ViViANi 宝石店の絵日記

今日のイタリアンジュエリー「美のツボ」は、陰で主役の宝石たちを支える
リングの裏方さん、つまり「枠」のお話です。
普通の人は主役の宝石にしか目が行かないものですが、やはりお芝居と同じで
主人公だけではお話は成立しないものなのです。主役が光って見えるためには
それを支えるキチンとした配役があってこそ引き立つのですね。



さて、このリングは一見ありそうな形なのですが、実は非常に計算しつくされた
「曲線」と「面」の変化で構成されているのです。
ただプロでない限り、美しいとは「感じる」ことが出来てもどうしてそう「感じる」
のか、またどうして他の似たリングとは「根本的」に違うのか、までは分からない
ものなのですね。



このリングのデザインの特徴は、縦と横の「厚み」や「幅」をまるでメビウスの輪の
ように反転させることで「使用感」と実用的「強度」を見事に「デザイン」として
融合させていることです。
つまり下の写真の説明のように、指の腹の部分では日常生活上、物を持つ女性のために
リングの「幅」を広くし、代わりに「厚み」を薄くして違和感がないようにしてい
ます。そしてリングのサイドから徐々にトップに向かうにつれ「厚み」と「幅」を
反転させ、ダイヤをセッティングするための「厚み」を確保しつつ、今度は野暮ったい
ダイヤモンドラインにならないようにメレダイヤの幅まで横幅を狭くしてシャープな
ダイヤモンドラインを作り出しています。
そしてそのコントラストを際立たせるためにリングの最後の端を結合させず、クロス
させた状態で潔くカットしたデザインは、まさに「簡潔な美」を追求したイタリアン
コンテンポリージュエリーの真骨頂だと思います。さらにピンクゴールドとホワイト
ゴールドのコンビネーションが絶妙としか言いようがないくらいですね。



安価なジュエリーをよく見てみると分かりますが、「枠」ひとつにこのような気配りは
していないことに気づく筈です。大量生産されたリングでは、「幅」や「厚み」などは
デザインの一部とはまったく考えてはいません。それらの枠の至上命題はいかに「金」
の「量」が削れる形であるかというほうに重きが置かれているからです。


このようなデザインのイタリアンジュエリーは今の日本の市場ではちょっと損な立場の
ような気がします。なぜなら同じくらいのダイヤのカラット数の物の倍くらいの価格に
どうしてもなってしまうからです。しかし、この考え抜かれた「枠」のデサインに
こそ本当の「価値」があるのですが・・・・。
さて今日の「美のツボ」、みなさんにはどう映ったでしょうか?

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