倫理の進化ー終章ー7
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。暫く前から、文明人達は、この社会が、行き止まりに来てしまった事に気が付いた。行き過ぎた科学、退廃した人間達。彼らは、今更さながらに、自然民族達の、家の扉を叩いた。ここになら、私達を救ってくれる、何か叡智が、あるのではないかと感じて。しかし、ネイティブ・アメリカン、チカソー族出身の、作家、リンダ・ホーガンはこう語る。「私たちがほんとうに求めているのは、私たちの関係を癒す言葉なのだ。 この生命を生み出す、地球と言う星に生きる命たちと語り合う言葉なのだ。 トウモロコシたちと語り合うことの出来る言葉。 私たちのまわりにある神秘をとらえ、それを私たちに返してくれる言葉。 尊敬の念と不思議さに満ちた言葉。 それは想像の言葉であり、神の灯した火であり、 科学的厳密さの境を越えて神秘そのものへと迫って行く言葉なのだ。」彼らネイティブ・アメリカンでさえ、この様に追い込まれてる。古来の生き方を、文明人に奪われてしまったが為に。「人間として、私はいま、寄る辺を失っている。」 リンダ・ホーガン*2リンダ・ホーガンが言う様な、言葉を集めて紡いでみよう。それは、ネイティブ・アメリカンの言葉であれば、ジャーナリストの言葉でもある。そして、「動物」実験を行っていた、研究者の言葉でもあり、物語の中で老賢者が語った言葉でもある。誰もが答えを求め、そして答えを述べている。それは時空を越えて、一つの空間で出会い、手を伸ばし合い、蜘蛛の巣の様に、互いを編み込み、世界を創る。言葉もまた、美しい、生命を持った芸術なのだ。その芸術の作品名を、最後にフランク・ウォーターズが、響きで唱える。「この少数民族側(ホピ)のささやかな努力は、この惑星が調和か破滅いずれかの道を踏みしめようとしている今の時期に、より大きな国々がみならうべき事柄であろう。それはまた、今の世界が人類共有の「生命の道」の上で、もう一つの進化の段階に入ろうとすることを兆しするものでもあるのだ」 フランク・ウォーターズ*3「広い視野に立って動物を見ようというときに直面する問題の一つは、私たちの多くが人間を動物と全く異なったものと見ていることである。私たちは自分が動物界に属するとは考えていない。しかし、インディアンは違う。動物たちをそれぞれオオカミ、クマ、ネズミと考えるように、彼らは自分たちを、動物界に属する”ヒト”(インディアンの多くの部族の名はほんらい人間という意味合いをもっている)と考えている。」 バリー・H・ロペス*4「何がこれほど人の心をとらえるのだろう。手の上に残る死臭ではないはずだ。零下20度の気温の中で、誰もみな手袋をはずし、狼の遺骸をそっと撫でる。」「みな、あの子鹿に触れたがった。みな、あの狼に触れたがった。私たちのなかの何かが、大自然との交わりを望んでいるのだ。大地との繋がりを求めているのだ。」 リンダ・ホーガン*2「私は、天使として、教師として、あるいはヒーラーとして私の前に現れた動物たちの、深遠で永続的な役割を明らかにします。私は動物たちの面倒を見、動物について書き、生涯を通して動物の代弁をすることで、この特別な贈物に対するお返しをしていくことを誓います。私はまた、動物王国の自然な要素である神聖さ、特殊性、霊性を人々に歓喜することによって、人間と動物との関係の改善に努めます。」 スーザン・マケルロイ*5「オオカミたちは風化した岩に根を張りめぐらせるように、じわじわと南下しつづけている。ついにぼくらの人間としての本質が問われるときがやってきた。政治的に進歩したのか、根底においてはいまだに先住民を虐殺したころと何ら変わっていないのかー。オオカミたちによって裁かれるときがやってきたのだ。」 リック・バス*6「私たちは狼を追いかけ、境界線を越えてなんとか話しかけようとしている。私たちがここにいて、彼らとの会話を望んでいることを。」 リンダ・ホーガン*2「人間がオオカミのすべてを総合して眺められるようになるとすれば、それは人間の側に根本的な変化が訪れようとしていることを意味するものであろう。人間がついに自分自身に関する先入観を捨てて、人間が中心でない宇宙を考え始めたと言うことになるからである。」 バリー・H・ロペス*4「この発見は人間をアイデンティティの危機のなかに投げ込む。ガリレオの時代、地球が世界の中心であるという揺るぎない信念が崩れていったように。」 リンダ・ホーガン*2「ぼくらの歴史は根底では何も変わってはいないのだろうかー地中の奥深いところにある底盤のような罪、更生出来ない殺人者集団「人間」。今度こそ、ぼくらはオオカミと共存できる道を見いだすのか。もう一度チャンスが与えられたとぼくは信じたい。オオカミだけでなく、ぼくらのためにも偏ったバランスを崩すチャンスが与えられたのである。」 リック・バス*6「沈黙のなか丘の脇の道を歩く。狼がもう一頭の狼と出会う、あの優雅な儀式を思い出す。人間もあの儀式に参加したいと思っている。私たちはここで、狼との出会いを待ち望んでいる。狼と出会い、語り合い、その毛並みに触れたいと思っている。好意すら持ってもらいたいと思っている。狼になら見えるはずだ。私たちの魂が。」 リンダ・ホーガン*2「オオカミが人間の子どもを育てるなどという話を、一笑に付す人が多いとしても無理はないかも知れないが、それは賢明なこととは思われない。人間の住む牢獄のような都会から荒野を眺めるとき、また、因襲の束縛から解放された生活、罪悪もごまかしもない生活、一言で言えば本当の生活を送る権利といったものを求めるとき、私たちはオオカミを手本としてもよいのではないだろうか。私たちはオオカミのうちに、勇気と我慢強さと自分に正直な生き方を確かに感じる。彼らがこの自然界と調和して生きているのに対し、人間は自然とまだ仲違いしている。」 バリーH・ロペス*4「絹のような やわらかい目がいる 精神世界を見るには石のような かたい目がいる 物質世界を見るには その中にいるためには」 ブラック・ウルフ・ジョーンズ*1「もしもおまえが枯れ葉ってなんの役に立つの?ときいたならわたしは答えるだろう、枯れ葉は病んだ土を肥やすんだと。おまえはきく、冬は何故必要なの?するとわたしは答えるだろう、新しい葉を生み出すためさと。おまえはきく、葉っぱは何であんなに緑なの?とそこでわたしは答える、なぜって、やつらは命の力にあふれているからだ。おまえがまたきく、夏が終らなきゃならないわけは?とわたしは答える、葉っぱどもがみんな死んでいけるようにさ。」 タオス・プエブロ・インディアン(ナンシー・ウッド)*7