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カテゴリ:杉山千佳(子育て環境研究所)
いまこそ 見せてよ おかあさんの そこぢから
なんてテーマを今年の4つ葉プロジェクトのタウン ミーティングで掲げているわけだけれど、 このテーマの重さは、重々承知のつもりだ。 「おかあさん」って、難しい。 ●●ちゃんのママでもなく、 △△さんの奥さんでもない、 固有名詞のわたしの時間も持ちたい。 固有名詞のわたしの名前を呼んでください。 と切望している「おかあさん」をわたしはたくさん 知っているから。 そして、かつてわたしも、内なる「母なるもの」と 外から期待される「母なるもの」に押しつぶされそ うになって、自分を取り戻すために、ありとあらゆ ることをしたから。 すでに絶版になっていて、アマゾンの古本屋さんの ほうで購入した『いま、「いのち」を考える』(岩 波書店)はやっぱりとってもよかったです。 絶版なので「おすすめ」と宣伝するのもなんですが、 きっと図書館などで借りることはできると思うので、 ご興味のある方はぜひ、読んでみてください。 河合隼雄さん、梅原猛さん、松井孝典さんという 日本の知の巨人三つ巴の本です。 今日から3回にわけてこの3人の方の語っておられる ことを紹介したいと思います。 これは、小樽市で行われたシンポジウムの記録なの だけど、「いのち」をテーマに、河合さんは児童文学 における「いのち」を、梅原さんは日本文化の中にお ける「いのち」を、松井さんは地球の「いのち」につ いて語ってらっしゃいます。 河合さんは『ディア ノーバディ』という児童文学を もとに講演されているのですが、 その本は、ガールフレンドを妊娠させてしまった高校 3年生の男の子とそのガールフレンドが主人公のお話 です。 主人公2人の家庭環境も複雑で、男の子の母親は 彼が10歳のときに他に好きな男の人ができて、 家族を捨てて出て行ってしまっています。 彼女を妊娠させてしまったから、急にお母さんのことが 知りたくなった男の子。 河合さんは 自分自身と出会いたいと思う人は、いろいろ他の人に 会う必要があります。 自分自身と出会うことの、ものすごく大事な根本は、 母と出会うということです。お母さんと一緒に住んで いるけれども、出会っていない人もたくさんいます。 と話しています。 母親であるわたしたちは「子ども」であると同時に 「母親」でもあるので、その両面からこの文章をか みしめます。 河合さんは、本当にいろいろなことがわかっている 人で、 母性というものは、あんまりすごいから、母性が バッと自分にかぶさってきたら、自分の個性が なくなってしまうような感じがしてしまうほどです。 オカアチャンというのになったら、ほかのことは できないのです。 そう思うと、現代に生きようとしている女の人は 母性というものがうとましい。下手にそれを 身につけたら、私の人生はどうなるのだろうという 気があります。 と、「母性の恐ろしさ」を語っています。 「いのち」そのものについても語ってくださって いますが、それは、ここに引用するのももったいない ので、直接河合さんのことばに触れていただくことに して。 子どもを産んでしまった以上「おかあさん」を 引き受けざるをえない女の人は、 どうしていいのかわからない部分があって、 自分の「おかあさん」のことをやたら思い出したり して、自分の「子ども時代」をやたら思い出したり して、思い出したくもないことまで思い出したりして 結構しんどかったりして、 いきなり、スパッと「おかあさん」なんぞに なれるはずもなく、 自分と母性の折り合いをつけるために必死で、 そんな妻の格闘と葛藤をみながら、夫も必死で、 そうやって家族は生まれていくのではないか と、河合さんの講演記録を読みながら、 そんなことを思ったのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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