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櫻井よしこ氏講演

◆第249回全国縦断「正論」九州講演会 「日本よ、勁(つよ)き国となれ」

産経新聞が九州・山口地域で10月から新創刊するのを記念し、第249回全国縦断「正論」九州講演会(主催・産経新聞社、九州「正論」懇話会)が2009年9月10日、福岡市のホテルオークラ福岡で開かれ、ジャーナリストの櫻井よしこさんが「日本よ、勁(つよ)き国となれ」と題して講演した。櫻井さんは、日本を取り巻く厳しい国際情勢を指摘。その上で、今こそかつて日本人が共有していた「武士道」の価値観を思い返し、一人ひとりがまっとうな日本人に立ち戻るしかないと訴えた。

≪米、中、2大国首脳会議≫

民主党政権ができることが決まりました。私たちを取り巻く国際情勢は大きな変化を遂げています。鳩山由紀夫さんは、その意味でいわば有事の首相となります。何が起きるのか予測困難な、大変な状況での首相です。常に戦いの場にあるのだと思ってほしい。

同盟国の米国が大きく変わり、隣国の中国もかつてない変化を見せています。そんな中で私は一昨年、「国家基本問題研究所」というシンクタンクを創設しました。

福田康夫さんが首相になり、中国に関し「お友達の嫌がることはしない。国と国の関係も同じ」と発言しました。個人の感情の問題を国家間の冷厳な外交に適用するなど、政治・外交の基本をわきまえていません。この人が首相で日本はどうなるのか政治への不安が直接の動機でした。

その活動の中で今年4月、米オバマ政権の関係者約20人に会って、意見交換をしました。ワシントンでは確実に日本の存在が小さくなっています。米国にとって中国がアジアの代表。戦略的パートナーであり、利害をともにし、中長期的に協調すべき相手だという姿勢です。

では、米国にとって、日本はどう位置づけられるのか。日米は同盟国で、血を流してでも助け合う関係のはずです。しかし、ワシントンではG2という言葉が飛び交います。

G2とは、「2大国首脳会議」の意味です。8カ国のG8は機能しない。責任を持って戦略を立て、必ず実行できる国はもはや米中しかいない。米中2カ国が世界の重要問題解決の枠組みを決めるとして、米中戦略経済対話を定期的に開いてきました。

オバマ大統領になって米中関係はさらに格上げされました。語り合うべきは経済だけではなく安全保障、テロとの戦い、金融、環境などの多岐にわたるというのです。

一方、日本が何を考え、どういう政策を打ち出すのか、どんな国家を目指し、国際社会にどう貢献したいのか、米国に見えにくくなっている。米専門家は、日本の安全保障政策は「弱い味方は強い敵より恐ろしい」という言葉を想起させると言います。

味方と思い頼っていた相手からはしごを外される。そんな怖いことはない。本当に信頼できるのかと。日本は、台湾問題を忘れてはいけない。中国と米国の台湾政策を心して見たいものです。台湾は2300万人の人口を持つ立派な独立国家です。

陳水扁前総統は台湾人の総統。今の馬英九総統は外省人、つまり中国系です。陳政権のころ、議会は国民党(中国系)の方が多かった。ですから、台湾にも国会のねじれ現象があった。予算が8年間思うように通らない。台湾海峡で中国に対して十分な防衛力を保つため、米国から潜水艦、戦闘機などの装備を買おうとしても、予算が通らない。

そこに馬英九氏が登場した。彼は外省人でねじれがなくなり、予算が通った。資金がそろったから買いたいと言ったものの、今度は米国が売ろうとしません。以前は買ってくれと言っていたのに、です。最終的には、米国は台湾を守る義務があるからと売ったものの、リストからは台湾が欲した装備が除かれていた。

なぜ売らないのか。中国が嫌がり、強く反対するからです。売れないよう介入する。台湾は国家でありながら、実際には米中2カ国に共同管理されているといえます。

≪中国の「野心」にどう対応≫

軍事力を増やし続ける中国は何を目指しているのか。1989年の暮れにベルリンの壁が崩壊し、ソビエトの力が弱まったときから、中国はここぞとばかりに軍事力を増強し、21年間で軍事費は20倍になった。すさまじい伸び率です。

現在、中国は世界第二の軍事大国。軍事費は15兆円に上ります。米国はだいたい70兆円で日本は約4・8兆円。さらに防衛費はここ7~8年間は年に2%ずつ減らされています。日中の差は拡大するばかりです。

中国の最終目的はなんなのかと米専門家らに問うと、「当面はアジアにおいて西太平洋を支配し、やがて月を超えて宇宙に進出し、宇宙に勢力を打ち立てること」と答えました。ですから、まず、太平洋をハワイを基点にして米国と半々にしたいと。

中国は、米国の太平洋艦隊のキーティング司令官に実際にそう言った。太平洋を二分し、東をアメリカ、西を中国が支配しようと。キーティング氏は、米上院軍事委員会で「ジョークととるかもしれないが、言葉の中に中国の長期戦略の神髄が入っている」と証言しています。

そのような野心を持つ中国は、2010年代終わりから20年代初めには米国を抜いて、世界第一位の軍事大国になるという予測があります。オバマ大統領は軍事費削減に動いていて、かなり現実味があります。

日本の最西端、沖縄県・与那国島に行ってきました。1600人の島。自衛隊に来てほしいと要請しています。島には警官が2人のみで、東の端は牧場ばかり。オーナーによると、大変なことが起きている。

中国船が岸近くまで来る。漁船ではなく調査船です。昼間は沖に止まり、夕方になると岸すれすれまで来る。容易に上陸できるだろうと言っていました。日本の領海ですが、おかまいなしです。海上保安庁も海上自衛隊も、船も人も不足で手が回らない。領海が日常茶飯に侵されている。

昨年6月、白樺ガス田を日中共同で開発しましょう、細部の合意ができるまで開発はやめましょうと日中両政府間で合意したにもかかわらず、中国は一度も交渉に応じない。そして突然、7月10日から中国は船や大型クレーンを白樺に持ってきて、資材を下ろし始めた。

中国にただすと「メンテナンスですよ」と言い張る。いくら抗議しても「維持管理ですよ」と。そして8月21日には、必要なすべての施設ができていた。宿泊施設も掘削の鉄塔も、天然ガスの処理施設も。いつでもガスを吸い上げて、処理して、中国本土に送ることができる。

日本は7月10日から8月21日までの間、何をしていたのか。麻生太郎首相がリーダーシップを取れない状態が長く続いた。日本がどんなに反発しても、実際に報復したり、対抗措置をとったりする元気も気力もないだろうと足元を見て、中国は開発を一気に進めたのです。政治的空白を、中国は見事に突いたのです。

外交は、友愛や言葉だけではだめです。外交力には軍事力、経済力、そして国民の意思・価値観の力が必要。政治力、軍事力、経済力、国民の意思の力、この4点がそろっていなければ、諸国の利害が渦巻く国際社会で伍していくことはできない。

4要素の中で日本が一番強いのは経済力。戦後日本は経済大国となった。ただ、今年中、もしくは今年度中にわが国は経済力で中国に追い抜かれます。世界第2位の経済大国は、日本ではなくなってしまう。

≪失われた日本の価値観≫

再び台湾を例に見てみます。台湾は国家でありながら、自らの運命を決められない。台湾は何ゆえにそうなったのか。

台湾は日本と似ているところがあります。台湾人であることを忘れさせる教育を蒋介石元総統から受けてきた。中国人化教育が行われ、言葉も歴史も地理も中国のものを学ばされた。李登輝元総統が誕生するまで、台湾人意識であることは眠らされていた。

経済においても投資先の7割が、また最大の貿易相手が中国。全人口のうち、150万人が中国大陸の企業と雇用関係にあり、家族を入れると600万人が中国との直接の関係の中で生きている。人口の約4分の1です。そうなれば、中国にもう何も言えない。台湾では豊かさが、独立の精神をむしばむ枠組みの上に築かれてしまった。

国家は経済だけでは成立しないし、できない。経済的に豊かなだけでは人生はまっとうできない。そのことを、私たちはご先祖様の時代からよく知っている。

戦後の日本は本来の姿を失ったところに、国家の枠組みを作ってしまった。だからこそ基礎のないもろさがつきまとう。伝統的な日本の価値観をかえりみず、米国が一番と思い込んだ。

国民の権利と義務を定めた憲法第3章を読んでみてほしい。書かれていることは日本の価値観ではない。家族が否定され、個人ばかりです。

日本人は責任と義務を大切にしてきた。自分を犠牲にしてでも他の人、家族のためにがんばってきた。しかし、一方、憲法第3章では、権利は16回、自由は9回言及され、責任と義務は3回ずつしかでてこない。こんなものは日本人の本来の価値観ではなかったはずです。

9条もおかしい。そして国連憲章によって与えられている集団的自衛権について、内閣法制局は「権利はあるが、行使はできない」とおかしなことを言う。

内閣法制局の役割は内閣に対する助言です。半ば以上、自分の頭で考えることを休んできた政治家たちが、世論を説得するよりも世論を恐れ、内閣法制局の助言をよいことに、そのまま内閣の決定としてきた。わが国も集団的自衛権行使に踏み切ることができると麻生首相が言っていたら、ここまで自民党は負けていなかったかもしれない。

(出典:産経新聞)


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