風化の中で(灯りを消せ!)
風化の中で(灯りを消せ!) 滅びていったのは猫も同じだった。 僕は自分自身で巻き起こした風の中で滅びていった。目覚めてしまった午前四時にオートバイのセルモータをまわし四〇〇キロを休みなしに走ったり、予告なしに仕事をかえたりした。 小さな悩みにまとわりつかれるうちに、僕の中身が失われ奇異な型だけが残った。 かつて、僕の周りでは色々な事が起きた。何かが墜落したり、銀行が襲撃されたり、盲目になった知り合いが宗教家になって訪ねて来た。 昨夜、デストロイヤーとの戦闘中にゴジラがメルトダウンし、地球防衛軍が冷却爆弾を投下した。その後の記憶が抜け落ちている。日本沈没には竹内均教授。眠れずドライブを三時間。意識と眠りのあいだの壁をすりぬけられない。小松空港のあたりで道に迷う。狂った方位の感覚は十代のころとおなじ。高校三年生の冬、壊れた僕は家に帰ろうと歩き出した。方位がわからなくなり下宿にもどる。満天の星。京都でも夜中に自転車でどんどん迷った。軌道はまったく修正されていない。理ゐ二君も迷ってる。星空を見てるかなあ。灯りを消すことで見えてくるものもあるよ。