数字を用いて客観的に証明する
「SiCKO」◎数字を用いて客観的に証明するアメリカ型の民間医療保険制度の破綻を描く。基本的人権に関わること(=医療保険)を民間に任せて競争原理のもとで行うと弱者が生まれて社会破綻が起こる。言いたいことを説明するために様々な具体例が出てくる。言いたいことは正論で共感もできるのだが、具体例や数字の提示の仕方が、作り手側に都合良過ぎる。例えば、この映画が言うには、フランスでは社会主義的な考え方が根底にあって社会保障制度が充実している。実例として、代理家政婦制度があり有給制度が充実している。しかも、税金も高くない。実例として、ある夫婦の家はとても金持ちだ。これは、実例の提示の仕方に明らかな問題がある。税金が高くないことを説明するのに、映画に都合の良い家庭だけを提示して”こんなに豊かな暮らしをしているから税金は高くない”と印象付けている。税金が高くないことを説明するなら、一般平均家庭では税金がいくらなのかきちんと数字を用いて説明するべきだ。あるひとつの家庭だけを提示して、”税金は高くない”と印象付けるべきではない。さらには”フランスの良くないところ”という反対意見もきちんと紹介するべきだ。