ![]() 「それは・・・」 ![]() 「引き受けてもらうぞ。できれば今すぐにでも飛んで行ってもらいたいぐらいだ」 ![]() 「・・・分かりました。お引き受け致します」 ![]() 「頼む。やつらが我々と敵対したことを後悔するぐらい、徹底的に叩いてくれ」 ![]() 「やってみせますよ」 こうして、歯車は回り始めた。 ニミッツの命を受けたスプルーアンスは、コンソリデーティッドPBYカタリナ飛行艇で15日にパールハーバーを経ち、ミッドウェー、ウェークを経由してグアムに入り、同地で補給中の第16任務部隊の旗艦「エンタープライズ」に着任した。彼の指揮下に入ったのは開戦直前に就役したばかりの空母4隻、重巡2隻、駆逐艦6隻であり、空母6隻を運用するフレッチャー少将の第17任務部隊と合わせ、太平洋艦隊の全ての空母がこの2つの部隊で運用されていた。 着任したスプルーアンスは、指揮を執ったことがないことだけを知っていた幕僚たちの前で「私は諸君らの能力について一切の不安の念も持っていないということを、まずはっきりさせておく。もし一人でもそうでない人物がいたら、あのハルゼーが君たちをこのままにしておくはずがないからだ」と男前な発言をして信頼を勝ち得た。 補給を終えた第16任務部隊は、日本海軍の来襲に備えてマリアナ諸島周辺で演習を繰り返した。 続く。 HoI2集 アメリカAAR お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.10.31 11:49:51
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