「いちごえほん」をご存知ですか?
韓国は今この冬一番の寒さを迎えている。昨日は雪が降った。人一倍寒がりな私は冬が嫌い。けれども朝早起きして、まだ真っ暗な中をごみすてに出た。雪は3センチくらい積もっていて、まだ誰も足跡をつけていない真っ白な雪を踏んで歩く。ぎゅっぎゅっという音、本当に気持ちがいい。ふと思い出した事がある。まだ小学校の頃、毎週通っていた市の図書館でいつも借りていた雑誌があった。「いちごえほん」という。廃刊になって長いらしいが、サンリオの月刊誌で「アンパンマン」のやなせたかしさんが編集長だった。コンセプトは「子供と、大人になりきれない大人のための・・・」本で、毎月童話や詩が掲載され、一般の子供の詩も投稿されていた。「アンパンマン」も連載されていた!当時「詩とメルヘン」も一緒に並んでいたが、小学校低学年の私は「いちごえほん」の方がやさしくておもしろかった。図書館に行く度に「いちごえほん」のバックナンバーを借りてきては、自分なりの世界にひたっていた。ある時風邪をこじらせ学校を休んだ私に母が「いちごえほん」を買ってきてくれた。6月号で、表紙はやなせたかしさんの黄色のかさとレインコートを着た子の絵。色とりどりのかさの花が咲いている。うれしくて大切に1ページ1ページ読んでいく。そのなかに「ぼくのたからもの」という詩があった。作者は小学3年生。私と同い年だ。確かこんな詩だった。「ぼくのたからものいちにち いちにちがすぎていくそのいちにちが ぼくのたからものだいちにちがすぎるとたからものが とおくへいってしまったようなきがする」挿し絵は葉祥明さんで、広い牧場で帽子をかぶった少年が寝転んでいる。その指先には小鳥が止まっていて、なにか話をしているようなのびのびとした絵だった。(「いちごえほん」は当時から作家や挿し絵にかなり豪華な面々が参加していた)そのページの隅にこう書いてあった。「心臓病をわずらっていた・・・君はこの詩を書いて一週間後になくなりました」幼心にどきっとしたのを覚えている。私と同い年の、このすてきな詩を書いた子がもうこの世にいないんだ・・・そう思ったら涙が出てきた。まだ幼いのに死を意識して、毎日を病院のベッドの上で過ごしたんだ。どんなに辛かっただろうか・・・でも毎日を「たからもの」と感じ、大切に大切に過ごしたんだ。周りにいた人はそんな彼を見て幸福だったに違いない。幸福の種をまいて逝ってしまった、そんな風に思えた。こんな日はこの詩を思い出す。あの子が生きていたらどんな大人になっていただろうか、と思ったりする。私の今日は「たからもの」だっただろうか。「たからもの」のようにきらきら輝く一日を作っていきたい。生と死が同じ重さを持つ国、韓国で、雪をふみしめながら。