身長165cm体重55Kg位…ごく普通の小柄なおじさん。そんなマスターから危険な香りを感じ、俺の体は硬直した!「私では…不服ですか?」「フンッ舐めんなよオッさん!どうなっても知らねぇゾ」ヨシ君が言った。ヨシ君!天才ボクサーの君は、気がつかないのか?このマスター…ただ者じゃねぇ!相当、何かの格闘技に精通しているか…もしくは…堅気では無い!マスターはスーッと、カウンターに連なる開閉式の仕切りを通り抜けた。そしてヨシ君の目の前まで来ると、優しく右手をヨシ君の肩口にポンと置いた。「表に…出ましょうか?」「な、何すんだよッ!触るんじゃねぇよ」そう言って、ヨシ君は乱暴にマスターの手を払った。正確に言えば、払ったはずである!しかし…払ったはずのヨシ君の手は弾かれ、優しく置かれたマスターの右手は、まだヨシ君の肩の上にある!「コノヤローッ」ヨシ君は、自分の肩の上に置かれたマスターの右手を、必死に退かそうと試みる。片手では外れず、今度は両手で…「こ、コノヤローッ」顔を紅潮させ、必死になっているのが分かった。「ヨシ君 ねぇヨシ君!どうしたの?ヨシ君 ヨシくーんッ」状況が分から
ず、ヒステリックにヨシ君を呼ぶ女の声が、小さな店に響いた…。