ビッグストーンジュエリーとデザインの問題

2007年07月28日

先日、ViViANiのとあるお客様からお預かりした昔のジュエリーです。
このおばあちゃまがお持ちになっているジュエリーはたぶんその辺りの
宝石店よりずっとスゴイものだと思います。

でも、これらの宝石類は今はもうぜんぜん着ける機会もなく、またデザイン
としても古いのでどうしょうか?と言ってお預かりしたものなんですね。
たぶんこの4点だけでも昔は家一軒たったのではないでしょうか?しかし現在では
色々な諸条件でかなり目減りした価格になってしまっています。
仮に宝石に財産的価値を求めるならば、製品になっていないダイヤモンドと
24金の金塊しかないと思いますね。残念ながら・・・。

(1)為替相場の変動
これらのジュエリーは古いもので30数年の時が経っており、その昔終戦後
しばらくは日本の「円」はドルに対して固定相場制をとっていた関係で
当時は1US$、\360の時代がしばらく続いておりました。単純に為替計算を
しても現在では当時の三分の一になってしまいます。
ただし、これは当時の原価に対しての計算だけなので当然、売価でのひらきは
さらに大きなものになってしまいます。

(2)経過年数による劣化
ViViANiではあえてエメラルドは取り扱わないようにしています。
理由は色々あるのですが、一番の理由はエメラルドは経過年数が長ければ
それだけ表面のオイルがなくなり、例えれば人間が歳をとるように石の表面
の艶が無くなるという性質があるからなのですね。
写真3のエメラルドはキャラット数は十数キャラットもある見事なエメラルド
ですが、残念ながら往年の輝きと艶は現在では消えてしまっています。
写真2のエメラルドにもその兆候が見受けられます。こればかりは誰のせいでも
ないエメラルドの持つ宿命なのですね。

(3)カットやプロポーションの流行
写真4のサファイヤは見事な色合いのサファイヤなのですが、現在の主流の
カッティング形状とは違ったものなのですね。このサファイヤは約5キャラット
少しあるのですが、昔のカッティングのため表面に見えている部分が小さい
プロポーションを持つタイプなのです。だから見た目には3キャラットぐらい
にしか見えないというちょっと損な形状なのです。

(4)テーパーダイヤモンドの問題
昔は既成の枠にテーパーダイモンドの取り巻きが一般的であり、それしか
なかった時代もありますが、現在ではテーパーダイヤを使ったデザインそのもの
が古さの象徴的な存在になり、デザインジュエリーでは今やこのダイヤを使う
デザイナーはまずいないと思います。もしいまだにこのタイプのデザインの
リングがあるとするならば、それは大昔のデッド・ストックを大安売りにかける
ためのチラシ用の商材以外は考えられません。

では、何故ViViANiでリフォームをしないのか?確かにダイヤやサファイヤ、ルビー
なら問題ないのですが、エメラルドだけは難しいのですね。それは石そのものが
大変デリケートであり、石留めをはずすときに割れることが多々あるからなのです。
1キャラ、2キャラのエメでも大変なのにこんなに大きなエメラルドを保障する
ことは出来ないからなのです。

よく日本でジュエリーのリフォームの広告をみかけますが、実際は「大昔の既成の
型枠」から「今の既成の型枠」に入れ替えるだけのものであり、結局のところ
デザインの永続性やオリジナリティとしては疑問があるものが多いとViViANiでは
考えています。

ともあれこれらの大昔の宝石をViViANiのデザイン力で完全リフォームして
どなたかがお買い求めになるチャンスが仮に生まれたとしても(このキャラット
数から考えると大変安いのですが)それでもそこそこはしますので現実には
むずかしいかなぁって思いますね。

みなさんはこういうビッグストーンを完全リフォームしたデザインジュエリーを
どう思われますでしょうか?
そのおばあちゃまが言われるには、娘さんたちはこんなデザインのジュエリーは
要らないし、またこんな大きない宝石も今は着ける機会がないから要らないと
言われているそうです。うんーん、娘さん達(彼女達もViViANiの顧客です)の意見も
理解出来ますね。

たぶん全国にはこんな感じの人達はたくさんいると思うのですが、
宝石を扱う人間として、もう一度これらの宝石を身につけてくれる人達がいれば
そのおばあちゃま達も宝石達も喜ぶとは思うのですが・・・難しい?!

てー真剣に考えてBlogを書いてたらネコちゃんがやって来てスクリーンを覗き込んで
一言、「わぁ!!襟巻きトカゲの軍団だぁ!!!!」と言いつつ去って行きました???