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カテゴリ:歯医者の話
さてさて、私の歯医者遍歴はまだまだ続く。
上の前歯の1本が食事の途中に突然欠けてしまったのは2年くらい前の夏。 いや、欠けたなんてかわいらしいものではなく、根元付近からボロっと折れてしまったのだった。 その日は、なんとも腹立たしいことに、友達の結婚式の日だった。 近くの教会で執り行われる結婚式が始まる前、その頃彼らが住んでいたアパートメントのお庭に用意されたレセプションでシャンパンを飲み、軽い食べ物をつまみながら、集まった人々と新郎新婦が挨拶を交わしたり、写真を撮ったり、おしゃべりしている時にそれは起こった。 バゲットを口に運んでかぶりついた瞬間、ほとんど何の抵抗もなく、ボロっと折れてしまった。 実際に目の当たりにしたことが無ければ分からないかもしれないが、 前歯がたった1本欠けているだけなんだけど、かなり間の抜けた感じになる。 ピンと来なければ、前歯を1本黒い色で塗りつぶしてみると良い。 普通に口を開けただけでも、ビックリするくらい面白い顔になるから。 くどいようだが、友人の結婚式の前である。 頑張って、普段は着ないような、ちょっと気取った服を着ている。 それなのに、前歯が1本欠けてるだなんて、、、。 もうみっともなくって、情けなくって、口を開けるのを控えてしまう。 口を開けて笑う時は、ついつい手で口元を隠したくなる。 しかし、ヨーロッパに来て、これをやると、周りからはかなり不気味に思われてしまうのだ。 いちいち話し相手に口元を手で覆われると、口が臭うような気がすると、昔、知り合いが言っていた。 こんな感じで、せっかくの楽しい結婚式が(人のだけど)、一気にやけに長ったらしい憂鬱な一日に変わってしまった。 さらに、この結婚式の日は土曜日だった。 土曜日も当番制でどこかの歯医者が開いている、なんていう知恵が働かなかった私は、 憂鬱な気分のまま月曜日を待った。 ちなみにこの折れた歯、少し前に神経の治療が終わったばかりだった。 ドイツに来て、いつ頃からか、歯の色が悪くなり、おかしいなあと思いつつ、痛くもないので放っておいたのだが、虫歯が神経にいきつくほど悪くなっていた。 そんなになるまで気づかないって一体どういうこと?! いや、くどいようだけど、治療する歯には困らなくて、常に歯医者には通っていたから、 歯医者の方で何も言わないなら何でもないんだろうとタカをくくっていたところもある。 他の歯の治療が終わり、恒例の点検をしているときに、歯医者が異常に気づき、すぐにその治療に取りかかってくれた。 そして、治療が終わったばかりだったのだ、しつこいようだけど。 月曜日、朝一番で歯医者に電話をする。 、、、、、、。 つながった、 と思うと、耳に流れ込んでくるテープの無機質なメッセージ。 「Dr.△△は、ただいま休暇中です。休暇中の急患については、○○歯科が代行します。電話番号は×××、、、」 不思議なことに、歯医者に限らず、私が急に医者を必要とする時、決まって彼らは休暇中だ。 ちなみに、ドイツの医者は、普通のお勤めの人達と同じく、最低2週間、通常なら3週間くらいの休暇を取る。 それも、イースター、サマーバケーション、クリスマス、と、少なく見積もっても年に3回だ。 しかし、ドクターが休暇で居ない時は、代行を町の他の医者に頼んで行くので、緊急の場合は、そちらへ行けば良い。 緊急事態なので、その代行の歯医者に電話を掛け、アポイントをもらった。 その代行の歯医者、歯医者と言うよりも、顎の外科専門医だった。 私の口の中を覗き、持参した折れた歯を見たその歯医者は、心なしか顔を曇らせて言った。 「私は代理人だから、今日は取り合えず、緊急措置としてくっつけてあげるけど、あなたの歯医者さんが休暇から戻ってきたら、何か手を打たないと駄目ですよ」 本当に、持参した折れた歯を、ピタッとくっつけてくれた。 えぇぇぇぇ、それだけ? 「くっつけただけだから気をつけてね。その歯で硬いものを噛んだりしないようにね。この歯、ちょっと削って短くしておくから。そうしたらあんまり力が入らないでしょ」 えぇぇぇぇぇぇ、そういう問題?? それから1週間ほど経った後だろうか、私の歯医者が休暇明けで再開したので、すぐにアポイントをもらって、治療に行った。 私の話を聞きいた歯医者は、ものすごーく同情のこもった顔をして、 「それはお気の毒でしたね」 と言った。 これまで、ドイツに6年居るが、あんな風に同情されたのは初めてだったので、その時のドクターの顔がいまだに鮮明に焼き付いている。 いや、しかし冷静に考えて見れば、のん気に同情なんてされている場合ではないのだ。 治療が終わったはずの歯が根元からボロッと折れるって、かなりヤバイ事態なんじゃ、、、? ドクターは、すぐに治療に取りかかった。 まずいつものようにレントゲン写真を撮り、 「歯茎や神経には異常はないですね。歯は既にくっついているので、補強するためにチタンの棒を差しましょうね。神経の治療は済んでいるので、痛みはないですから」 と言うと、麻酔無しで歯の裏側から歯に垂直に穴を開け、チタンの棒を差し込んで穴を閉じたようだった。 それは、治療と言うよりも補強・修理に近かった。 休暇中の代理で診てくれたドクターの表情や口ぶりから想像されたような深刻な事態ではなく、比較的あっさりと、穴を開けて棒を入て終しまい、正直言って拍子抜けしてしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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