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カテゴリ:杉山千佳(子育て環境研究所)
12月号の「年金時代」というちょっと固い雑誌に寄稿
を求められ、以下のような原稿を書きました。 企業の方、行政の方などに読んでもらえるといいのですが・・・ ************* 次世代育成支援と企業社会 ご承知のように我が国の合計特殊出生率は、1.3を 切ってしまった。これは、若い人たちの「子どもはいらな い」「育てられない」という訴えである。「産まない女性 がけしからん」とか、「もはや増やすことではなく、少子 化を受け入れて、どうするかを考えたらいい」といった論 調も見られるが、他の先進国と比べてもこの状況は異常で あり、「なぜ産めない、育てられないのか」ということを、 社会全体で考えなければならないと思う。 我が国の「少子化対策」は、当初「仕事と家庭の両立支 援(保育サービスの充実)」から入ってしまったことからも わかるように、子どもはどのような環境の中で育つのがよい のかといった「子どもの視点」が抜け落ちている。近年の女 性の社会進出を受け、男性の働き方は変えず、女性の働き方 を「男並み」にできるよう、周辺環境を整えようという発想だ。 朝早く朝食もとらずに眠い目をこすりながら登園する子ど もたちを受け入れ、お迎えは夜の7時、8時。くたびれ果て た両親(あるいは母親一人。父親はもっと遅い)が帰宅後、 遅い夕食とお風呂を済ませ、寝かしつければ、また昨日と同 じ朝・・・という子どもたちを見ながら「果たしてこれでい いのか?(これが子育て支援なのか?)」と戸惑いを隠せな い保育者は多い。 共働きが進んでいるスウェーデンなどを見ても、たいがいは 両親の仕事は5時には終わり、お迎えに行って7時には家族そ ろって食卓を囲めるのだ。それが「普通」の子どもの生活のは ずだ。彼らに日本の状況(平日父親が午後7時に家族と食卓を 囲むことは皆無であり、育児家事の負担は母親に集中している。 この状況で、ワーキングマザーは職場では「男並み」の成果を 求められている)を説明したら、「これは子どもの人権侵害だ」 と目を丸くするだろう。 次世代育成支援の行動計画づくりが義務付けられたこともあ り、社会的責任として、あるいは経営戦略として、「ワークラ イフバランス」を取り入れる企業は増えてきている。しかし、 企業格差は大きく、「“仕事と家庭の両立”支援が進んでいる 企業に勤めている妻を持つ夫と、夫の勤務先が得をしている」 という状況があるのは見逃せない。 地球資源には限りがあることを認識し、持続可能な社会を築 くにはどうしたらよいか知恵を絞ろうという世界的な潮流の中 で、「自社さえよければそれでよい」という発想は、時代遅れ としか言いようがない。 子育て家庭においては、会社に夫の一日の大半をとられた妻 が耐えるとか、会社と家庭の板ばさみにあえぎながら、両方に いい顔をするといった「個人の努力」の限界は、とっくに超え ている。この現状を真摯に受け止め、人間らしい生き方ができ る働き方の見直しを、企業は本気で考える時期にきているので はないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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