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カテゴリ:ミステリー小説
『緋い記憶』高橋克彦、文芸春秋、初版1991年10月30日、第106回直木賞
本書は、高橋克彦の短編集である。「緋い記憶」「ねじれた記憶」「言えない記憶」「虜の記憶」「霧の記憶」「冥い記憶」の7編が収められている。共通するのは、すべての題に「記憶」という単語が付いていることである。筆者の高橋克彦さんは、記憶に興味を持って、それを書きためていたと「あとがき」に書いている。 表題になっている「赤い記憶」のあらすじはこうだ。東京に住む山野のもとに、高校の同級生だった加藤が盛岡からやって来た。山野を同窓会に誘うためだ。たまたま加藤が昭和38年の盛岡の住宅地図を持っていた。山野は、自分が祖母と二人で住んでいた家を探した。 現代から始まって、あることがきっかけで高校生時代に記憶が戻り、それが殺人事件に行き着く。これがどの短編にも共通するストーリーの柱となっている。 「ねじれた記憶」――主人公がある画集を見せられ、そのうちの一枚に宿屋が描かれていた。この絵が、主人公の記憶を刺激した。そして、そこに向かう。 「言えない記憶」――講演で故郷に帰った主人公が、昔の友人が集まって歓迎会を開いてくれた。その席で、台風が来た日にした缶蹴りの話題になった。缶蹴りの直後に典子が行方不明になり、それが主人公の記憶を突いた。 「遠い記憶」――主人公の家に岩手県の新聞が送られてきた。しゃれた割烹の店の広告を切り取って手帳に挟んだ。翌日、彼は取材で盛岡に行った。タクシーに乗って周りの景色を見ていると、25年前の子どもの時の記憶が徐々によみがえってきた。 「虜の記憶」――主人公は、半年ほど前から食あたりで、腹痛と頭痛、吐き気が同時にやってくるようになった。その原因を探ってゆくと、水に原因があることがわかった。水の産地に主人公は行き、食あたりの原因を突き止めたが……。 「霧の記憶」――20年前、主人公と早良、咲子、美千代はロンドンの同じホテルに宿泊していた。咲子と美千代が旅行に出て、早良が帰国するという前日、お別れパーティをした。翌日、咲子は失踪した。そして、現在、主人公は咲子失踪の謎を探る。 「冥い記憶」――18歳の毅は休学していた。叔母の由香里と彼女の恋人の松平らと東北をめぐるミステリーツアーに出発する。参加者は全員で9人。東京をマイクロバスで出発した。行く先々で毅の記憶が目覚めてきた。 どの作品も、あることが原因で、古い記憶が刺激される。最初は記憶と現実が離れているが、それがだんだん縮まってくる。記憶のあいまいさを利用したミステリーである。 ホーム・ぺージ『これがミステリーの名作だ』も御覧ください。 http://bestbook.life.coocan.jp
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Last updated
2018.09.02 15:11:28
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