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若槻慎二は、生命保険会社で「既契約についてのアフターサービス」が専門の部署「保全」に属している。 ここでは、犯罪やトラブルが絡む事例もしばしば起こる。 ある日若槻は、顧客である菰田重徳(こもだしげのり)から指名され、 訪問すると、そこには菰田の息子の首吊り死体があった。 若槻は昔、兄を自殺で亡くしており、兄の存在とオーバーラップしてしまう。 その後、菰田は息子の生命保険金を執拗に請求してくる。 異様なまでの粘着性と、過去に障害給付金を詐取した経緯から、 若槻は、菰田が息子を殺したと確信するが・・・。
著者の勤務経験による生命保険会社の裏側や、 サイコパスを心理学的に分析する見解が興味深い。 作品全体を流れる陰鬱な雰囲気がとにかく不気味。 早く読み終えたくてたまらなかった。
若槻が見る夢にたびたび登場する蜘蛛は、 芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を想起させる。 釈迦の慈悲で罪人のカンダタは救われるはずであったが、 釈迦の怒りに触れ再び地獄へ落とされてしまう、という寓話だ。
奈落の底で始まった本作は死者の弔いを終えて完結する。
物語が、4月8日(釈迦の誕生日)に始まり、 8月23日(地蔵盆)で終わることがそのメタファーのように感じた。
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