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2006年06月15日
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カテゴリ:ひとりで山遊び
雨は朝まで降り続いて、小さなタープの脇からぽつぽつと滴がこぼれ落ちていた。
雨の朝とはいえ天然オンドルのおかげで寒くはなかった(むしろ暑かった)
起き抜けにもう一発、昨日作った露天風呂にとびこみ極楽気分を満喫する。
しかし暖まったあとだけに、雨の中濡れた足袋をはいて冷たい沢にふみこむのはおっくうだ。
今日はこのまま赤湯俣沢を下り、虎毛沢に合流したらそれを登って虎毛山頂上付近でもう1泊するつもりであったが、天候があやしいので今日中に下山することとした。コースは赤湯沢右俣から高松岳に登り、反対側のツブレ沢へと降りる予定をたてた。
9時に麗しのキャンプサイトを去り、冷たい沢を登り出す。

右俣に入ると一層の冷たさが身にしみる。
本当に冷たい。
手がきれるほどに冷たい。
こりゃ上流は相当の雪がありそうだ。
想像通り上流域はスノーブリッジのオンパレード。
ある時は下をくぐり、ある時は上を行き、またある時は重い石を分投げて雪の橋を壊しとにかくひとつひとつ障害をクリアして上へと登っていく。
次々に現れるスノーブリッジにもういい加減にしてくれと思う頃ようやく雪も水もとぎれて昨日同様のやぶこぎとなった。
突然水か枯れると、静寂があたり一面を覆い出す。
聞こえるのは自分の足音くらいか。

静寂の中だけに突然、樹から鳥が飛び立つだけでどきっとする。
そういえば今回は熊よけの鈴を忘れてしまった。

東北は日本有数の熊のすみかなのであった。

普段は意識しないもののこんな静寂の中にいると熊の恐怖が頭をもたげてくるものだ。
そうはいいつつも熊なんか滅多に出会えるものではない。恐怖はたいがい杞憂で終わるものなのである。
雨の中のやぶこぎはうっとうしさ抜群だが、とにかくこれを登り切れば登山道に出るはずだ。ルートを迷わないように慎重に進んでいく。

やがて傾斜がゆるんで稜線とおぼしき場所に出たものの、あれれ、道がない。
あるべき道がそこにないと自分の居場所が不確定になって少々緊張が走る。
沢登りにかぎらず、道なき道を歩く山登りでは自分の現在地の把握はことさらに重要なのである。
おそらくは沢の上流でルートを間違えて枝沢に入り込み、主稜線から派生する枝尾根に入り込んだと推定された。
ならば推定される現在地を地図上でひろい、目的の箇所へとさらに藪こぎを続けるだけである。

背丈を没するほどのねまがりたけの藪をゆっくりと歩んでいく。
静寂の中に自分のやぶをこぐ音と自分の息づかいが響いている。

いや待てよと耳を澄ましてみる。
するともうひとつ違うものの息づかいも聞こえてくるようだ。
まさかと思いつつ少しばかりの緊張が走り、すこし小広くなった尾根でやぶがすこし切れた時に、何か違うものの息づかいがすぐそばに感じられた。

反射的に眼を音の方にやると、左手7~8mの所で黒いずんぐりとした生き物が餌を喰んでいた。

心臓の鼓動が一瞬で高鳴って全身に緊張が走った。

「熊!」 くま

そう認識した次の瞬間、付近のやぶをゆすってこちらの存在をアピールした。

今までにも何度か山で熊にあったことはあった。でもそのいずれも、こちらが気づいた時には熊の方が逃げていた。だからああ怖かったねと後になって言えたのであるが、今回は折り悪くこちらの方が先に気づいてしまった。
しかも熊さんはただいま食事中である。
食事中の動物を怒らせると怖いのは動物を飼ったことのある人ならご存じだろう。

藪をゆするとその音で熊はこちらを振り向いたが「何だ人か」とばかりにこちらを無視して食事モードに戻ってしまった。

まずい。
非常にまずいどくろ

普通、月輪熊は臆病なので人間の気配を察知すると逃げるものなのである。にもかかわらず逃げないということは人間の怖さを知らない熊だ。恐れを知らないものほど怖いものはない。

さあ、くまったくまった・・・なんてくだらんこと言ってる場合ではない。
さあどうするどうするどうするどうするどうする??????
思考が一瞬で回転し、いくつかの選択肢をひねり出した

1,戦う
2,死んだふりをする
3,逃げる
4,追い払う


1はいくらなんでも却下したい。武器といえばアイスバイル1丁くらいしかない。そんな丸腰で戦えるもんか!大山倍達じゃあるまいし
2は迷信ですな。死んだふりしたら「ん、何だ何だともてあそばれるのが関の山」
3はどこに逃げるというんじゃ。山の熊のスピードは半端じゃない。背中を見せて逃げるとたいがい追いかけられるのが関の山

ならばやはり4しかない。
大声で威嚇し、敵がびびって逃げるのを待つ。逃げなくば間合いによって応戦もしくはザックをおいて逃げるという4→1→3のフォーメーションで応戦することにした。
ここまでの思考に要する時間は1秒。
2秒後にボクは敵を威嚇すべく、腰と口の手をあて渾身かぎりの大声を張り上げた

「う~らら~ら~ら~らら~ら~」

山奥に響く雄叫びは少年ジェットか浜口か(知ってる?)
天にも届けとばかりの馬鹿デカ声にさしもの熊さんも
「ん。なんだよ?うるせいな」とめんどくさそうな顔をあげるが一向に立ち去る気配はない
こうなりゃ消耗戦だ。こちらもかまわず力のかぎり声を張り上げ続ける。

すると熊さんは
「もううるせいな。こっちは飯喰ってんだよ。静かにしろよ。もういい。こんなとこで飯喰ってられないや」
というような気配を濃厚にし、やおら立ち上がると後方の谷の方へ姿を消していったのであった。

熊が去ったあとには静寂だけが残った。

勝ったのだ!
俺は熊に勝ったのだ
グッド


心底ほっとして疲れがどっとでる。
しかし自分はまだ安全圏に脱出していないことに気がつく。
熊が1匹いたということはその近辺に熊のファミリーがいる可能性が高いのだ。
とにかく一刻も早く登山道に脱出せねばならない。
登山道までの残りのやぶこぎを心持ち急いでこなして稜線に出る。
しかし稜線は雪に覆われ、どこが道か藪なのかも判別がつかない。

道が見つからない
ここぞと思った所に道がない。

そして背後には熊さんの息吹。こんな恐怖はありませぬ。
血眼になって周囲を探すと雪のしたからつながる登山道を発見した。
これほど道のありがたみを感じたことはない。
「あ~これで無事に帰れるよ~」

稜線は雨風が強く、まっすぐに立っていられないほどであった。
稜線から反対側の沢の下る予定も雨風熊に脅かされあえなく却下。代わりに高松岳の山頂を踏んだ。

頂上からは晴れていればすばらしい眺めが広がるそうだが今は分厚い雲の中だ。
頂上付近の避難小屋で少し休んだ後、登山道を下山する。
この辺はマイナーな山と言うこともあって、登山道もそれほど整備されているわけではないが、道なき道を歩いてきたものにとっては手をつかわなくても歩けるというだけで天国だ。
そのうちガスも一瞬晴れて、重畳とした緑の山並みがガスの合間に浮かんでくる
虎毛山 015.jpg
すばらしい眺めだ
先ほどの熊の恐怖や、雨風の冷たさのことも忘れて毎度でてくる言葉はいつもとおなじ
「あ~山っていいな~」
そんな感じで今回の山は締めくくられるのであったきらきら





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最終更新日  2006年06月19日 23時10分28秒
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