カテゴリ: 映 画
妻夫木聡・主演の映画『悪人』がケーブルテレビで放送されていたので見ました。 結論から先に。これ、とっても素晴らしい作品でした!って、そんなことは皆もう知っているんですよね、きっと。 二年ほど前の公開時は、気になっていながら見てなくて。映画じゃなくても原作を読めばそれでいいかと思いながらも手にせずで。結構話題になっていたというのに何のことはない全くの未体験だったわけです。 なぜ未体験だったのか、そういえばと思い出していました。それはこのタイトルです。ネガティブワードをおもいっきりの直球ストレートですからね。正直、商品名としてはどうなのかと。タイトルとは消費者に手に取ってもらう為の導入部ですから、キャッチーな方がいいに決まってるんです(決まってませんが)。自分が制作側の立場にいるなら迷うところです。もっといいタイトルが他にあるんじゃないかと。じゃあ、ドストエフスキーはどうなるんだ、なんて突っ込みが聞こえてきそうですが。あ、そうか。この作品にはそういう側面への気持ちが込められていたのかもしない、って深読みか。 ま。問題は中身、内容ですから、そこで誰からも文句の出ないものを作れれば、タイトルを付けた原作者としては勝ちってことになるかもしれません。実際、本はベストセラーになり、こうして映画化までされたのですから大勝利と言えるでしょう。 当然だったのですが、このタイトルの元で悪人を描いたってしょうがないんですね。コントなら許されるかもしれませんが。ここで描かれていたのは、埋めたくても埋まらない心の隙間を抱えた男が悪人として認識されていってしまう様を、加害者側からだけでなく、被害者側からの視点も交え、丁寧に描かれた作品だったのです。 主人公は人を殺めてしまった後で、自分と同じように不安定な女性と出会い触れ合うことで、逆に生の実感、喜び、素晴らしさを知るに至るのですが、その姿はなんとも痛々しく、見ていて涙が止まりませんでした。心に隙間、誰だってあるんじゃないでしょうか。僕はそれをどう埋めているだろう。この世の中、みんな器用に振舞って生きているように見えますが、実際は不器用な人たちばっかりでしょう。漫画の『笑うセールスマン』ではありませんが、何か特別な仕掛けで僕の心の隙間も誰かに埋めてもらえないだろうかと思ったりもします。 泣ければいい作品というわけではありませんが、映画を見てこんなに泣いたのは久しぶりでした。終盤で、登場人物それぞれの視点から、その人たちの心象が描かれていくシーンに入っては涙が止まらないばかりか、鼻水ダラダラで嗚咽が漏れまくり。いや映画館で見てなくて本当に良かったです。(いや映画は映画館でみるものです) この作品をこんなに切なく受け止めてしまうのは、歳をくってすきまだらけになってる今の自分だからなのかとも思ったんですが、大ヒットしたというなら若い人にも受けたってことですよね。様々な視点から描かれていたこともあって、いろんな見方、感じ方が出来て、またそれぞれで見応えがあったということなのでしょう。 いやぁ久々に、本当にいい作品に出会えました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.11.02 21:58:25
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