ニーハオ中国

↑7月15日の中国青年新聞の記事。
「北京―上海高速鉄道、4日間で3件の事故
鉄道部は謝罪とともに原因を発表」
との大見出し。
その下の副見出しは、

「鉄道部広報代表王勇平、主な原因は
　設備がならし段階にあることと発言」

となっています。
すでに正規運行が始まっているのに
ならし段階というのがおかしいですが、
そういう理由がもっともらしく発表されるところがすごいです。
とりあえず見切り発車して、
不都合が出てから調整していくというのが
とても中国らしいと思います。

さて、北京―上海高速鉄道の故障について
日本ではどのように報道されているのか気になって、
ネットで検索してみたら、

「“パクリ”新幹線もう故障・・・」

という見出しが目に入りました。
「パクリ」というのは明らかにマイナスイメージを伴う言葉で、
まるで中国が盗っ人だと決めつけるような
見出しのつけ方は、さすが産経新聞です。
「中国はろくでもない国」という視点が最初にあり、
そこを出発点に記事を書いているのだろうと感じました。

産経新聞によると、

「中国の高速鉄道をめぐっては、
　過去に日独などが技術供与して開発した
　システムであるにもかかわらず、
　中国鉄道省は『すべて中国が自主研究して生み出した』と主張」

しているそうです。この産経新聞の記事だけ読むと、
海外の技術をコピーして作った新幹線なのに、
自分で作ったかのように言うなんて
中国ってひどい国だと思えるのですが、

別の新聞には、

「中国の政府高官や鉄道車両メーカーは、
　記録破りとなる運転速度を達成できたのは、
　日本の川崎重工業、ドイツのシーメンス、
　フランスのアルストム、カナダのボンバルディアから
　取得した技術を『消化』し、改善した結果だ
　と主張している。」
（日経新聞6月30日
「[FT]スピードが落ちた中国版新幹線」）

と書かれています。
北京―上海高速鉄道が日本はじめ、いろいろな
先進国の技術を導入して造られたことは明らかで、
それは中国の政府高官も認めているけど、
まるっきりのコピーではなく、海外の技術をもとに
自主開発したということを言っているのでしょう。

さて、中国はこの高速鉄道に関して、
車両の土台や先頭車両の先端を造る技術など
21件の特許を日本、米国、欧州、ブラジル、ロシアに
特許を出願しているそうです。

「日本の新幹線をただパクってちょっと変えただけのくせに、
　特許申請とは図々しい」

との批判もあるようですが、
認められるかどうかは別として、特許を申請することは自由だし、
国際機関「世界知的所有権機関WIPO」も、

「可否は各国が決めること」

と、今回の中国の特許申請に関して
関与しない方針を示しています。

確かに、日本の技術をちょっと変えただけなら
認められない可能性が高いんだから、
日本はそんなに焦ることはないし、
逆に、日本等の技術を元にしていても、
中国の主張する技術が新規性・独自性のある発明だと
認められれば、それはそれで仕方がないと思います。

2011年7月9日付けの日経新聞子供ニュース
「中国の新幹線　海外で特許取れるの？」では、
お父さんとお母さんと子供の会話記事の中で、
お母さんのセリフとして、

「日本の高度成長期には、欧米の技術を参考にして
　日本の会社がいろんな技術を開発したわ。
　『ものまね』って批判もされたけど、
　独自の技術だと主張して、
　自動車が家電製品などの分野で
　たくさんの特許が認められたわ。」

と書かれていて、かつてモノマネ大国と
批判されながらいろんな技術を開発してきた日本が、
いまや、お隣の国を「パクリ」だと批判する立場に
なったんだなぁ、とその役回りの変化に苦笑。

新技術の開発というのは、今までの技術の基礎の
上に積み上げられるのが常であり、
既存の技術をもとにしているからといって、
それがオリジナリティーがないとは
言えないでしょう。

ただ、日本側の企業は
中国国内での利用を条件に技術を供与したようで、
どんな契約が交わされているのか分かりませんが、
輸出を視野に入れた今回の中国の特許申請は、
争いに発展する可能性が大いにあります。

しかし、もし今回の特許申請が通った場合、
日本側が契約違反だと訴えたとしても、

「日本の技術をそのままコピーして作った車両を
　輸出するなら契約違反かもしれませんが、
　中国自らが持っている最新の特許技術を使った車両を
　輸出するなというのはおかしいのではないですか」

と言い返されそうで、
日本側にあまり勝ち目はなさそうだなぁ、と
つばめは感じています。