|
カテゴリ:思想
「そして私たちは自分に問いかける。
この生命の世界の中で。 人間の居場所はどこにあるのだろう?」 リンダ・ホーガン*2 「人間はただ、この宇宙における己の役割がわからず、しかもそのことを認める勇気が ないだけなのではないだろうか。」 バリー・H・ロペス*4 「リンデンはおそらく、猿が言語や知性を持つかどうかを探るうちに、 ジレンマに近いものを感じるようになっていったのだろう。こう言っている。 「私たちはおそらく、星やその他の物質の謎解きに終始していたほうがよかったのでは ないだろうか。 私たちの本性や本当の能力に光をあてて、呆然とさせてしまう動物実験などやめて。 ここまで言ったら悲観的過ぎるかもしれない。 でも人間には、自分が何者かを知り、受け入れる度量などないのではないだろうか。」」 リンダ・ホーガン*2 「指に金の指輪を幾つもちらつかせていたこの歯科医とそのシアトルの友人は、 飛行機を着陸させることなく、オオカミを追い続けた狩りのことを話していた。 かれらの自慢話によると、とぼくの友人はいった。 強風に耐えられるように、下げ翼をめいっぱい下ろし、絞り弁を閉め、群れのすぐ後ろに つけていた。 オオカミ達の真上である。 群れを追いかけ、追いつき、どんどん高度を下げ、でぶ野郎が窓に寄り添い、身を乗り出し 、銃を構えた。 ぼくの友人は、この歯科医の話ぶりと言ったら、ばかまるだしで、救いようがなかったと 言う。 歯科医はその場にいながら、そこまで近づきながら、「答え」をー、その生命の神秘を つかめなかった。 自分のしていることが悪いことだと気づかない。 群れの絆を寸断し、オオカミたちの死亡診断書に署名をしていたことに気づかない。 人間の魂の死亡診断書。 地球の死亡診断書。 ぼくらの生きる場所に対する尊敬の死亡診断書。 すべてのものに対する尊敬の死亡診断書・・・。」 リック・バス*6 「彼らの手が感情を語った。 彼らの手が、私たちのそれと似た気持ちを表した。 あるチンパンジーは怒って、飼育係を”いやなやつ”と呼んだ。 科学実験のために連れ去られるとき、ある猿は取り乱し、抵抗し、 ついには鎮静剤を与えられることになった。」 「こうした実験は教えてくれる。 他の霊長類にも愛する心があることを。 抵抗する心があることを。 豊かな感情を持っているだけでなく、その苦痛や苦悩を、表現する力のあることを。 だが、人はその事実から目を背けようとする。 それが意味するものが、あまりにも大きいから。」 リンダ・ホーガン*2 「「モンタナにオオカミたちの居場所があるのだろうかってずっと考えているんだ」 とマイクは言った。 ほんとうに悲しそうだ。 「場所はある。土地はたっぷりある。 モンタナは大きいんだ。 でも、この州の人間って大きいんだろうか?」 なんと答えたらいいのかぼくには分からない。」 リック・バス*6 「「この事実は人間の本性に光をあてる。 人間の心の狭さをはっきりと映し出す。」 リンダ・ホーガン*2 「火刑の杭のまわりに立って、裁かれるオオカミ人間を野次ったり罵ったりしながら、 人々は、自分が人間性を守り抜いていることを誇示し、幸福感を味わったのである。 そのように自己嫌悪を他者に負わせてみたところで、けっして満足が得られるわけでは なかったことは、まさに悲劇と呼ぶにふさわしい。」 「「この世にはもっとたくさんのこと、われわれが理解できないものが存在するのだ」 と自分に言い聞かせることは、知識の及ばぬ神秘的なものを認めることであるが、 と言って、知識にけちをつけているわけではない。 それは広い視野を持つことであり、自分自身に大きな自由を与えることである。 自分が正しいと言い張るために、他人を悪者にする必要はない。」 バリー・H・ロペス*4 「それなのに、人はなかなかそれを顧みようとしない。 科学者たちは人と猿の類似点を声高に叫ぶまいとする。 そうした絆はむしろ慰めになるだろうに。」 「けれども、とリンデンは言う。 なぜこの実験を始めたのか、その動機がなんであれ、人間と動物の間の葛藤の 敗者は”科学”なのだと。」 リンダ・ホーガン*2 「母なる地球、木々、そして自然にあるなにもかもが、 あなたの考えることと あなたのやることの証人である。」 ウィネバゴの格言*8 「いのちとは何か それは、夜を照らす蛍のきらめき 凍てつく冬の空気に野牛の吐く吐息 草の上に落ち着かない姿を映しながら 日没とともに消えていく、ちっぽけな影」 ブラックフット族の首長、クロウフット*9 「ミスター・サンダースはミスター・エクルズのことを半分狼みたいな人だといって いました。 狼の考えることが狼よりも先に分かるって。 だが老人は狼の考えることが分かる人間などいないといった。 ー しばらくして老人はまた同じ主旨の言葉を口にした。 狼を知ることは出来ん、と彼は言った。 罠にかかった狼は歯と毛皮だけの抜け殻にすぎないんじゃ。 狼そのものを知ることは出来ん。 狼の知っていることも。 何を知っているのか分からないという意味では狼は石と同じだ。 木と同じだ。 この世界と同じだ。 ー 猟師なんじゃ、狼は、と彼は言った。 猟師。分かるかな? 少年には分かったかどうか分からなかった。 老人はさらに続けて本当の猟師と言うものは人間が思っているようなものではないといった。 人間は屠られた動物の血に何か意味があるなどとは思わないが狼はその意味を知っている。 狼は偉大な秩序に属している存在で人間の知らないことを知っている。 この世界は死が支えている秩序以外に秩序はない。 人間は神の血を飲んでもそのことの持つ厳粛な意味が理解できない。 人間は厳粛でありたいと願うけれどでもどうすればそうなれるかを知らない。 人間の行為と儀式のあいだに世界はありその世界のなかで嵐が吹き荒れ木々が風にたわみ 神が創ったすべての動物がゆきめぐるが人間にはこの世界が見えない。 ー 狼はひとひらの雪のようなものじゃ。 雪ですか。 そう雪だ。 手でつかむことはできるが掌を開いてみたらもうそこにはない。 抜け殻は見ることができるだろう。 だが本体は見る前に消えてしまう。 見たいのなら自由に動き回ってるところを見なくちゃならない。 捕まえたらその途端に消えてしまう。 消えてしまったらもう戻ってくることはない。 神ですら連れ戻すことはできんのじゃ。 ー いいかね、お若いの、と老人は囁いた。 息を強く吹きかけたら狼は吹き消されてしまう。 ひとひらの雪のように。 ろうそくの火が吹き消されるように。 狼はこの世界と同じ様な風につくられている。 世界に触る事はできない。 手で触ってみることはできない、 なぜならそれは息だけでできているのだからな。」 コーマック・マッカーシー*10 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.04.06 00:30:44
|