アジア系が書いた英語の小説
ナム・リーの『ボート』を読みました。小川高義訳。
ベトナムで生まれ、生後三ヶ月で両親とボートピープルとしてオーストラリアへ。大学卒業後は大手法律事務所勤務を経て渡米、アイオワで作家修業をしたのち、短編を集めた本書でデビューしたようです。なんかいっぱい賞をもらってるらしい。なぁ~むぅ~。
自伝か?って思うような冒頭の作品「愛と名誉と憐れみと誇りと同情と犠牲」は、作家修業中のベトナム系青年の話。なかなか作品が書けなくて、父親から聞いたベトナム戦争の話を自分なりに小説にするのだが、それを読んだ父親に原稿を燃やされてしまうという…。なんか複雑やなぁ。
他に、コロンビアの殺し屋の少年たちを描いた「カルタヘナ」。初老の男が生き別れた娘に会いに行く「エリーゼに会う」。「ハーフリード湾」は難病を再発した母を持つ高校生の話で、オーストラリアが舞台。
びっくりなのは「ヒロシマ」。戦時中疎開した小学生の話で、ラストは…原爆が投下されたのか?とギクリとなりましたが、深読みしすぎかしらん。
さらにテヘランを舞台にした「テヘラン・コーリング」。これが一番好みの話かもしれん。そしてラストに表題作の「ボート」。ベトナムから難民ボートに一人乗り込んだ少女の12日間を描いた作品で、期待と絶望が入り交じったラストシーンがすごいっす。
それぞれ舞台も違い、老若男女が主人公。想像力のたくましい人なんだなぁ。