I cann't hate him.
私は、顔を伏せて泣くサイードを見ながら、何度か吹き出してしまいました。今までの彼の言ってくれた言葉を何故か色々と思い出して、自分がとても滑稽に思えたんです。職業柄か、又は彼が外国人だからか、知り合った頃から彼の周りにはいつも女性の影がありました。ただの生徒さんだったり、知り合いだったり、友達だったり・・・その殆どが女性である事に私は常に不安を抱いてました。私はその不安をかき消す為に、事ある如く「浮気してないよね?浮気しないよね?」って幾度となく尋ねてました。その度にサイードはたまに真剣に、たまに面倒臭そうに、たまに呆れては「そんな事する気はない。僕にはそんな時間もないし、金もない。君がいる。」と言ってくれてました。 でも本音の彼には、浮気する時間もあったし、ホテルに行くお金もあったし、私がいたけど関係なくそういう事が出来たんだ・・・。要は本人次第でいくらでも出来ることだったんだ・・・。 私はいつも不安を感じながらも、サイードの言葉を信じ、彼の誠実さを信じていたけど、結局はそれを鵜呑みにして幸せボケしてた自分がとても可笑しく思えたんです。落とし穴はいつも私の周りにあったのに、それを見ない様にしてきた自分がとてもおろかに思えた。 私はあの夜たった一粒の涙も出ませんでした。人間ショックが大きすぎると涙は出ないのかもしれません。 そんな私の前で泣くサイードは子供の様でした。泣き叫びたいのは私の方なのに、先に泣くなんてズルイ。気がおかしくなるくらい動揺してるのは私の方なのに、彼の方が自分を見失ってる。私は本当に馬鹿なのかもしれない。。。。 だってそんな彼を見て、なんだかとても愛しく思えた。私はきっとこの人を憎めない。嫌いになんてなれない。こんな馬鹿男を失いたくないと思いました。「If you can clean break up with her,I can forgive you.I want to make restart as a family with you ,our son and I.Even if such a thing this happen , I can say that still love you...彼女ときちんと別れてくれるなら、私はあなたを許し、家族としてもう一度やり直したい。こんな事をされても、私はまだあなたを愛してると言える。」と彼に言えたのは、その時感じた私の本当の気持ちです。 夜が明けても、一日が過ぎても私の気持ちは全く変わらず、どうしても彼との別れは考えられなかった。頭に思い浮かぶ事はというと、サイードがどう思っているのか、彼はもう既に別れを決意してるのではないか、浮気相手の方を選んで私達が切られてしまうのではないかとばかり考えてしまって、それが何より怖かったです。次の日の夜、私は友人のケイトに電話をして、事の全てを話し、自分の英語に自身がないから自分の気持ちをきちんと伝えたいと言って、彼女に翻訳を依頼し、仕事から帰ってきたサイードに渡しました。サイードも同時に私に手紙を渡しましたが、そこには自分がした事の謝罪の言葉は一切なく、ただ昨夜の私からの質問に対してのとても理解し難い答えが綴られていました。そして、「How you say you can forgive me,I can't understand.僕を許せるとどうして君は言えるのか、君が理解できない。」と書いてありました。 私はその手紙を読んで、何故か無性に腹が立ち、サイードのところへ行って、あなたが私にとってとても大切な人だからだよ!こんなくだらない事であなたを失いたくないからだよ!あなたと出会ってからこの5年間、私は本当に幸せだったからだよ!この5年間を無かった事にするくらいなら、たった1ヶ月のあなたの浮気を無かった事にする方が私にはラクだからだよ!と気持ちをぶつけ、「私達のとこへ戻ってきて!」と「今すぐ私たちを選んで!」と要求しました。