MirageKnightCase10話ミラージュナイトケース
MKC10話ミラージュナイトケース――京都市内輸送用のヘリコプターから三つのコンテナが下ろされた。一つにはオリジナルオーグルのコピー。一つにはコボルトのケリー。一つにはアラクネのアグリアが入れられている。強力な結界装置が付けられたシリンダーにオーグル。結界装置を組み込まれた手錠を付けられたケリー、アグリア。最初にオーグルのシリンダーが護送車に入れられる。「……」「……」突如ケリーとアグリアの手錠が爆発する。「いてええええいてえええよおおおおおおっ!!」「ひひはははははー!我慢しな!!あたしの爆発粘着糸のおかげなんだからなー!!手錠をつけられる寸前に仕込んでおいて正解だったわ」「逃げたぞ!!射殺しろ!!」退魔消音アサルトライフルを構える二人の警備員。「魔力が戻ればこんな奴ら相手じゃないんだよー!!」アグリアは黒い粘着糸を警備員のアサルトライフルに付け、爆発させる。続けて黒い粘着糸を放ち警備員を爆破、そしてヘリコプターに大量の粘液を付け爆破。「いくよケリー!ここがどんな街だか知らないけどとにかく逃げるんだ!!」「おい……アグリア、もしマスターが追ってきたら……」「ホフより強い奴と組めばいいんだよ!ビビるんじゃないよ!!」「チックショー……やるしかねー」アグリアとケリーはフェンスを乗り越え京都の街に消えていった。――東京秋馬原荒れ果てた雑居ビルの一階は今や探偵事務所になっていた。見た目は完全にシャッターの降りた店舗な為、外からは全く見えない。出入りは路地の裏口からになる。日光が差し込まないのでリティーシャも降りてくる事にした。「さて今日からオープンですね。ミラージュ探偵事務所!」ハンチング帽、外套を着たリティーシャは事務机に座って言った。「名前が……まあナイトケースから取ったからいいんだけどよ」頭をかきながら刀耶が言った。柄シャツにタンクトップ、深緑のカーゴパンツである。「素敵な名前じゃないですか!頑張りましょうね!」スーツ姿の下柳景織子は両手を握りしめていった。「早速メールで依頼が来ていますね。『社員の素行調査をして欲しい』と。あと一時間で事務所に来るはずです」「リティーシャ、スーツの方がいいんじゃないのか?きょん…下柳さんのように」「ありませんよ。私はこれといつもの予備の服しかないです。お金もないですからね!トーヤこそどうなんですか?」「俺は動きやすさ重視でいいんだよ」「所長さん、私の妹のでよければお貸ししますけど?サイズが合うかも」下柳景織子は嬉しそうに笑顔で言った。「い、いや私はこのスタイルで行きます!気に入ってるのでこれでいいのです」「そうですか、絶対似合うと思うんですけどねー。あ、そうだ所長さん宗像さんお茶入れますね、家から色々持ってきたんですよ」奥の台所に入っていく下柳景織子。「……おいリティーシャ、ナイトケースのこといつ言うんだよ?」刀耶はリティーシャに近づいて小声で言う。「完全にタイミングを逃しましたね」「彼女には給料払うんだよな?」「ええ、歩合制になりますけどね……本当に今払うお金無いので」「ああ……不安だ」「大丈夫ですよ。ディスクバットと私の監視カメラハッキングの調査力と天才的頭脳、美貌があれば。トーヤは足で調査するのです」「相変わらずすごい自信だな……しかし面倒だなぁ」「探偵業はオーグルの調査も兼ねてるので。トーヤ、ナイトケースはいつでも持っていてくださいよ」「まぁそうだな」「お茶が入りましたよー」下柳景織子は盆にアイスティーとミルクを持って出てきた。「所長さんはミルク、宗像さんはアイスティー」「人肌に温めてありますね。よく私の好みを覚えましたね」リティーシャは喜んでストローを突き刺して一気に飲み干す。「ぷはー……キョウコは優秀な事務員としてやっていけそうですね」「ありがとう、俺のアイスティーも氷抜きだ……流石だ」「えへへありがとうございます」「リティーシャ、この前コンビニでモーモーミルクのメーカーが粉ミルク出してるの見つけたんだけどあれはどうなんだ?」「粉ミルクですか……満足度は高いですがすぐに飲めないのと携帯できないのが不満ですね。前に一度試したのですよ」「やはりボトルタイプが一番か」「ええ、ストローも挿せて蓋もついてて最高です」刀耶とリティーシャの話を横で笑顔で聞いている景織子。――30分後、メールを送ってきた依頼主が現れた。サラリーマン風の中年。リティーシャは男の話を聞き契約書にサインをさせる。早速調査開始となった。「ではお願いします」腕時計を見た依頼人は慌てて事務所から走り去っていった。「依頼人は飲料メーカーの社員。部下の金回りが急に良くなったとのことで副業の可能性があるので調査をして欲しいと」リティーシャは書類を刀耶と景織子の前の机に置いた。「ディスクバットでつけ回せばすぐに分かるんじゃないか?」「そうですね、やりようによってはすぐに判明しますね」「はぁ~すごいのですねそのロボット……探偵はすごいですね」景織子はディスクバットを手に取り角度を変えて凝視する。勤務先の飲料メーカーの前にディスクバットを待機、張り込みを続け、対象の社員【冲永眞二郎】が出てきたところを追う。外回りでルート営業を行う彼を一日監視する事にした。「さて、後は持久戦ですね……トーヤ、キョウコ、しばらくすることはありませんし自由にどうぞ」リティーシャはノートパソコンを眺めながら言った。「じゃあ俺は……3時限目の授業まで適当に時間潰すかな」「それじゃ私は一旦おウチに帰って洗濯します。昼からマスドのシフトがありますので今日はもうこれで失礼させていただきますね」「キョウコ、明日もよろしく頼みますね」「はい、所長さん」事務所を出て行く景織子。刀耶もナイトケースを持って出て行く。「下柳さん」刀耶は照れくさそうに景織子に話しかける。「はい」「その……また明日ね。マスドにも時々行くよ」「あ、はい。お客様としてのご来店お待ちしてまーす」分かれる二人。「(あ~きょんちゃんが気になる男ってどんな奴か聞けなかった~……リティーシャから連絡があるまでHKFでもやって時間潰すか)」刀耶は頭をかいてゲームセンターに向かう。行きつけのゲームセンターは相変わらず常連で賑わっていた。刀耶は軽い挨拶を交わしHKFの順番待ちをする。モニターを見ると二刀流のスズカと体術&片手剣のガラの試合が始まろうとしていた。「これはどっちが勝つか予想できないな」先に仕掛けたのはガラだった。片手剣のフェイントを入れ踏み込み、足技で攻撃を仕掛ける。対するスズカは冷静に見極め回避する。スズカは左手の剣を前に突き出しガラとの距離を取る。「前に突き出した剣にどう対処するかで相手の動きを見てカウンターを入れる気か?俺だったら……あえてゆっくりと武器をあの剣に沿わせてスズカが動くのを見るかな」ガラは意外な行動に出た。ストライクスマッシュでスズカの左手剣を下から弾き上げのけぞったところに踏み込み連続蹴りを叩き込んだ。「まさかいきなり崩しで使うとは。あのまま蹴りで仕留めるつもりか?」連続蹴りが3発当たったところでスズカは半身で躱し両手の剣でガラの右腕を集中攻撃し使用不可能にする。「やっちまったな……部位破壊とは。左手に持ち替えたところであいつ右利きだしな」焦るガラは左手の剣を不用意に振りカウンターを取られKO、1ラウンドを落とした。2ラウンド目は完全にスズカのペースに飲まれガラは敗北した。刀耶の順番が回ってくる。対戦相手は鞭使いのベル。ムチと短剣を使い分けるプレイヤーで一人用モードのスコアランキング全国一位の強者。「ベルか……最近対戦モードでもランキング上げてるんだよな」対する刀耶はロングソードとシールドを選択。「鞭は先になればなるほど威力が高まる武器。間合いを外せばそれほど怖い武器じゃない。けどベルは左手に短剣を持っているどういう使い方をしてくるか」試合開始。刀耶が一歩踏み込んだ瞬間頭部に鞭の一撃を受けた。「速い!最速で振る方法を完全にマスターしてる。そりゃそうか……」続いて鞭の攻撃、刀耶はシールドで防御。ベルは鞭の連続攻撃、刀耶は徐々に間合いを詰めるがクリティカルヒットにより盾の耐久値が減っていく。「これ以上は盾が持たない、だがもう少し接近できれば」ロングソードで刺突を仕掛け一気に間合いを詰める刀耶、ベルの短剣がそれを弾く。刀耶ははすぐさま体勢を整えベルの頭部を狙う。ベルはバックステップで下がる。「そこだ!ストライクスマッシュ!!」バックステップを待っていた刀耶、ロングソードは切り返しの下段からストライクスマッシュが乗り、ベルの顎にヒット。体力ゲージを半分削った。連続攻撃を仕掛ける刀耶、ベルは体制を立て直し、短剣で刀耶の連続攻撃を凌ぎきる。鞭を振り、刀耶の腕に巻きつけて投げ技を仕掛ける。尻餅をつく刀耶、追撃の短剣が肩に命中。「近接も出来るってか」後方に転がって立ち上がる刀耶。追撃の鞭をシールドで防ぐ。刀耶はシールドを構えて突進、隠しきれてない下段に鞭を受け躓きそうになるも何とか堪えロングソードの間合いまで詰める。「ちょっと強引だったか、今ので右足の耐久値が限界だ」シールドで殴りつけ鞭の動きを止める、短剣と斬り結び刀耶は手首に一撃を入れた。次の瞬間、ベルの鞭が光り、刀耶の首に巻き付いた。「なにっ!近接で鞭のストライクスマッシュだと!?」背負い投げで刀耶を叩きつけるベル、止めの短剣の一撃を入れ1ラウンドが終わった。「くっそ…ナイトケースと違ってすぐに体力無くなるな。いや、これは俺がナイトケースの防御力に助けられてたって事か。2ラウンドはもっと慎重にいくとしよう」2ラウンド目は終始小競り合いが続きタイムアップ。体力の多さで刀耶の勝利。そしてファイナルラウンド。ベルは開始直後から鞭での猛攻、刀耶は慎重に様子を見ている。「遠距離は鞭の間合い、近距離は短剣と体術を駆使した崩し投げあの動き何か格闘技をやっているな。鞭を攻略したところで俺の攻撃は当たる距離じゃない、やはり近接で競り勝たなければ」鞭の僅かな隙を見てシールドバッシュで弾き、近接戦闘に持ち込む刀耶。ベルは短剣で突きながら刀耶の体勢を崩す隙を狙ってくる。「俺は格闘技の経験が無い、だから強引に仕掛ければ負ける。相手の虚を付かなければ」ハイパーキングファイターの為に武道格闘技を始める者も少なくない。だが、高ランクの者が全て経験者ではない。現実で格闘技が強いものでも下位ランクであがいている者もいる。経験者未経験者、小学生から中高年、男女、全てのものが上位ランクにいる。刀耶はオーグルとの戦いの後格闘技に興味を持っていた。「HKFは覚えて操作できれば格闘技の動きを再現できる。だけどナイトケースはそうもいかないんだよな……思うように体が動かない、やっぱり格闘技すべきかな」刀耶はわざと隙を作りベルの背負い投げを誘う。自分から飛んで着地、上段斬りストライクスマッシュを放ちクリティカルヒットで命中させた。ゲームセンターで歓声が上がる。ベルは焦らずに距離取って鞭で4連打を仕掛ける。刀耶の体力が一気に減っていく。「しまった……これで五分五分か」鞭を足に巻きつけ転倒させにくるベル。刀耶はロングソードで拘束を外しシールドバッシュ2連打から中段突きを放つ。短剣で弾くベル、反撃を回避する刀耶。そして鞭を警戒しながら右側に周り右腕を攻撃、ベルの体力を削る。ベルは下段攻撃で刀耶の足を止め鞭での拘束狙う。一進一退の攻防が続きお互いあと一撃まで体力を削る。「こうなったら……」シールドを投げつける刀耶。ロングソードを両手で持つ。ベルはシールドをしゃがんで回避、鞭のストライクスマッシュで刀耶を狙う。反応できない程の速さで放たれた鞭であったが刀耶は次に来る攻撃を読んでしゃがんでいた。そこから立ち上がり際に水平斬りを放ちベルの胴を薙いだ。これが決め手になりファイナルラウンドは終了。「よっしゃ!!」シールドを捨てたことで攻撃速度が増した事、ベルの攻撃を読んでいた事の二つの要素がかみ合い刀耶の勝利となった。「強かったな~」刀耶はカードを取り出して席を後ろで並んでいるプレイヤーに交代する。しばらくゲームセンターで他のプレイヤーの動きを見てイメージトレーニングをする刀耶。唐突に携帯電が鳴った。「リティーシャどうした?」『例のターゲット冲永眞二郎に動きがありました。外回り中に第二区2丁目の公園に向かい、駐車している車に緑の液体が入ったカプセルを渡しているのが見えました!オーグルです!!』「2丁目だな!すぐ向かう!!」ゲームセンターを出た刀耶は路地でナイトケースを装着、ジェット噴射で屋上に飛び上がりディスクバットを装着、翼に変形させる。――第二区繁華街2丁目第二公園第二公園は周囲をビルに囲まれ薄暗い雰囲気がする場所である。夜に水商売の親を待つ子供、昼間は浮浪者くらいしか足を踏み入れない。その公園の前に止まっている車にオーグルを渡し50万円を受け取った冲永眞二郎は何食わぬ顔をして車から離れる。「ちょっと待った!」ナイトケースを装備した刀耶が急降下、地面に片膝と拳をついて着地する。「なんだぁ!?」「緑の液体を回収させてもらう。これをどこで手にれた?」「ちっ……」全力疾走で逃げる冲永眞二郎。刀耶はジェット噴射で追いついて首筋を掴む。「大人しく渡してくれれば何もしない」「は、離せェ!!何なんだヤクザか何かか!?」「いいや、とにかくそれを渡してもらおうか。自分で使ってないだろうな?」「使ってたらどうだってんだよ!!グウウウウウウウウウウウオオオオオオオオ!!」冲永眞二郎の額からは角が生え、筋肉は盛り上がり皮膚は緑に変化する。刀耶の手を振り払い出現した大剣を振り回す。「へっへへへへ……どうせ今日の客で全部売りさばいたんだ。そろそろ潮時と思ってたんだ。臨時ボーナスだ!!あんな会社のボーナスじゃ足りねえんだよ!!」「いくつさばいたんだ?」「10個だったかな?とにかく稼がせて貰ったぜ!!何者か知らないがこの力の実験台になって死んでくれ!!」大剣を振り回す冲永眞二郎、大振りの上段斬りで刀耶を狙うも軽く回避する。後方にあった違法駐車の車を切断した。「見たかー!この威力!!」「確かに威力はすげぇな」振りかぶる冲永眞二郎、刀耶は肉薄してショルダータックル、背負投げで叩きつけて顔面パンチを叩き込む。「ぐげぇ」ロングソードを装備する刀耶。冲永眞二郎は顔を押さえて立ち上がる。「この野郎!!」大剣を斜めに振り下ろす冲永眞二郎。刀耶は軽くバックステップで回避、隙にロングソードの一撃を腕に入れる。「ぎゃあ」大剣を持ち上げる冲永眞二郎、刀耶は大剣の横を前蹴りして体制を崩す。そして膝に一撃を入れる。「ぐあっ」しゃがみこむ冲永眞二郎、刀耶は水平斬りのストライクスマッシュを放ち首を切り裂いた。「ぐぼおお……」冲永眞二郎は爆発四散。跡には痩せこけた姿の冲永眞二郎が倒れている。『圧倒的ですねトーヤ』「俺も成長してるってことだよ。ホフとかアグリアとかケリーに比べたら普通のオーグルは大したことねえよ」『私のナイトケースを使いこなせてきたのですね。所で冲永眞二郎はどうしますか?』「人外関係で警察が動いてくれるかわかんねえしとりあえずオジサンに電話しておくか」『それではレンにメールを送っておきます。それと冲永眞二郎の写真を撮っておきます。依頼人に証拠として渡しますので』「ああ、じゃあもう事務所に戻るほうがいいか?」『いえ、さっき冲永眞二郎からオーグルを受け取った者を追うのです。ディスクバットが車を追跡しています』「分かった」車内でオーグルを飲み込み、そのままアクセルを踏み込む男。アクセルは全開に踏み込まれ信号は無視、既に時速130kmに達していた。「いいいやああああほうううううううううっ!!」オーグルに変化する男、更に車は加速していき時速150kmに。「おい!スピード出しすぎだ!!」「あ!?なんだテメェ……」刀耶は飛行しながら運転席の窓ガラスをノックする。「止めろ!」「うるせええええええええええ!!この世の誰も俺に指図するんじゃねえええええ!!」「ちっ……」刀耶は車の前に回り込み足を地面につけて踏ん張る。「うおおおおおおおおっ!?」アスファルトがめくれ上がり車は減速、100m程で停車する。「何勝手に止めてんだああああ!!ブッ殺す!!」カギ爪を装備したオーグルが車から飛び出し襲い掛かってくる。刀耶はロングソードを装備、カギ爪を受け止めて横に流す。体勢の崩れたオーグルの脇腹を刺した。「あが!!」カギ爪を闇雲に振り回すオーグル、刀耶はすべてロングソードで弾きカウンターの突きでオーグルを刺していく。「こ、この野郎!!」両腕を広げ飛び上がるオーグル、刀耶はしっかりとオーグルの動きを見極め着地の隙にストライクスマッシュの上段斬りを叩き込んで頭部を両断、オーグルは爆発四散した。「ウゴアアッ!」「ふう~……」『すぐに退避してくださいトーヤ流石に目立ちすぎです』「そ、そうだな!」飛び上がる刀耶、翼を広げジェット噴射でその場から去る。屋上からリティーシャのアジトに入りナイトケースを解除、1階の事務所に降りる。「見事ですねトーヤ、この調子でオーグルを始末していきましょう。探偵の仕事も早速一つ終わらせましたし」ガスマスクを外しながらリティーシャは言った。「これで2万円が手に入りますよ。キョウコに3時間分の3千円を渡しても17000円です」「俺はただ働きなんだけどな」「美女二人と仕事ができて10億円の価値があるナイトケースを使えるのですからこれ以上の贅沢はないでしょう?」「冗談だよ、俺は溝口堂でバイトしてるし小遣いはちゃんとあるさ」「17000エン……トーヤ、モーモーミルク4.5と、この雑誌に載っている服を買ってきてくださいファッションセンター・ムラクモは安くて品質がいいのですこのピンクの上着もそこで買いましたし」「いや、自分で行けよ。ムラクモは21時まで空いてるだろう?それに依頼人が支払らいにくるまで金ないだろう」「そうですね……浮かれていました」リティーシャは違う雑誌を手に取り背もたれ付きの事務椅子に深く腰を下ろす。「トーヤ、それはそうと私は魔法少女の格好が似合うと思いますか?」「何を言い出すんだ突然……アニメでも見たか?」「いえ、キョウコが妹とコスプレをするというので私も誘われたのですよ。魔法少女サルサ・マサラのキャラクターなのですが。その一人【ピンクペッパー】がぴったりだと」「へぇ~……」興味なさそうに刀耶は答える。「キョウコは【ブルーチリ】妹は【レッドシナモン】です。調べました。中々面白いストーリーですよ」雑誌を広げてみせるリティーシャそこにはゴシックドレス調のデザインがされた三人の魔法少女のキャラクターが載っていた。「この格好をリティーシャたちが?……うーん、まぁ似合うんじゃねえの?」「あんまり興味なさそうですね。キョウコの趣味に合わせる気はないのですか?」リティーシャは椅子を降りて雑誌を近づける。「だってなぁ……アニメとかよく知らねえし。ゲームはするんだけどなぁ」「キョウコと仲良くなりたいのでは無かったのですか?」「そりゃあそうだけど別にアニメに興味あるわけじゃないし」「そうですか……キョウコが気になっている男性はキョウコの趣味に合わせるタイプかもしれませんよ?」「!?」刀耶は目を大きく開けてリティーシャの雑誌をもぎ取る。「よ、よしレンタルで今日から魔法少女サルサ・マサラ見るぞー!」「(単純ですね)」椅子に戻るリティーシャ。ノートパソコンには【ナイトケース・ハート】と書かれたフォルダ。フォルダを開くリティーシャ。そこには桜色に輝くスリムなアーマーの3D映像。頭部のフォルムは逆卵型で顔はハートを思わせる面がつけられている。「(これが完成すればトーヤのナイトケースの名前をはナイトケース・ダイヤに変更しなくては……)」「何見てるんだ?」「まだ秘密です」終