“お陰”の力
高校の卒業式のとき。1年生の時担任だった〇〇先生に、挨拶に行った。「先生、やっと卒業やわ。うるさい生徒がおらんなるから良かったな~。」「峰絵、あんた1年の1学期が終わるころ、学校辞めるゆうてたのに ようがんばったな・・。先生、あの時あんたは辞めさしたらあかんと 思って、必死で止めてよかったわ。」「ほんまに。あん時辞めんで良かったと思う。感謝してるよ。」「あんた高野山の研修旅行の時、1学期が終わったら学校を辞めると 言い出すけど、何があっても卒業させてやってくれって 阿舎利が私らにゆうてたんやで・・。」「エッ??マジで??」「そうや。あんた阿舎利が私らにそのことをゆうてなかったら とっくに学校から追い出してるわ。学校には出てけえへんし 来ても授業中は寝てるし、起こしたら暴れるし・・・。」「エッ??そんなんしたっけ???」「私ら教師には、めちゃくちゃなことゆうとった。 あんたの給料私が働いて払ってるんやから、偉そうに文句ゆわれる 筋合いないわ~。とかゆうたこともあったやろ。」「国語の〇〇先生はな、その言葉を聞いてどれだけショックを受けたか。 教師生活30年やってきて、こんな生徒は今までおらんゆうてな・・ 先生職員室で、泣いてはったんやで~~。」「アホちゃうか~~。そんなんで泣くな~ゆう話やん。 それにほんまのことやんか~。 うち自分で働いて学費払ってきたんやから。」「そりゃそうやけどな~。そんな暴言吐いて、好き勝手に高校生活 できたのも、阿舎利が卒業だけはさせてやってくれってゆうてたから やで~~。阿舎利に感謝せなあかんで~~。」「あのジイさん、そんなにうちのこと思うてくれてはったんや。」「そうや、あんたの高校生活が成り立ったのは、阿舎利のお陰や。 あんたはいずれ仏様の仕事をすることになる。だから大学には 行かれへん。学力はこの子には必要ないからや。せめて高校だけは 出してやらんと社会に出てこの子が自信もって生きて行かれへん ようになるって、ゆうてはったんやで~。」「そうか~。ジイさんに感謝せなあかんな~。」私は、この話を聞いて泣いてしまった。親にも邪魔者扱いされてきたこんな私でも、陰で支えてくれてた人がいた・・・・。とても嬉しかった。それと同時に、自分がとても愚かな人間だということに気づいた。いくらがんばって働いて、学費を払ったとはいえ結局は人さまの『お陰』があったからこそそれが成り立っていたのである。悔しくて、たまらない涙が込み上げてきた。(自分だけががんばってきたと思っていた私は、 なんてバカだったんだろう・・。)どんなにがんばったとしても、結局は人様の力があって物事が成り立っていると、初めて学んだ貴重な卒業式だった。