鍼灸と薬
どうもご無沙汰?しております。泰心堂です。私かなり言うこときついです。業界の先輩に対してもざくっとつい言ってしまうことがあります。「それ違法行為!」とか?さて、今日のぶっちゃけ話。また、法律の話を持ち出しましょうか?これはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の人が知らないはずがない法律です。『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律』第4条 施術者は、外科手術を行い、または薬品を投与し、若しくはその指示をするなどの行為をしてはならない以上明確でしょう?鍼灸師は薬については何の権限もないのです。だのに『薬は害悪』だという鍼灸師が多い。私個人としては治療を通じて『薬が必要のない身体を作る』ことをすれば良いだけだと思います。なにも即座に『薬をやめろ』と頭ごなしにいう必要性はありません。もっとも『個人的』に「精神活動を抑制する類の薬はあまりお勧めしない」と言う程度は構わないと思います。私も、『睡眠薬やら精神安定剤の類は避けれるのなら避けた方が好ましい』とは思っています。あくまで個人的にです。しかしながら、不眠症で悩んでいる方に「じゃ、今日からやめてください」と言って、その代わりに今日から寝られるようにできるのでなければ意味がない。せめて「薬を飲まなくても寝られそうでしたら、飲まずにそのままお休みになってみてください」程度にとどめておく方が良いのではないかと思います。また調子が良いのならば医師と相談して今の身体の状態にあった薬に変えてもらうのも良いと思います。別に医師と喧嘩する必要もないですし、お互いに否定し合う理由もそんなにありません。むしろ補完的に付き合えるのが良いところなのですから。ま、そうは言いながらも鍼灸治療を含む、東洋医学系の方々は薬嫌いの方が多いのも事実です。かくいう私も幼少時代に散々喘息の治療薬を飲んでいた反動であまり飲みたくないというのが正直なところ。現在では発作が起こるのなら仕方がないくらいの感覚でむしろ発作が起こらないような生活と自己調整を心がけています。その結果、薬に頼らない生活をしています。さて、では東洋医学系でなぜそんなにも『西洋医学の薬=化学製剤』を毛嫌いするのでしょうか?おそらくはこれは発想の違いですね。『東洋医学系の薬』、一般的には『漢方薬』といわれるものは原因を消滅させるものではなく、身体の中にその原因に負ける要素があるので、『負けないように栄養素を足す』みたいな考え方です。ま、足りないものを補うということで、『サプリメント』(補助食品)的なニュアンスがあります。それか、吐き出す、押し流すといった『吐剤』、『下剤』の類ですね。別に身体の中の何かを選別して叩こう、消滅させよう、押さえ込もうなんて発想はないわけです。ところが『西洋医学の薬』は基本的に『叩こう、消滅させよう、抑え込もう、取り去ろう』という発想です。ま、つい数百年前まで悪い汚れた液体が悪い(四液説)から、たとえばその悪い血を体から出してしまえとかなり今となっては危険な治療が行われていたくらいですから・・・。西洋医学が絶対的な医学だと思っている人もいますが、歴史から見ればわずか数百年の伝統しかないですし、その間に基本構造が何度も転換しています。この辺は宗教的なものがかなり大きな制約をかけていた部分もありますけどね。困ったことに西洋医学では『悪魔』という発想が未だにあるようです。『病巣=悪』なわけです。「神から与えられた身体に悪魔が宿った。だから病となった」ってこれ中世の発想なんですけどそのレベルから未だに抜け出ていないといえば出ていないわけです。で、エクソシストたる医師が悪魔を根絶する。う~ん、なんかカッコイイ?ですね。でもね、この『身体の中のものを取り去ってしまう、あるいは消滅させる』っていう発想は、東洋医学的に診たら、『身体のバランスを著しく崩す行為』なんです。ま、ジェンガって組み木のバランス構造を利用した遊びあるじゃないですか?あれで組み木の色が悪いからって何も考えず取っちゃう感じ?全体のバランス考えてないからあっさり崩れるよね?『東洋医学はバランスが取れれば安定する、病じゃなくなる』って発想。もし、それが健康な状態に『要らないものであればバランスをとることで身体が判断して処理』してしまう。これは全体のバランスを診て自動的にバランス取りしているだけなんで長持ちする。この辺の根本発想の差と、西洋生理学の影響でしょうか?『薬』というのは『毒藥』なんだって言うのが東洋の基本です。どんなに良い食材、良い漢方薬でも足らなければ効果がないし、過ぎれば害となる。これは『過不及』という発想です。東洋哲学の三才論の中で展開されています。飲みすぎは毒なんだと、ではその毒を処理して無害化させているのはどこかというと不思議なことに東洋医学でも『肝』(肝臓も含む)の機能なんです。で、飲みすぎれば毒となるというのは『肝』の処理能力を超えてしまうので毒が身体に回ってしまうという考え方があります。で、これは西洋生理学でも『肝臓』は解毒作用を持っていることなどが肯定されて、なんだか妙な形で勢いを得た、東洋医学系の人たちが「西洋医学の薬=化学製剤は人体を不自然に痛め、肝臓に負担をかける毒である」みたいなことを主張した出したのが一つの原因のように思われます。でもちょっと待ってください。基本発想は、過・中庸・不及の量の三才(量との関係における三つの作用)の問題です。漢方薬だって取りすぎれば毒、健康食材だって同じ。西洋の化学製剤だけが毒ではないのです。だので薬も適度に取るのであれば『中庸』であり、身体に負担をかけすぎず体内環境を変えることが出来る。問題はとりすぎやら、偏りすぎのところにあるんです。さて、鍼灸はここにどう係わってくるか?実のところ鍼灸は東洋医学(治療)の中では第一にきます。1.鍼、2.灸、3.湯液(薬)の順です。養生法の中では1.食養、2.身養(適度な運動と労働)、3.鍼灸の順。これ、何をいって言るのか?よく考えないといけません。鍼灸というのは『気の調整』とか言う人もいますが、それを含めて『刺激と反射』を使った治療法です。つまり刺激することによって身体が何らかの反応をします、そういった働きを利用して身体の反応性をよくしていく治療法です。車などで言えば、ガソリンやバッテリーそのものをどうこうするものではなく、潤滑油の補給やバッテリーなど電気系統のメンテナンスに当たるものなのです。ガソリンやバッテリーがなければ車は動きません、エネルギー源の問題なんでこれが食養の問題に近い。実際に駆動するエンジンやらタイヤやら制御するブレーキやらがなければ走れません。これは身養に近い。鍼灸はこれらを繋ぐ回路系統の調整をするものです。・・・てことはですよ、別に薬を飲んでいるから治療ができないというわけではないのです。身体を調えていって、どうもここの違和感が抜けないなんて状態になったのならその薬の処方をしてもらったときに比べて身体が変化しているのですから、薬の処方をしてもらうことを促すので十分だということです。「薬が今のお体に合っていないのではないかと思います。担当の医師に相談されてみてはいかがでしょうか?」この台詞を言うのが鍼灸師のできる仕事ですね。こんなところでいかがでしょう?ご質問や治療のご相談、ご依頼は下記までお気軽にどうぞ泰心堂はりきゅう院〒275-0011 千葉県習志野市大久保2-5-7 大久保ハイツ103TEL/FAX 047-404-5225Mail taishindo@festa.ocn.ne.jpWeb http://takefor.client.jp/