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カテゴリ:読書
図書館では半年待ちの「約束」、友人からいただいて読んだ。
それぞれが喪失から立ち直る七つの物語の連作である。 「約束」は、あの池田小学校児童殺傷事件がモチーフ。 ごく普通の子供のカンタにとって、何でも万能のヨウジは、 大の仲良しというだけでなく、憧れの存在だった。 そのヨウジを目の前で通り魔に殺されてしまう。 単なる友達が死んでしまった、ということでなく、 自分の存在価値が喪失したように感じるカンタ。 人によって、喪失感が精神に現れる場合もあるし、 肉体に現れる場合もある。 カンタは自傷という形で、その心象をあらわす。そして、 ついに自殺を思い立ち、思い出の場所を彷徨する。 死に場所を見つけたとき、ヨウジがカンタに呼びかけて、 二人が共に「生きる」選択を促す。 カンタはヨウジとの「約束」を心に誓って立ち上がる。 大切な人を奪われる喪失感は、言葉で言い表せないほどつらい。 泣いても泣いても、どこからこれほど涙が出るのか、と思う程泣ける。 泣き疲れた後、自分の生きている意味がわからなくなってしまう。 状況次第で、誰もがカンタになりうるのだ。 特に突発的な事件や事故など、予期せぬ運命の理不尽さに 傷ついた心はすぐにはついていけない。 でも、明けない夜はなく、切り裂かれた傷口もいつかは癒える。 人間はとても弱い、けれどとても強いものでもあるのだ。 カンタはヨウジと強い絆で結ばれていて、心の声が聞こえたんじゃないかな。 深層心理だ、という人もあるけれど、やんちゃはヨウジが導いてくれたと思う。 友情でも愛情でも、深い思いで結ばれた相手となら、 こうした交信が出来ると思う。 人間の想像を超えた不思議な現象、体験したことありませんか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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