一晩中降り続いていた雨も麻起きる頃にはやんで、抜けるような青空が広がっていた。
窓辺からは海の香りとともに小鳥のさえずりなどが聞こえてくる。
すばらしい朝の始まりであり。
さてとはいえ今日はすでに11:40の船で内地に戻る予定なのであるからしてあまり時間はないのであるが、天気もよいし船出までの時間を島をぶらぶらするつもりである。
M樹ちゃんは朝5時頃に起きて昨日入り損ねた露天風呂に入りにいくと言っていたが朝起きられなかったのでこれからいくととのことで、またなんとなく一緒に行くことになる。
島の目抜き通りをつっきって海辺の温泉へ。
みやびの湯
他の温泉に比べるとやや人工くさいが、それでも海辺の立派な混浴露天風呂なのだ。
人工の分湯加減がちょうどよい。
まだ早朝ということもあって他の客もおらず青空のしたのんびりと1時間ほどつかっていた。
そのあと海辺を散策して土産物屋さんで式根島名物「あしたば」の団子を買ってあとは港に戻って帰途につくだけである。
船が港を離れると島が次第に小さくなってゆく。
卒業シーズンということもあり、港ごとに蛍の光のメロディとともに、盛大な見送りの光景が繰り広げられる。
M樹ちゃんは式根島がとても気に入ったらしく、1泊で帰ってしまうのを残念そうにしている。
これまでの旅でそうであったように僕らは名前以外に何も明かさずに分かれてゆく。
「これからもいい旅を!」
そういうと彼女はまぶしそうな笑顔で「ハイ」と答えた。
今回のはじめての一人旅がうまくいったことで彼女はまたきっと旅に出るのだろう。
何もかもが輝いて見えるようなそのまぶしさが少々うらやましい。
が、そんなはじめての旅の登場人物になれたことを今は喜ぼうか。
たった2日だけだったけれど、船旅と海の幸と温泉と島と存分に堪能できた旅でした。
さあ次はどこを目指そうかなんて思いつつ、なべて旅人はまた思い思い次の場所を目指すのです(完)