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2011.07.21
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テーマ:お勧めの本(7394)
カテゴリ:

【送料無料】国境の南、太陽の西

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 村上春樹の書くラブストーリーの中では、案外これが一番完成度高いかも、と思う。
小学生の頃に始まり、37歳の現在に至るまでの物語で、時間の幅が広い。
喪失感がテーマになっているのは、ノルウェイの森などと同じだけど、
運命の力のようなもので離れた相手と、また別のところで偶然再会したりとか、
普通に描くと陳腐になりがちな展開が、不自然さなく描かれているのが村上春樹ならでは。

文体はシンプルなので、すらすらと読める。

いろいろな思いを引きずりながら、本来選びたかったものとは違う選択をしたりもしながら、
ただ流されているだけではないけれども、予定していたのとは違うところに流れていく運命。
誰しもが意識せざるを得ない普遍的なテーマを、この小説で村上春樹は取り上げている。
豊橋で表情というものをなくして暮らしていた初めての恋人、36歳で死んだその従姉妹、
ノルウェイの森でもそうだったけど、ストーリーから外れていくヒロインは、
次々と悲劇的に死ぬか、普通の人生を歩めなくなる。
そしてメインのヒロインにもまた、幸せな人生は用意されていない。

ラストシーンがどうなるかは書かないけれども、ハッピーエンドというわけではない。
もっとも、一番最後のシーンは、読者の想像力次第で如何様にも解釈できる。
これもまた、村上春樹のお得意のパターンか?

他の読者が、南米風な名前のついたネット通販を業態とする書店に投稿されてるレビューを
読むと、「少年が大人になる物語」と言ったような感想も見られる。

個人的には、これを成長物語として受け止める必要はなくって、ただ世界はこのように展開していくこともあるのだと、そう受け止めたほうがしっくりくる。

ヒステリア・シベリアーナについてネットでも話題になってるけど、どうもこれはつくられた仮想の精神病ではないかと思うのだが。どうなんだろうね~。


 高校生のときに、村上春樹を読んでいた頃があるのだけれども、あんまり頭に入らず、流しただけで終わってしまった。でも今になってこの本を読んでみると、それも当然だなと思えた。やっぱり、ある程度は大人にならないとわからない話が多いのだろう。もちろん、だからといって今中学生や高校生の人に、春樹を読むなとは言わない。むしろ読むといいよと勧めると思うのだけれどもね。





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Last updated  2011.07.21 09:30:47
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