2本続けて当たりでした!
娘が大学へ帰ってしまった夜、夫と二人で見たのは、息子お勧めのこの映画、October Sky、邦題は「遠い空の向こうに」。高校を卒業してカレッジに行くのは、アメフトで奨学金をもらったプレイヤーだけ。あとはその町にある炭鉱で働くしか未来はない。しかしその炭鉱も石炭の生産量が減っており、未来が明るいわけではない。そんな炭鉱の町で暮らす4人の高校生がソビエトが打ち上げたスプートニクを見て、ロケットを打ち上げようという夢に向かっていく。親との衝突。わかってくれない校長先生。しかし、理解し、夢を後押ししてくれる先生や、大人たちとの交流があり、ロケットは少しずつ完成に近付いていく。主人公がいろんな思いをかかえたまま、夜空を見上げながら炭鉱に降りていくシーンが、脳裏から離れない。ジェイク・ギレンホールの真っ青な目がまたよい。最後の、頑固親父との会話に、泣けてしまった私。主人公のヒーローは、ロケットを飛ばしたフォン・ブラウンではなく、違う分野で生きているけれど、こんな男性になりたいと思う、親父なのだと告げる。涙腺全壊。また、このころの子供たちは、父親に対して、"Yes, Sir."と言っていることにも驚き。会話でも、父親母親に対して、あるいは目上の人に対して、きちんと丁寧な言葉で話している。今から50年ほど前は、こんな感じだったんだなと。今だと、Pleaseと言えばいいだけだが、彼らはCould you やWould youを使っていた。英語も、アメリカの親子関係も、どんどん変わってきているのだ。息子に、いい映画を教えてくれてありがとう、そうお礼を言った。さて、先月見たもう一本はこちら。The King's Speech.一番初め、テロップなして見てしまい、英国英語のまったくできない私は、何を言っているのかぜんぜんわからなかった。there areが、「タァー」に聞こえてしまうし。ほんと、アメリカ英語と同じ言葉かと思ってしまった。吃音をなおす先生がオーストラリア訛りだというが、「ダンジャー」とか「トゥダァイ」とか言わないし、あれでも訛りがあるのかと驚いてしまう。映画の最初から、これ、スピーチが得意な人でもかなり緊張するよなという場面から始まる。次男坊の王子様は吃音もちである。だから、王家としてこなしていかなければならない公務のスピーチで、失敗している。王子としてのプレッシャー、そして、辛い過去。いろんなことをこの王子様、引きずっている。王子様といえば、絵本の素敵な世界のように思えるが、小さい子供が育つには過酷な環境だったにちがいない。癇癪持ちのこの次男坊王子様を、彼の奥さんは愛し、サポートし続ける。新しい医師や治療師を見つけてきては、試すが、吃音はいっこうによくならない。そこで、一人の治療師に会う。この二人の交流が、またいい。治療師は相手が王子であれ、自分の治療室内では、王子のことを家族が呼んでいたバーティーという愛称で呼び続ける。つまり、治療室では彼は王子様でもなんでもなく、一人の人間として扱われるということだ。体を動かしたり、お口を石鹸で洗わないといけないほどの、汚い言葉を治療中に言ったり、歌で言いたいことを言ったり。これで、今まで抑制されていたものを、吹き飛ばすのかなと。それだけ、王子様時代、まわりに押さえつけられてきた証拠なんだろうな。さて、先代の王が亡くなった後、王位についた兄貴がずっと王様でいるはずだったのに、王冠を捨て、恋に走ってしまう。王様になどなれないという彼を、メンタルの部分でもサポートしていく治療師。ドイツとの宣戦を国民や兵士に伝えるスピーチを、彼は治療師とともに臨み、立派になしとげる。このあとの、二人ウィットにとんだやりとりがまたいい。英国人やねぇ。そして、治療師はスピーチの後、彼のことを"My Majesty"と呼ぶのだ、バーティーではなく。その一言に、涙する私。(失礼、"Your Majesty"と言っております)最後のスピーチの後、父親のスピーチに対するエリザベスのコメントが、またいい。でもその後、娘たちがどれだけ父親のことを心配して見守ってきたのかがわかったり。彼女が今のエリザベス2世なんだよね。まず、画像がとても綺麗。そして、俳優さんたちも、とても上手。音楽もいい。エクササイズのシーンでのフィガロの結婚序曲、宣戦布告スピーチのシーンでは、ベートーヴェンの第7交響曲の第2楽章、ベートーベンのピアノコンチェルト5番「皇帝」の 第2楽章が使われている。聞きなれたクラシックが、映画に命を吹き込んでいるようだった。スリルとサスペンス、めくるめく展開、などというのは一切なく、ある意味地味なんだけれど。人って、弱い部分もあるんだけれど、でも強くて温かくて素晴らしい存在なんだなって、じーんとくると思う。一人は弱いけれど、友情や愛が、人を強くするのかもしれない。この王様、ジョージ6世は、ロンドンが空爆にあっても、バッキンガム宮殿から出なかったことで有名だ。奥さんも子供たちも結局はロンドンを離れなかったそうだ。この映画は、また、見てみたい。2本とも、とてもお勧めの映画である。