GORON'S(時々更新する小説)
ToiはAsianのストリッパーNYでダンサーを目指してやってきたが、最近生活に追われてレッスンもおざなり、生活のために働いていたピアノバーもクビになり、途方にくれていたが、ストリッパーになることを決意した日からもう1年近くになる。Gストリングをどこで買うのか、どんな衣装で、どんな踊りをすればいいのか右も左も分からずに入ったが、もう随分この世界にも慣れてきた。毎日、違うバーで踊るToiだったが、『GORDON’S』はお気に入りのバーだった。イタリア人のGORDONの経営するこのバーは、8割がた黒人、後2割がヒスパニック、イタリア系白人、そして稀にASIANという客層だった。ハスラー達が集まるこのバーでは、ステージにシャンパンを運ばせる客や、全部シングル($1)の$100を投げ入れてお札の海で寝転んでフロワワークしているとどんあストリッパーだってその日はスターか女王様気分を味わえる、、そんな場所だった。ストリッパー達の9割は黒人、およびヒスパニック系だった。大半のストリッパーはToiにナイスだったが、稀にAsianだから、白人だから、肌が黒くないからという理由で嫌悪感をあらわにするもの達もいた。地下にある楽屋では、みな必ず自分の持ち物に鍵をかけてステージにあがる。なぜなら、Gストリングや、ステージ衣装、Wigまで目に付くものを盗む輩がかならずどこにでも現れるからだ。ある時、Toiはステージ上に衣装を脱いで、その上にシングル($1)を乗せて踊っていると、ダークスキンのアフリカンのダンサーの子が、激しく踊っていたかと思うと、不意にその子は自分が今までに集めたシングルをToiのシングルの上に乗せてそのままToiの稼いだお金ごと鷲掴みにしてステージを降りてしまった。又あるときは、ラップダンスをしている間、ガーターベルトにはさんでいたお金を全部客に抜き取られたこともあった。気の抜けない世界だった。ストリッパー仲間の『Sucks』はクールな子だ。大学にいくためにこの職業についている。地に足がついた子だし、ドラッグもやってない。ちょっとした技を持っている。Gストリングを手で使わずに足と股間の筋肉だけでアレを広げて見せることが出来るのだ。Gストリングをズラしてアレを見せる事はNYのトップレスバーにはとってはご法度。客の中にアンダーカバー刑事がいたら、その場でダンサーも逮捕され、店も最低でも数週間の休業を言い渡されることになる。現に何度となくGORDON’Sもそれで休業を余儀なくされていたので、もしもアレを見せている行為、FLASHING、を見つかればマネージャーのBIG MIKEにすぐに咎められてしまうのだがSUCKSは手を使っていないので、上手く逃げ切れているようだった。Sucksと小腹がすいたのでドーナツッ屋へと歩き始めた。男たちが私たちを見つけて茶化し始める。『Sucks! Let's Talk About Sex,baby!』二人は軽く鼻で笑いながらドーナツッ屋へ入り込んだ。それでも一人の男はいつまでも、SUCKSを諦めきれないのかドーナツッ屋の外から口説いていた。『分かったわよ!どのドーナツッが欲しいの?』Sucksは男に大声で叫んだ後、小声で『ドーナツッ買ってやればこの男、口説くのをやめるでしょう?こいつにだってプライドあるだろうし』そう言って男にシナモンロールを買ってやったが、男は尚もSucksを口説き続けた。『What's Wrong w.him?!』男のプライドも持たないその男にSucksは背を向け自分の手にもったドーナツッにかぶりついた。『今日いくら稼いだ?』ToiはSUCKSに尋ねる。『$500位かなぁ。あの例のトリックをやってたら、他の男がオレにもやって見せてって言ってやってやったら、もとやって!ここにいてって一人で$200位使ってくれたんだよね~』その日のToiの稼ぎは$200位のものだったがToiにとっては特に不満の金額ではなかった。『送ってくれるって客が居て疲れてたし、乗っていこうかとか考えたんだけど、やっぱ止めといた。全然知らない奴だったし』Toiはコーヒーを両手に抱えて言った。『お願いだからさぁ、約束して欲しいんだけど、絶対に客の車になんか乗らないで。私がLONG ISLANDの白人のクラブで踊っていた時、スッゴ~イ金持ちで私の友達を気に入ってて、その子の為に$500位毎回使ってたし、私も友達だったから$100くらいはいつも使ってくれてたんだよね。医者で、家族も居て、見た目も綺麗な白人男なんだよ、で、私の友達は、ある日その男の車に乗り込んだんだけど、、、』『何?強姦でもされたの?』『いや。殺されて、捨てられてたよ。その男、今頃、まだJAILだし。家族もいたし、金あったし、身なりもいい男だったのに、、、。だからお願いだから、男の車なんて乗らないでね』Toiはこれまでも何度か送ってもらったこともあったし、これまで軽く迫られる程度の事はあったが、危険な目にもあった事はなかったし、これからも安全そうな客だと見れば、乗るだろうなぁ、、、と内心思いつつも、『うん。乗らないよ。』と答えた。『でもさぁ、例えば好みの男とならいいんじゃない?私、客と結婚した子だって知ってるよ』実際に知っていた。トルコ人のアンバーと客だったブラザーは結婚していたし、プエルトリカンのSUNSHINEも、あぁまぁカッコいいブラザーと結婚してた。SUNSHINEは『私はBEAUTIFULだからダンナは他の女に目が行かないんだよね。彼と出会って1週間で結婚決めたんだよね。結婚決めるときってそんなもんだよ。』と幸せそうだった。でもそういえばSUNSHINEも客に強姦された事があるといっていたことをその時Toiは思い出した。他のストリッパーの子と、客二人と4人で出かけて友達ともう一人の男がどこかにしけこんでる間に、乱暴されたと言っていた。ダンナもその男の事知ってるとかいっていたなぁ、、、Toiは残りのドーナツッを口に放り込んだ。このところSUNSHINEとは会っていない。SUNSHINEはASIANが嫌いだと言っていたがToiにはナイスだった。手作りの舞台衣装や、Gストリングをくれたりもした。この業界でナイスな子を探すことがお互いに大変なのを知ってからすぐにうち解けたのだろう。ダンナと二人で何度か仕事帰りに送ってくれたり親切にしてくれたのだが最近電話もない、、。一度、ダンナをNAILサロンで見かけたが声をかけそびれた事があった。なんとなくあのダンナがNAILサロンに居ること自体不自然な感じだったしもしかしてダンナはSUNSHINEに隠れて誰かと会ってるんじゃ?Toiはそんな想像を膨らませていたし、仲間にポロッと口を滑らさせたことがあった。SUNSHINEの耳にその話が伝わったのでは?そんな不安も少しよぎった。SUNSHINEだって安々と手に入れた幸せではないし、彼女なりの愛をダンナに捧ぐ努力もしているのにToiは少しだけ、幸せそうなこの二人に嫉妬していた。そしてそんな自分の醜い心もいやだった。『Go Goバーで遊んでる男のこと、私は“Go Go Men”って呼んでるんだよね。アホでスケベな男って意味』SUCKSは口を開いた。『まず、あんな連中とまともな恋愛するのって無理だよ。仮に付き合ったって、またあいつらは夜毎ちがうGO-GOバーに行って違う女の裸見に行くんだし。』『じゃあさぁ、SUCKSって彼氏いるの?』『いるよ。もう10年以上一緒だよ。』『10年?!』『うん。12歳の頃からずっと一緒』『お互いに浮気とかしたことないの?』『あったし、今でも時々あるけどお互いに許してる』